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【昇格POちょっとプレビュー】2016シーズン J2リーグをデータでまとめてみました ~ゲームスタッツ編~


夢と絶望の90分。J1への切符を手にするのは果たして…!?【J1昇格プレーオフ】

 

 J1への最後の椅子を賭けた「J1昇格プレーオフ」が、明日27日の準決勝から幕を開けます。リーグ42節は既に終幕。そう、プレーオフ(以下PO)はリーグ戦とは全くの「別物」です。

 J1最後の一枠を賭けて戦うのは、松本山雅セレッソ大阪京都サンガファジアーノ岡山の4チーム。

 松本と岡山はリーグでの勝ち点にして「19」も離れています。松本側からしたら、19も離れてる下位と何でやらなきゃならねーんだ!という声が聞こえなくもないですが、プレーオフとはそういうレギュレーションです。決まってることには抗えない。。

 先日のチャンピオンシップ、川崎と鹿島も年間勝ち点差な13ながら、浦和への挑戦権を得たのは、下位の鹿島でした。理不尽!と思うかもしれませんが、そういうレギュレーションなのです...とはいえ、1シーズン制だったら川崎も2位だから「タイトル」って夢見られなかったけどね...

 とはいえ、昇格POではリーグでの順位を考慮して上位が有利となる(引き分けの場合は上位が勝利)わけですが、この0-0だけど、実際は1-0でスタートしてるっていう微妙な優位性が、両者の心理的なバランスを揺るがす要因だったりします。下位は得点しなければ、上がれないわけですから攻勢をかけてくる。下位に先制を許すと、1-0のはずが、1点のはずが何故か「1-2」になる。。そんな心境です、はい。。

 上位チームは相手の上をいって得点を狙いに行くのか、相手の攻勢を耐えて凌ぐのか、パワーの割き方、試合の進め方、終わらせ方とデリケートなゲームマネジメントを強いられることになります。

 そういった非対照性が面白みでもあり、不条理でもある。それが昇格POなのです。

 本エントリでは、昇格POに臨む4チームを含め、今季のJ2各チームをゲームスタッツの1試合あたりの平均値、および累積値から分析・可視化、考察をしたく思います。

 可視化は前エントリのJ1版を踏襲していますので、併せてご覧いただくと理解がはやいかなと存じます。

 

football-data-visualization.hatenablog.com

 

引き続き、データはご覧の提供でお送りします。

サッカーをデータで楽しむ|Football Lab

  

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図1 パス成功率 ✕ ボール支配率 J2チーム比較散布図

 

 最初に「パス成功率」と「ボール支配率」の散布図から。パス成功率が高い→パスが繋がる→ボールを失いにくい→ボール支配率高まるって構造なのは自明かと思いますが、各チームの順位を思い浮かべて図1を眺めていただくと、J1のそれとはまるで異なるということがお分かりいただけるかと思います。

 すなわち、パス成功率が高くボールを相手よりも保持できるからといって、リーグ上位の戦績を残せるわけではないのがJ2というリーグだということ。

 J1については、全てのチームでそうした力学が働いているわけではありませんが、浦和や川崎、広島、ガンバなどパス成功率の水準が高く、ボールプレーに優れ、ボールを支配できるチームが上位に位置し、反対にパス成功率が低くボール支配率でビハインドを負うチームは下位、または降格となっているという傾向が見て取れるかと。

 翻ってJ2ではボール支配率で最高位のレノファ山口は12位(パス数1位、パス成功率では3位)、同2位のジェフ千葉は11位(パス数3位、成功率4位)。

 ただ、パス成功率だけを見れば、最高位のセレッソ大阪は4位、2位の清水は2位で昇格。札幌はパス成功率4位で支配率では5割を割り込むもJ2優勝という結果。

 ちなみにパス成功率の平均値、J1は77.9%、J2は71.9%でした。

 J1のパス成功率最下位の名古屋が71.7%でしたから、J2というのはボールプレーの水準、パス成功率というデータだけ切り取ってしまうと、まさに「そういう」リーグだということ、かと。

 「そういう」の部分をもう少し深掘りしたく、以下の可視化を。

 

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図2 攻撃回数 ✕ ボール支配率 J2チーム比較散布図

 

  これも前エントリに倣い、「攻撃回数」✕「ボール支配率」の散布図。

 J1ではボール支配率で優位なれど比例して攻撃を繰り出しているわけではない、というような例を特に広島を引き合いにして述べたかと思います。

 J2では、ボール支配率最高位のレノファ山口が攻撃回数でも最高位。まさにマシンガンの如きパス主体のアタッキングサッカーがデータでも浮き彫りになる恰好かと。

 一方、J2でもJ1と少し似通った傾向は見て取れて、セレッソや千葉はボール支配率の高さほど攻撃を繰り出すわけではなく、反対に支配率がビハインドな水戸や群馬、町田が攻撃回数ではやや高め。

 注目すべきは、J2優勝の札幌が攻撃回数最下位という事実。

 パス成功率は高めながら、ボール支配率は中位、攻撃回数は最下位の札幌が優勝するJ2。。

 昇格のヒントを探るべく、次の可視化をば。

 

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図3 パス成功率 ✕ シュート到達率 J2チーム比較散布図

 

 「パス成功率」✕「シュート到達率」の掛け合わせ。

 J1では、ボール支配率、パス成功率で上位、攻撃回数で最下位の広島が右上に布置していて、効率的にシュートまで到達できているような見え方をしていましたが。。

 J2ではご覧の散らばり具合。パス成功率、ボール支配率、攻撃回数で上位にいたレノファ山口はシュート到達率では下から数えて3番目。つまりパスを正確に繋ぎ、ボールを支配し、攻撃を数多く繰り出せてはいるものの、ゴールを奪うための「シュート」という プロセスまでは効率良く至ってはいないということ。千葉、ヴェルディなども同様の傾向が見て取れるかと。象徴的なのが、今季J3降格という結果に終わった北九州で、パス成功率は平均を上回る値を出しながら、シュート到達率では最下位。パスを繋いではいるもののシュートにまで効果的に持ち込むことがうまくできていなかった。

 この可視化ではJ2優勝の札幌、同2位の清水もシュートまでのパス成功率に対する効率という面では、そこまで高くなく千葉やレノファとほぼ同じ布置。

 J1における広島っぽい布置の仕方をしているのは、セレッソと微妙ながら京都も。シュート到達率での最高位は15位のロアッソ熊本という結果。

 このシュート到達率含めの「歩留り」での一覧が下記の可視化です。

 

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図4 アタッキング指標歩留り率 J2チーム比較

 

 歩留りはジェフ千葉のプレビュー記事にその仕組が詳しいのでご参照くだされば。

 

football-data-visualization.hatenablog.com

 

 J1の同じ可視化では、年間順位降順に各指標も位置していて下位にいくほどどのステップでも非効率な傾向、すなわち右肩下がりのグラフになっていたかと思うのですが、J2ではご覧のようにちょっとわからんグラフになっておりまして。。

 まず札幌は置いておいて、先ほどパス成功率→シュート到達率ではさほど高効率ではなかった清水ですが、決定率(ゴール数/枠内シュート数)はさすがの最高位。チョン・テセ&大前というJ2ではチート級FWコンビを擁するが故の妥当な結果(枠内シュート率でもトップ)。

 前述のシュート到達率トップのロアッソは「30Mライン進入成功率」では最下位。相手陣内深くまではあまり運べないながらも、進入できればシュートまでは持ち込めているという示唆かと(30Mライン外からのシュートはこの指標には含まれない定義になってます、、)。

 あと群馬も面白くて、決定率では清水に次ぐ2位なのですが、枠内シュート率(枠内シュート数/シュート数)は最下位でして。。枠に飛びさえすれば沈められるよってこと?

 J3降格となった北九州も決定率だけ見れば、札幌とそんなに遜色ないはずなのに... 

 分からなくなってきたので、次は被攻撃〜被シュート〜被ゴールの歩留り。ここはJ1ではやらなかったタックルとクリアの各試行率も重ねで。 

 

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図5 被攻撃回数〜被シュート〜被ゴール歩留り率 J2チーム比較

 

 被攻撃〜の歩留りでは、被シュート到達率、被ゴール率が下位にいくほど高くなる傾向にあることがわかります。これはJ1でもほぼ同様の傾向でして、J2での可視化ではそれに対してタックル、及びクリアをどれだけの割合で試行したかも重ねてみました。

 被攻撃回数では、攻撃回数と同様レノファ山口が最多。実はJ1も同じで鹿島が両指標で最多。。レノファの場合、ああいった攻撃に比重を置くスタイルなので、そうなるのかなぁと思ったり。。クリア試行率もレノファは最下位。つまりは、被攻撃時、クリアによる危機回避よりも恐らく繋いでポゼッション回復を第一優先としているためと思われまして、その副次作用(つまりポゼ回復失敗≒ボールロスト)として、被ゴール率も2番目に多いという結果に。。

 山口が最低だったクリア試行率トップは讃岐で被シュート到達率でも最多。危機回避しまくってはいるんだけど、シュートまでは運ばれてしまっているという事実が。山口が2番目に高かった被ゴール率のトップは岐阜。被シュート到達率はそれほどまでではないですが、、GKの能力差?と推測できなくもないですがブロックやセービングの数値が無いで何とも判断しづらい。。

 試行率ではJ2各チーム軒並み「クリア>タックル」という構造となっているのですが、唯一「クリア<タックル」となっているチームが、おらがジェフユナイテッド市原・千葉

 ホーム最終戦での長谷部監督代行のスピーチでもあったように「闘えるようになった」との言葉は、データでもその通りだった...と言えなくもなかったのか。。

 今季のジェフ千葉はシーズン途中に関塚監督から長谷部監督代行に代わり、どちらかというと守備時のポジショニングや陣形を整えるべくタックルにはいかず、クリアが増えていたように感じられたのですが、タックルもちゃんと実行していたんだなぁ、と。

(長谷部さん指揮序盤の分析は下記エントリに詳しい)

 

football-data-visualization.hatenablog.com

 

 リスク回避すべきときはクリアし、奪うときは積極的にタックルを仕掛ける(タックルもどういうシチュエーションでのものかは判然とはしませんけど、、)。

 とはいえ、守備において闘えるようになったという部分、ここは「継続」が望まれる部分になるかもしれません(タックル成功率はデータないから知らん^^;)。

 

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図6 チーム別得点数&失点数 分布一覧

 

 さて、ここまで見てきて2位清水の成功要因はなんとなく見えてきたのですが、J2優勝を果たした札幌は何で昇格できたのか?については、よう分かりません。。

 改めて、今季得点&失点の実数分布を順位降順で並べてみたのが図6。

 ここで分かったことは、得点&失点の閾値。勝ち点80を稼ぎ出した上位3チームに共通する閾値とは、「60得点以上、40失点未満」という値(セレッソは失点が46と守備が安定せず)。

 逆に下位に目を向けると失点の多さは勿論、得点数の低さも目につく。

 その得点&失点の中身、それぞれのパターン別に構成比でチーム比較してみた可視化が下記図7と図8。

 

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図7 チーム別得点パターン 構成比

 

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図8 チーム別失点パターン 構成比

 

 最下部にリーグ平均を持ってきていて、値ラベルがある箇所はそのパターンにおけるリーグトップ3のクラブについて表記しています。

 清水を例にしますと、清水は「クロス」からの得点がリーグトップで35.3%。同2位の町田が24.5%ですから、1割以上も構成比で上回っている(実数にして30得点以上差がありますがね...)。

 これは清水の小林監督がクロスからの得点がJ2において有効である、あるいは自前の選手を眺めてクロスからのパターンが有効であるとして、攻撃における必殺パターンを仕込んだのかは分かりませんが、節数の2倍近い80得点以上を叩き出した背景には、個人能力の高い2FWを活かす術をこの1年磨いて、実戦で発揮できたということなのだろうと思いますし、それを示唆するデータと言えなくもないかな、と。

 反対に失点パターンで見ると清水は「セットプレー」を苦手としていて実に4割がセットプレーからのもの。J2リーグ全体でもセットプレーからの失点は構成比にして27.8%ともっとも多いパターンな訳でして、清水の場合来季J1での舞台ではこのセットプレーの守備を手当てしてくるのだろうと思われます。 

 札幌に対しての考察ですが、パス成功率はそこそこ、ボール支配率は平凡、攻撃回数最下位、歩留りでも枠内シュート率は高いけど決定力はそこまででもなく、守備に目を向けるとクリア、タックルはともに高め、被シュート到達率、被ゴール率も抑えられている。そして60得点以上と30失点台を達成しているという事実。。

 リーグ最少失点、被ゴール率の松本もやはりこれまでの可視化でそこまで突出してなかったので、札幌と並べて雑に言ってしまうと、これはもう「ゴールキーパー」の能力によるもんだろうなーと(テキトー)。

 ゴールキーパーに絡むスタッツが無いので、最早当エントリでは可視化、分析のしようがありませんが、、多分ゴールキーパーがいいんでしょうねー。

データスタジアムさんではCBP・チャンスビルディングポイントなるスタッツがありますが、算出方法が独自で分からないから、扱いませんでした)。

 最後にJ2のゲームスタッツ元データの表を載っけておきます。

 

表1 2016シーズン J2チームのゲームスタッツまとめ

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 さて、ここからは本日準決勝が行われる昇格POのプレビュー。

 昇格POの常連(笑)おらがジェフ千葉が2年連続で絡めず、かつJ2での最低順位を更新したので、来季どうなるかの方が心配なので、もう心境的には昇格POなんざ他人事なのですが、新しいデータが転がっていたので、4チームについてそこらへん可視化をトライアル的にやってみます(データ元は下記特設サイトから)。

 

www.football-lab.jp

 

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図9 昇格PO出場チーム タックル平均ライン&タックル試行率

 

 図9はタックルラインの平均値(自陣ゴールラインからの距離)と私が算出したタックル試行率(タックル数/被攻撃回数)の散布図。

 上側に布置していると前からタックルを試行しており、右に布置していると被攻撃あたりのタックル回数が多いというもの。

 ご覧いただくと松本がもっともラインの低いセレッソより6〜7mほど高い位置から守備にいっているのだなと。試行率はほぼ横並びなのでそこまで差異はなさそうですが、6〜7mというライン差をどう読むか。。

 

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図10 昇格PO出場チーム 攻撃におけるパス数の変化

 

 図10は、ボール奪取時、すなわちポジトラからシュートに至るまでの平均パス数と総パス数を攻撃回数で割った値、1回の攻撃にかけるパス数との差異を見たもの。

 その心は、トランジションにおける攻撃の考え方、すなわち奪ってすぐさま攻撃に移行するのか、あるいは一旦ポゼ回復を行ってから攻撃に移行するのかを見たかったから。

 ただ、この見方ではその一端しか見えないということも自覚した上でやった可視化です。

 すなわち、両指標の差のパス数が少なければ、奪ってすぐさま攻撃へ移行。パス数が多いようだとポゼ回復傾向なのかなと、勝手に判断してます。

 その部分で見ると、やはりというべきかセレッソはポゼ優先、京都は速攻型と見えそうです。本日相見える関西の両雄はここのトランジションの趨勢にも注目したいところ。

 ゲームスタッツからJ1、そしてJ2も見てきて個人的な意見としましては、J2への降格要因、ならびに昇格チームの来季1部での戦いにおける課題は、やはり「ボールプレーの質の向上」だと思います。J2で昇格を目指すのであれば堅守をベースに戦うこと、データでは見えなかったですが特にゴールキーパーのクオリティは小さくないファクターではないかと推察できます(京都も失点数30点台で、これは菅野補強の効果ではないか、と)。

 ボールプレーに優れながらPOにまわったセレッソなんかは、GKに韓国代表を揃えながら失点を抑えることには失敗しているわけで、単純にGKの質だけではなく組織として堅守を構築できるか否かもとても重要な要素なのだろうと思います(今季大熊さん引っ張ったセレッソサポ涙目...)。

 ボールプレー、得点力で一定のクオリティを有する清水は置いておいて、まず昇格が決まっている札幌に関して述べれば、J2というリーグですらさほど突出したボールプレーの水準に至ってないことから、来季J1での戦いを見据えると、ポゼ率を高める何らかの手当てをすることは、J1残留を睨むと必須のタスクかと思いますので補強面含め、四方田監督らコーチ陣の取り組みは要チェックかなと思っています。

 データでのシーズンまとめは、他に選手の出場記録なんかもデータが取れるので、暇を見つけてやろうかと思います。

 さて、今日は昇格POを戦う4チームの血みどろの戦いを遠目に眺めていようかと。。 

 

では、また! 

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