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【Jリーグ】2018年のJ1リーグをデータでまとめてみました ~チーム・スタッツ編~

 2018 明治安田生命 J1リーグ

  川崎フロンターレ 連覇


Inside J.League:川崎フロンターレ、リーグ戦二連覇の舞台裏!明治安田生命J1リーグ第32節 セレッソ大阪 2 - 1 川崎フロンターレ 2018年11月10日

 

 本業が忙しく、暫く放ったらかしにしておりましたが、年末が近づいてくるとやっておかないとなぁという思いが強くなってくるので、今年もやっておこうと思います。

 

football-data-visualization.hatenablog.com

 

 昨年、一昨年と同様にデータでもって今季のJリーグを振り返ってみたいと思います。まずは、川崎フロンターレの2連覇で幕を閉じたJ1リーグから。

 その川崎フロンターレが示した強さの要因にスポットを当ててデータを見ていきたいと思います。

 

 データはご覧の提供でお送りします。

www.football-lab.jp

 

 近年の傾向として、J1リーグにおける順位≒勝ち点と相関する指標としては、パス成功率及びボール支配率があります。即ち、ボールを正確に動かせて、ゲームの中で主体的に攻撃を行うことができるかどうかが、試合に勝利し、勝ち点を積み上げられるかにポジティブに影響しているということです。

 負けない事よりも勝つ事、勝ち点1よりも勝ち点3を奪える力がチームにあるかどうかが、J1リーグにおいて、上位に位置するために必要な要素といえます。

 

 上記の可視化は、J1リーグ2018シーズンの最終順位ソートで、シーズン平均のパス本数とその成功率をプロットしたものです。

 「Plotly」というデータ・ビジュアライゼーションのプラットフォームでもって出力しており、マウスオーバーさせるとそのチームの数値が表示されます。

 また、ドラッグして範囲を指定すると、そこがフォーカスされたり、凡例をクリックすることで表示/非表示を切り替えられるなど、触ってグリグリ動かせるグラフになっています。

 

(Plotlyについては、過去エントリを参照)

football-data-visualization.hatenablog.com

 

 前述の「正確にボールを動かせる」という指標で各チームを較べてみると、連覇を達成した川崎フロンターレが、J1リーグにおいて最もその精度が高いということが、データでも見て取れます。

 アベレージでパス本数約680本、成功率85%超え。他を圧倒する数値です。

 

 

 今回、川崎フロンターレが連覇を果たしたということで、2017シーズンの同指標と較べてみるとどうなのかなと思い、上記可視化をばアウトプット。

 17シーズンと18シーズンの平均ボール支配率とパス成功率の散布図になります。

それぞれ丸印が各チームを表し、グレーの丸が今季、黒丸が昨季のものでして、マウスオーバーすることでクラブ名と数値が確認できます。

 縦軸のパス成功率86%にかかろうかというグレーの丸が今季の川崎フロンターレなのですが、昨季はというと、その左下の黒丸がそれでした。今季の川崎フロンターレは、初優勝した昨季よりもさらにそのパス精度とボール支配率を高めたことが分かるかと思います。

 

 

 「ボールを正確に動かし」、「ボールを長く保持できた」としても、ゴールを奪えなければ、勝つことはできません。

 そのあたりの攻撃に関する指標を各種並べて可視化したのが上記グラフです。こちらも順位ソートで並べていますが、 注目すべきはペナルティエリア(以下PA)進入成功率」、「シュート到達率」が、ほぼほぼ順位と相関しているということ。

 川崎フロンターレが記録した、「30Mライン進入成功率」が他の追従を許さない50%超えというのも驚きの数値 ではありますが、「PA進入成功率」、「シュート到達率」でもリーグ1位という数値が示す通り、多くのパスによって正確にボールを動かし、相手守備陣を効果的に崩してシュートレンジまでボールを運び込むことに成功しているのが分かります。

 フロンターレの攻撃の2回に1回は、相手ゴールラインから30m以内へボールを前進させることに成功している。

 PAエリア進入成功率15%ということは、30mライン進入の3回に1回はペナルティーエリア内にボールを持ち込めているということ。

 その上でゴール率が10%以上ですから、手数をかけながらもしっかり相手の守備網を潜り抜けて、効率よくゴールが奪えているのではないかと思います。

 シュート到達率だけを見ていると、POで残留を決めたジュビロ磐田や最下位で降格となったV・ファーレン長崎もそこそこ高い数値を残しているのですが、PA進入成功率では10%を下回っていて、どちらかというと相手守備陣を崩してシュートまで持ち込んだというよりも、崩し切る前にシュートを撃った、またはPAの外で相手に撃たされた、という見方の方がしっくりくると思います。

  シュート到達率は、30mライン進入成功率、PA進入成功率と併せて見ることで、そのチームの攻撃における効率を深く考察できる指標であると思います。

 

 上記は、ボール支配率と攻撃回数との関係を見たく出力した可視化です。

 川崎フロンターレが高いパス精度を担保にボールを長い時間保持できることは分かったのですが、ボール保持時に常に攻撃アクションを取っているかどうかはまた別の指標が必要になってきます。

 この可視化では、右下に今季の川崎フロンターレが布置していますが、昨季よりも攻撃回数は減じていることが分かります。ボールを握れているからと言って闇雲に攻めるのではなく、相手の隙や奪いに来る相手をいなしながら、効果的に攻め入るタイミングを計っていたのではないかというのが読み解けます。

 先程見てきたパス成功率が昨季よりも上がっていることと併せて考えると、昨季よりも焦れずにじっくりとボールを動かして攻撃に転じているのではないか、とも考察できます。

 この可視化において右下に布置するのは、現日本代表監督の森保指揮下のサンフレッチェ広島と酷似しているということも触れておきたく。

 前任者の革新的な攻撃的スタイルを引き継いでのリーグ優勝という点でも、森保監督と鬼木監督の境遇は似ていますし、アタッキングを高頻度で発動するのではなく、ボールを保持すること(容易にボールを失わないこと)に比重を置いているのも、少し似ているのかなと。

 フォーメーションや詳細なピッチ上のプレーにおける類似点はそこまで多くはないかもしれませんが、背景にある思想では、実のところ両者は通底しているのかもしれません(勝手な想像です)。

 

 他チームの変化も少し見ていくと、今季途中からリージョ監督が指揮を執っているヴィッセル神戸も、川崎フロンターレと非常に近い布置にあることが分かります。このオフの補強含めて来季以降、本格的にスタイルの転換を表してくることを予感させます。

 また、今季の平均ボール支配率で川崎フロンターレの上を行った横浜Fマリノスも、昨季から大きくスタイルを転換させたチーム。可視化では右上に布置しており、ボールを保持し、絶えず攻め立てたことを示しています。

 ボール支配率リーグ1位、攻撃回数リーグ2位という、非常に攻撃的なスタイルを披露したマリノスは、同じボールを保持するということについて、同リーグ2位の川崎フロンターレとは異なる思想があることを感じさせます。

 

 

 今度は翻って、守備についてのデータ可視化を。

 被シュート到達率、被ゴール率の散布図です。

 被攻撃≒被ボール前進に対して、どのくらいの割合でシュートを放たれて、それがゴールネットを揺らされたのかを表しています。

 個人的に川崎フロンターレの連覇に大きく影響したのは、この守備の堅さであると思っています。左端「被シュート到達率」でリーグ最小値8%を記録しており、加えて被ゴール率でも8.7%と低い水準で抑えている。

 昨季は、被ゴール率は低い水準に抑えられていましたが、被シュート率は1割を超えていました。それが今季はその被シュート率までも低く抑え込む事ができている。

 これは、GKやDFといった守備陣の奮闘だけではなく、先程まで見てきた攻撃の効率が一層高くなったことで、翻って守備面の数値が改善された面もあると思います。

 攻撃と守備が不可分となっている現代サッカーですから、このあたりの因果関係をより詳細にデータで説明できるようになりたいなと思っています(今後の宿題)。

 

 他チームを見てみても、2位のサンフレッチェ広島、3位の鹿島アントラーズも左下に布置しており、被攻撃時にシュートを撃たせない、ゴールを割らせないためのパフォーマンスの高さは、攻撃の効率とともに欠かせない要素と言えそうです。

 逆にこの被攻撃時のパフォーマンスが高かったとしても、攻撃時の効率、パフォーマンスがそれ相応に伴っていなければ、上位はおろか降格争いに巻き込まれるということも、この可視化は示しています。

 ジュビロ磐田柏レイソルはこの被攻撃時の数値を見る限りは昨季と較べても、さほど悪化しているようには見えません。

 次回以降見ていくJ2リーグとの比較になりますが、J1リーグではボールを正確に動かし、主体的に攻撃を行って、きっちりゴールを獲れるということが生き残るための必須要件といえるのではないかと思います。

 下記はサムネイル用の画像なのですが、改めて今季の被シュート到達率、被ゴール率の散布図を貼っておきます。

 

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【散布図】被シュート到達率 ✕ 被ゴール率(J1リーグ 2018シーズン)

 

 川崎フロンターレが最終節を待たずに連覇を決めた2018シーズンでしたが、反対に降格争いは最終節の各試合の推移に伴って最後の最後までもつれる大混戦にもなりました。

 結果的に16位になったジュビロ磐田は、今季から変更されたJ1参入POのレギュレーションに助けられた格好でしたが、勝ち点的には例年の傾向から言えば残留できている水準だったようにも思います。

 昨季、J2を圧倒的強さで優勝した湘南ベルマーレも、J1に1年で復帰し大型補強を敢行した名古屋グランパスも最後まで降格争いに巻き込まれてしまいました。

 普段、J2をフォローしている私にとっても、今季はJ2とのレベルの差を大きく痛感したJ1リーグだったように思えます。

 

 今回は連覇を果たした川崎フロンターレにフォーカスして見ていきましたが、次回以降はJ2のレビュー含め、スタイルを大きく転換させたチームなどを軸に、17年からの変化や19年シーズンの展望を絡めて、データを見ていきたいと思います(マリノスヴィッセルコンサドーレ札幌など)

 

 では、また!

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