【Jリーグ】2017年のJ2リーグをデータでまとめてみました ~チームスタッツ編~
2017 明治安田生命J2リーグ 初のJ1昇格 Vファーレン長崎
【公式】V・ファーレン長崎 高田社長のJ1昇格を決めた試合後スピーチ「夢はどんどん階段を昇って、前へ前へと進んで行きますよ」
湘南ベルマーレが3節を残して優勝&1年でのJ1復帰。
Vファーレン長崎が2位で初のJ1(ゼイワン)昇格。
リーグ3位で終えた名古屋グランパスが昇格POを勝ち抜いて1年でJ1復帰。
湘南と名古屋のJ1復帰は妥当な結果に思えながらも、長崎の自動昇格を予想できた人は殆どいなかったのではないでしょうか。
今季は開幕戦から最終節まで混沌とした戦いが続いたJ2リーグ。
混沌の要因かどうかは分かりませんが、今季のJ2は再スタートを切ったチームが多かったことがトピックとして上げられるかと。
J1リーグは今季18チーム中15チームで昨季以前から引き続いて同じ指揮官が続投していたのに対し(うち、7チームがシーズン中に監督を解任)、J2リーグはというと22チーム中実に10チームが新指揮官を迎えてのシーズンでした。
(17シーズン開幕前にまとめてます)
football-data-visualization.hatenablog.com
故に昨季に比べて大きくスタイルが変化したチームが少なからず見受けられるのが今季のJ2リーグでした。
そのあたり、昨季のまとめと比較してご覧いただくと面白いかもしれません。
football-data-visualization.hatenablog.com
今回も前回のJ1のまとめをトレースした形で分析と可視化、考察を進めていきたいと思います。
データはご覧の提供でお送りいたします。
まず最初に今回の分析に用いたローデータを貼っておきます(画像でですが)。
【図1】2017シーズン J2リーグ チームスタッツ一覧
優勝した湘南が勝ち点83、2位の長崎が勝ち点80。
3位の名古屋が勝ち点75なので、自動昇格した2チームは最終節前に昇格を決めていたあたりも含めて、3位以下とは勝ち点で十分な差があったと言えそうです。
まずこの事実を頭に置きつつ、以下の可視化をご覧いただければと思います。
というのも、J2はJ1のように強いチームが目立ったスタッツを記録するというような、分かりやすい傾向にはなっていないので...(湘南と長崎の位置に注目)
【図2】パス成功率 × ボール支配率 の散布図
まずは、パス成功率→ボール支配率の散布図。
J1では、右上に布置する「ボールを動かせるチーム」が上位にいる傾向でしたが、図2をご覧いただくと、右上奥にいるのは18位のFC岐阜。
J1のトレンドと合致するのは、3位の名古屋グランパスくらい。
名古屋と岐阜に加えて千葉、徳島、大分、東京Vあたりまでがパス成功率75%以上、支配率50%以上という閾値に収まるチーム。前回のJ1まとめで「持たざるチーム」か否かを分けた境界よりも上にいるチームということに。
J1ではどうにか降格せずやっていけそうな閾値より上にいながら、昇格を果たせたのは名古屋グランパスだけ(しかもPOで)というのがJ2というリーグなのです。
2位で昇格を果たした長崎はというと、ボール支配率ではブービー。
J2リーグで、です。。
【図3】パス成功率 × シュート到達率の散布図
パスで精度高くボールを動かせる→シュートまで到達できているかを図3で可視化。
先程のボールプレーにおいてJ1水準にある6チームのうち、岐阜と名古屋を除く4チームはパスワークの精度がシュート到達までうまく繋がっているように見えます。
岐阜と名古屋はパス本数リーグ1位と2位のチーム。それ故、パスは繋がるもやや手数を掛け過ぎていた(かけさせられていた)のでしょうか。
この可視化で注目なのは、突如右端に躍り出たアビスパ福岡。
パス成功率は75%を下回るもシュート到達率はリーグ1位。ボール支配率もアベレージで50%を下回っているので、主体的にボールを保持して動かしていくというより、ボールを奪って反転カウンターからシュートに繋げる事に長けていたということでしょうか。
自動昇格を果たした湘南と長崎は、この図3の可視化ではほぼ中央に布置しており、パスの正確性がシュート到達に繋がっているかの部分では、今季のJ2リーグの中でも中庸な水準であったと言えそうです。
【図4】攻撃回数 × ボール支配率の散布図
ボール支配の多寡と攻撃頻度との関係性を図4で可視化。
攻撃回数のJ2平均は約130回。
岐阜を筆頭に千葉、徳島、名古屋がボールを握りつつ、積極的に攻撃を図っていたチーム。
岐阜と名古屋は先程の図3ではシュート到達率が千葉、徳島よりも低かったかと思いますが、攻撃姿勢は決して弱くはなかったということかと。
極端に相手に引かれる展開が多かったのか、相手の守備陣を崩しきるまでシュートは打たずにボールを保持し続けることをセオリーとしていたのか、あるいはそのどちらもなのか...
面白いのが攻撃回数最多の町田ゼルビアと攻撃回数最少の大分トリニータ。
大分はパス成功率、ボール支配率、シュート到達率は比較的高めながら、攻撃頻度はリーグで最も少なかったチーム。J1における広島と似通った傾向にあると言えます。パスを繋ぎボールを保持しつつも無闇にアタッキングをするのではなく、相手の隙を突いて効果的にシュートまで繋げていた印象。
反対に町田ゼルビアは、パス成功率が極端に低い(56.9%)にも関わらず、攻撃回数はリーグ最多を記録。とにかくボールを前に蹴ってゴールを目指す...そんな戦い方を貫いたということなのかなと。
長崎はこの可視化では左下に。
ボールを保持する訳でもなく、積極的に攻撃を仕掛けるという訳でもなさそうな...
【図5】シュート到達率 × 攻撃1回あたりのパス本数の散布図
シュートまでの手数≒攻撃1回あたりのパス本数として、シュートに繋げられたかどうかの効率を確認したく図5で可視化。
前述の通り、シュート到達率1位の福岡ですが、攻撃1回あたりのパス本数は3本も無い程度。やはり、速攻型のチームだったということでしょうか。
大分、徳島、千葉が平均3~4本のパスで攻撃を構成し、それら攻撃のうち11~12%程をシュートに繋げられている。
5本以上のパスを掛けて10%前後のシュート到達率となっている名古屋と岐阜は、攻撃にやや手数を掛けていたチーム。
降格争いを演じた群馬、熊本、山口といったチームは1回の攻撃をおよそアベレージ3本のパスで構成するも、シュート到達率は8%台。
1回の攻撃が2~3本のパス本数というのはJ2平均ではあるものの、シュートに繋げるまで攻撃を効率的に完遂できなかったが故に下位に低迷したのではないかと推察できます。
【図6】決定率 × シュート到達率の散布図
J1では順位≒強さを如実に表わしていた、シュート到達率→決定率の散布図ですが、J2では少し様子が異なっています。
まず目立つのが名古屋の枠内シュート決定率39.6%という断トツの数字。
パス精度の高さ、支配率の高さ、やや手数が掛かるが故にシュート到達率はそこまで高くはなかったものの、決定率はJ2の中では図抜けていましたね。
シュート到達率でリーグ1位だった福岡ですが、得点力で苦戦していた印象そのままの結果がこの図6で明らかになった気がします。
カウンターで効果的にシュートまで持ち込みながら、決定率の低さに泣いたシーズンだったような。ウェリントンを擁しながら何故...と思われるかもしれませんが、むしろウェリントン頼みだったのかな、というのが個人的な印象です。
パス成功率やボール支配率では名古屋と似た水準にあったFC岐阜も決定率に苦しんだ結果に。逆に決定的な仕事ができるアタッカーを加えれば、来季大きく躍進するポテンシャルを秘めている気はします。
これまで目立たないスタッツに沈んでいた長崎ですが、決定率は徳島や京都に並ぶ水準に。意外なのは、湘南が平凡な水準に留まっている事。ここまで見てきた可視化でも湘南、長崎は特に目立った布置にはいませんでした。そんな湘南と長崎ですが、終わってみればJ1昇格を達成。
その要因はいったいどこに...?
【図7】被決定率 × 被シュート到達率の散布図
図6とは反対に被シュート到達率と被決定率の散布図を図7に。
この図7の可視化がJ2というリーグの特徴を表している気がします。
優勝を果たした湘南ベルマーレは、被決定率がリーグ最低水準。
2位の長崎も福岡、松本に継ぐ水準に布置。
そう、J2はJ1とは違い、何より守備がモノを言うリーグなのです。
右上に布置するザスパクサツ群馬は、受けた攻撃から数多くシュートを打たれ、打たれたシュートが数多く自ゴールのネットを揺らす結果になったことがJ3降格の最大の要因だったような...
図6のシュート到達率×決定率の可視化では、21位に終わったロアッソ熊本の方が低い水準にあったにも関わらず、勝ち点で17ptも差をあけられての最下位に終わったので、勝ち点に寄与する度合いは、守備>攻撃と言えるのではないか(全てではないが)。
おらがジェフユナイテッド千葉が安定的な戦いをシーズン通じてできなかった要因は、守備が不安定だったからという事に尽きるでしょう。これはハイプレス&ハイラインという特異な戦術だったこと、それに対する相手の対策にハマってしまうゲームを手痛く落としてきた事の結果と言えそうです。
【図8】2017シーズンJ2チーム アタッキング効率の比較
左からチーム毎に今季最終順位でソートし、攻撃の指標をプロットして作図しました。各最大値・最小値をラベルで記載。
決定率、枠内シュート率でリーグ1位が名古屋グランパス、30Mライン進入成功率で1位が岐阜と、圧倒的なパス本数とボール支配をマークした両チームが攻撃的スタイルそのままのスタッツを記録。
J3降格となったザスパクサツ群馬はシュート到達率、枠内シュート率でリーグ最下位。
森下監督のもと、ポゼッションするスタイルに着手したシーズンでしたが様々な要因が絡んだこともあり、当初の狙いとはかけ離れたパフォーマンスに終始してしまいましたね。
【図9】2017シーズンJ2チーム 守備アクション効率の比較
こちらも最終順位ソートで守備スタッツをプロット。
湘南の被決定率の低さは特筆もの。
堅い守備で僅差のゲームを勝ち切ることで、勝ち点を着実に積み上げたシーズンと言えそうです。
シュート到達率最低のジェフ千葉ですが、これはやはりハイライン戦術に依るところが大きいかと思います。最終ラインを極端に押し上げることで、相手陣内に押し込んでサッカーを展開しようとする訳なので、自ずと相手は千葉ゴールから遠ざけられる時間が多くなります。
千葉のハイライン裏にボールを蹴り込んでタイミングよくアタッカーを飛び出させようとするわけですが、これがうまくいかないと尽くオフサイドに引っかかる事に。
しかし運良く抜け出せれば即決定機に繋がるわけでして、それ故ハイライン戦術についてはギャンブル的に千葉にリスクが大きかったように思えました。
意外な傾向を見せているのが被攻撃回数最少の大分トリニータでして、千葉とは反対に被シュート到達率がリーグ最大でした。
これは大分がキーパーからビルドアップして攻撃を組み立てるスタイルだったことから、自ゴールに近い位置にボールがある時間が長かったことと関係していそうです。
自陣内でのビルドアップでミスを犯すと、即座に相手のシュートチャンスとなってしまう訳なので、大分もまたリスク・コントロールに苦労したシーズンではなかったかなと思えました。
【図10】2017シーズンJ2チーム 得点&失点の分布
最後に今季J2の得失点分布を上から最終順位ソートで載せてみます。
J1自動昇格可否の得失点閾値として、個人的に「40失点未満&60得点以上」という数値を置いていまして、特に失点数については今季もその閾値に収まったなという印象です。
異常値ともいえる数値をマークしているのがシーズン85得点の名古屋と、88失点の群馬。シーズン42節の倍以上得点、失点をしているということに。
両チームとも来季はカテゴリがJ2から変わりますが、それぞれどのような得点数/失点数になるか、J2という特異なリーグ性質との対比も合わせて興味深いところです。
新指揮官を迎えたチームが10チームにものぼったJ2リーグ。
うち、来季も続投が決まっているチームがほとんでして、初年度にスタイルの土台を築いて2年目を迎えるチームが来季どのような進化を見せるのか、データ的視点からも興味は尽きません。
次回は選手にフォーカスしたデータ分析&可視化をJ1、J2それぞれでまとめてみたいと思います。
では、また!