【ジェフ千葉】レノファ山口FC戦プレビュー ~2年目の維新旋風、その風向きをデータで読む~
2017 明治安田生命J2リーグ 第7節
ジェフユナイテッド市原・千葉 1 - 1 ザスパクサツ群馬
得点者:5' 髙井和馬 / 67' 高橋壱晟
【公式】ハイライト:ジェフユナイテッド千葉vsザスパクサツ群馬 明治安田生命J2リーグ 第7節 2017/4/8
「前半と後半が全くの別モノ」になってしまった群馬戦。
前半、相手の激しいプレッシングにボール前進を阻害され、ボトムゾーンからのビルドアップ時にボールロストして、前に出ているGKの頭上を越されたロングシュートを決められて早々にビハインドを負う展開に。
本来、ボールを繋ぐスタイルを目指す群馬がジェフのプレッシングに対して割り切って縦に長いボールを蹴ってきた一方で、ジェフはこれまでと同じようにプレスを受けながらもボールを繋ぐサッカーに徹したため、リズムを壊されてしまった前半でした。
後半スタートから10番の町田也真人が交代で入り、フォーメーションを4-3-3に変更。也真人の働きもありつつ、4-3-3によるポジション優位性を活かした攻撃で後半開始早々から群馬を押し込みはじめました。
(4-3-3システムの考察は下記プレビューにて)
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後半20分過ぎ、右サイドを崩して北爪の折り返しをゴール前に走り込んだ高橋壱晟が蹴り込み、プロ初ゴールを記録。
その後も試合を支配し続けるものの、決勝ゴールは遠く、1-1のドローに終わりました。群馬戦はこれで5戦勝ちなし。相性の悪さは、今季も続いてしまいそうです。
ホーム連戦で積み上げた勝ち点は、わずか「2」。
直近4試合勝ちがなく、上位戦線から取り残され、勝ち点9の13位に留まっている、おらがジェフユナイテッド千葉。
第7節を終えて勝ち点9は、現行のシーズン全42節になってから、最低の水準です(過去最低は2014年の勝ち点10)。
迎えた相手がともに連敗中のチームだったということで、厳しい見方をすれば強かに叩けなかった例年の通りジェフの弱さが出たとも言えますし、大目に見れば相手も何とか連敗を脱しようと必死に立ち向かってきたとも言える。
内容はいずれもジェフが主導権を握りながら、決勝ゴールを決めきることができずに勝ちきれなかったという展開だったかと。
失点に関しては、どれも自分たちのミスやハイラインによるリスクを突かれてしまった想定内のもの。故に今後はミスやリスクに対する意識や行動面の対策が出来れば減らせる可能性のあるものと捉えられるかと。
結果が出ていないことでサポーターはモヤモヤしているかもしれませんが、次なる戦いは待ってはくれません。
第8節、第9節はアウェイ連戦。
まず、15日土曜日はレノファ山口FCとの一戦。昨季、4失点を喫して敗れた相手です。
レノファは今季がJ2参戦2年目のシーズン。昨季は上野展裕監督の下、パスで相手を崩し切る攻撃的スタイルで「維新旋風」を起こした気鋭のチーム。
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昨季シーズン終了後にまとめたJ2チームのデータ比較でも、ボール支配率とパス成功率、攻撃回数で他を圧倒する数値を叩き出し、J2では異端な攻撃的スタイルを遺憾なく発揮できたように見えました。
しかし、今オフはチームの心臓であった庄司が岐阜にまさかの移籍。
その他にもレノファのスタイルの骨格を成す主力級の選手たちが他チームに引き抜かれる形で相次いで退団(移籍については下記エントリでまとめてます)。
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今季は山形や長崎など新加入選手が半数以上を占めるチームが見受けられるなど、「レボリューション(®ジェフ千葉)」がちょっと流行りの兆し...
本エントリでは、元祖・J2異端者レノファ山口FCの今季について、昨季からの変化をデータで可視化し考察をしていきたいと思います。
データはご覧の提供でお送りします。
まだ第7節を終えただけですが、ある程度どこのチームも目指すスタイル、戦い方の特徴がおぼろげながら見えてきた頃かと思います。
レノファについては、昨季のサッカーがインパクトのあるものだったからこそ、選手は大きく入れ替わりはしたものの、今季も同様に攻撃的スタイルを貫くのかが注目点かと。
J2では異端な、巧みなパスワークによるボール保持により多くの攻撃を繰り出すそのスタイルの肝は、高い「パス成功率」にあると思います。
冒頭にリンクを張った16シーズンまとめにある可視化、「ボール支配率とパス成功率」の散布図、「ボール支配率と攻撃回数」の散布図において他チームからかなり離れて右上に布置していたレノファ山口。(可視化の掲載は割愛します)
パスの精度が高い → ボールが循環し失う頻度が少なくなる → ボール支配率が高くなる → 自チームの攻撃機会(時間)が相対的に増える → 攻撃回数が増える
上記のようなボールプレーにおける好循環を生むことが、レノファのセオリーなのだろうな、と。
まず、昨季のレノファの特徴を端的に表していた、この「ボール支配率とパス成功率」、「ボール支配率と攻撃回数」のふたつの可視化軸で、レノファとおらがジェフ千葉が2016シーズンから2017シーズン序盤までにどの程度変化があったのかを下記に図示しました。
【図1】ボール支配率 × パス成功率 の散布図|シーズン比較(千葉・山口)
【図2】ボール支配率 × 攻撃回数 の散布図|シーズン比較(千葉・山口)
図1と2は過去エントリの2016シーズンまとめにある散布図と同じ見方でして、ここではレノファ山口とジェフ千葉だけ抜粋しています。
図1は横軸にボール支配率、縦軸にパス成功率を、図2は横軸はそのままに縦軸に攻撃回数をとりました。布置したデータはそれぞれ2チームの昨季平均値と今季第7節までの平均値。
ご覧いただく通り、このふたつの可視化では、山口と千葉がそれぞれ真逆の方向に移動していることが分かるかと。
図中にそのデータの変動を追記していますが、改めて述べると...
<ボール支配率> 前季 ⇒ 今季|変動
レノファ山口FC :57.2% ⇒ 50.2% |DOWN
ジェフ千葉 :53.5% ⇒ 61.3% |UP
<パス成功率> 前季 ⇒ 今季
レノファ山口FC :76.5% ⇒ 74.0% |DOWN
ジェフ千葉 :75.1% ⇒ 74.3% |DOWN
<攻撃回数>
レノファ山口FC :140回 ⇒ 138回 |DOWN
ジェフ千葉 :132回 ⇒ 149回 |UP
ご覧いただくと、「ボール支配率」、「攻撃回数」ではジェフ千葉は昨季よりも上昇し、レノファ山口は下降しているという現状。
昨季のレノファが他を振り切きって高く出ていた、「ボール支配率」、「攻撃回数」で今季のジェフ千葉がさらにその上をいっている。
決してのこのデータの浮き沈みが、チームの強さを代理しているものではありませんが、オフに主力選手が多く退団したレノファ山口にとっては、昨季のスタイルを維持することができていないという見方ができるかと。
一方のジェフ千葉は、主軸選手が数人退団したもののオフの補強で上積みができていることと、エスナイデル監督のもとでハイライン&ハイプレスのピーキーなやり方に劇的に変化したことで、その結果としてデータでも大きく昨季から変化していることが浮き彫りになった格好に。
ただ、レノファ山口もジェフ千葉も、思うような結果を手にできているとは言い難い状況。
そこで本ブログでも何度か取り上げました、「歩留り」というプレーの効率を表す、二次加工指標で山口、千葉の攻守それぞれのボトルネックを昨シーズンとの比較で可視化してみました。
【図3】レノファ山口FC アタッキング指標の効率性・シーズン比較
まず山口の「攻撃における効率性」を図3に。
過去エントリで詳しくデータ加工定義を載せていますので、計算式の解説はそちらに譲ります。
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まず「攻撃回数」のデータを起点に、30mライン進入、さらに30mライン内からのシュート到達、シュートの枠内成功率、そして決定率(ゴール)と、図3可視化棒グラフの左から右に進むにつれ、相手ゴールに迫っていく各プレーの効率を示しています。
昨季のレノファ山口は、このアタッキングの効率性の推移、歩留りがおおよそ30%台で凹みなく推移していることが分かるかと。
すなわち、ボール前進のうち3回に1回は相手30mラインへの進入に成功し、さらにその3回に1回はシュートまでいけて、そのシュートの3本に1本は枠に飛び、さらに枠内シュートの3本に1本はゴールになっていた、、という階層構造になっているイメージです。
それが、今季に目を移すと最後の決定率、そして最初の30mライン進入、シュート到達率が3割を割り込んでいる。
うまくボール前進ができておらず、そこからシュートにもいけず、打てば枠には飛ぶものの、ゴールを陥れるのに苦戦している...そんなイメージかと。
【図4】レノファ山口FC ディフェンディング指標の効率性・シーズン比較
転じて守備の歩留りを。
こちらは、左の2つと右の2つの棒グラフは階層構造ではなく独立しているのですが、それぞれ被攻撃に対してのタックル、クリアというアクションを行った割合を示します。
右の2つについては、被攻撃からシュートまで到達された割合、さらにゴールを陥れられた割合を示します。
右の2つ、被シュート到達率と被決定率はさほど昨季と変わりないですが、「タックル試行率」が約3%ほど上昇している。
誤差の範囲ともいえますが、昨季よりも相手ボールホルダーに対してタックルでボール奪取を狙うプレーが多いということ。
タックルについては、ポジティブ/ネガティブ両面の解釈ができるので、ピッチにおけるどのゾーンで、どういった局面で行われているか、データが無い分映像などで振り返っていただくと良いかもしれません。
【図5】ジェフユナイテッド千葉 アタッキング指標の効率性・シーズン比較
一方のおらがジェフユナイテッド千葉。
昨季の攻撃時のボトルネックは、「枠内シュート成功率」でした。
シュートが枠に飛ばないことには、効率よくゴールを奪うことはかなわないですから...
今季については、そひとつまえの階層、すなわち「30mライン内シュート到達率」、そして「決定率」が凹んでいる。
相手陣内深くまでボールを運んでもなかなかシュートに持ち込めず、シュートが枠に飛んでもゴールを陥れるまでには至っていない。
まだ7節までで、60%を超えるボール支配率を記録していることからも分かるように、ジェフがボールを保持して押し込んでいる展開がここまで多かった分、相手にゴール前を固められる時間が多かったという良い訳もできるにはできますが...
【図6】レノファ山口FC アタッキング指標の効率性・シーズン比較
守備時アクションの効率性では、顕著なのが「タックル試行率」が低くなったこと。これはレノファ山口と逆の傾向で、ちょっと興味深い変化ではあります。
被シュート到達率は低めに抑えられているものの、被決定率がやや高いのは、ハイラインの裏を突かれての決定機から決められてしまうシーンが多いことを示唆しているのかなと思えたり。
ここは、ハイラインに伴うリスク次第な気もしていて、なかなかデータでも検知するのが難しいところかもしれません。
【図7】レノファ山口FC戦 予想スターティング・フォーメーション
ともに、攻撃に課題を抱いていることがデータから推察できた両チーム。
レノファ山口FCは上野監督が継続指揮をしていますから、今季も攻撃的スタイルを目指すことには変わりないながらも、選手が入れ替わった事による難しさがある様子。
一方のジェフユナイテッド千葉は、新監督のもとで攻撃的なスタイルを構築しつつある途上で、今のところハイプレスによる強みよりもハイラインによるリスクが弱みとして目立ってしまっている印象。
置かれている背景は違えど、いずれも攻撃を優先して志向するスタイルのぶつかり合いとなりそうな試合、見どころ多い面白い展開を期待したいです。
ジェフ千葉の話をしますと、エスナイデル監督が前節の試合後会見にてスタートから4バックシステムを敷くかもしれない旨を示唆していたように、今節は今まで通り3-1-4-2でいくのか、システムを変えて4-3-3で臨むのかも気になるところ。
並びが変わることで、多少の人の入れ替えがあるのかも気になりますし、久々に4バックの相手ということで、システムの噛み合わせによる戦術のせめぎ合いも見どころになるのかなと。
守備よりも攻撃に重きを置くチーム同士、複数ゴールを上げることで攻撃が復調するということも有り得そうですから、節目となる勝利を上げて上位浮上のきっかけになれば。
勿論、その契機を掴むのは、おらがジェフユナイテッド千葉であることを願っています。
では、また!