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【ジェフ千葉】大分トリニータ戦プレビュー ~攻撃と守備、それぞれのスタイルと効果について考察する~

 2017明治安田生命J2リーグ 第21節
 ジェフユナイテッド千葉 - 大分トリニータ

  18:00 K.O / フクダ電子アリーナ


【公式】プレビュー:ジェフユナイテッド千葉vs大分トリニータ 明治安田生命J2リーグ 第21節 2017/7/1

 

  リーグ前半戦最後のゲームは、無敗のフクダ電子アリーナ大分トリニータを迎えます。

 大分は勝ち点32で現在8位。おらがジェフは、勝ち点27で13位。

 大分は今季はJ2昇格初年度ですが、ここまでは順調に勝ち点を積んできている印象。連敗は一度もなく、3点差以上の大敗もない。

 翻ってジェフはというと、例年通りと言ってしまうと悲しくなりますが、不本意な成績に留まっているというのが正しい認識なのかなと。前節のような大量得点する勝利もあれば、手も足も出ないまま敗れ去る大敗もある。未だ連勝はなく、安定した戦いができていない状況。

 

 そんな中でもホームでは未だ無敗を継続しており、今節は苦手のアウェイで勝利して帰ってくるというシチュエーション。上位相手とはいえ、フクアリでの相性は良い大分と今季初の連勝を賭けて戦います。

 

 本エントリでは、リーグ戦折り返し直前ということで大分トリニータに深くフォーカスするというよりも、J2リーグ全体を見渡した中で、大分と千葉との特徴を可視化、考察していこうというスタンスでお送りしたく存じます。

 テーマは、「攻撃と守備のスタイルの違いとその効果」です。

 

 データはご覧の提供でお送りします

www.football-lab.jp

 

 攻撃と守備。

 片方はゴールを奪うアクション、プロセス、ロジックであり、もう片方はゴールを奪われないためのプロセスやロジック、またはボールを奪い返すアクション。

 ひっくるめて「戦術」であったり、「システム」のような言葉で表されるのかなと思います。

 データではどのような指標になるのか。

 データ元のFootball LABさんに「攻撃回数」についてのデータ定義が下記の通り載っていました。

 

【攻撃回数】

ある特定の状況において例外はあるものの、ボールを保持してから相手チームに渡 る、もしくはファウルやボールアウトで試合が止まるまでの間を1回の攻撃とする

 

 ”ある特定の状況においての例外”が何なのかは説明がないので分かりませんが、ボールを保持して何らかのアクションを試みて、相手に奪われる、またはラインアウトでゲームが止まるまでを1カウントとするプレーを、「攻撃」と定義しているようです。

 私の認識では攻撃とは「ボール前進」、すなわち相手ゴールに向かってボールを動かすアクションを指すと思っています。

 クリアも相手ゴールに向かって前に蹴り出しているから攻撃じゃないのか?と思われるかもですが、確実にボールを保持している状態から蹴り出されたアクションとは言い難いので、クリアはあくまで「守備」のアクションに分類されるべきと思います。

 

 そんなこんなで、ちょっと能書が長くなりましたが、データからサッカーのプレーを語ろうとすると、データ定義≒該当するプレーとの結びつきをハッキリさせてからでないと、理解や解釈がブレる気がしているので、あえて冒頭にのべさせていただきました。

(このあたり、データとサッカーのプレー、局面とのマッピング図を前エントリで載せています)

 

football-data-visualization.hatenablog.com

 

 ひとまず「攻撃」についての定義を固めた上で、最初の可視化を下記に。

 

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【図1】J2各チームの攻撃スタイル 考察

 

 左右ふたつの散布図を1セットとして、J2各チームの攻撃スタイルについて考察したく。

 まず図1の左は攻撃回数(横軸)✕ 被攻撃回数(縦軸)の散布図。青線は線形近似で、プロットされた各チームを表す点との距離が最小になるように引かれた、いわば平均的なトレンドを表す線。十字に交差する点線は各平均値になります(攻撃回数、被攻撃回数共に約133回)。

 千葉と大分を色違いで(大分は青で紛らわしいですが、、)描いてます。

 散布図なので、右に行くほど、また上に行くほど各指標が高く、逆方向になると低いという事になります。

 

 平均を示す点線で散布図を4つの象限に区切ると、千葉がいる右上の象限は、「数多く攻撃を加えるが、相手からも多く攻撃を受ける」スタイル。

 対する大分のいる左下はというと、「数多く攻撃することもないが、相手から受ける攻撃も多くはない」というスタイルと言えるかと。

 散布図の通り、大分は攻撃回数がリーグ最下位の22位であると同時に、被攻撃回数はリーグ1位(最も少ないという意)です。

 大分は直近の群馬戦の映像を見る限り、攻撃では後方でじっくりとパスを回してポゼッションし、ボール前進は最終ライン、またはボランチから前線の1トップ2シャドーに当てるパス、またはWBを走らせるロングフィードを スイッチとする緩急をつけた攻撃が特徴。

 一方、守備ではボールを失ったら即座に奪い返すというよりも、後方にいち早く引いて各選手持ち場のポジションに戻ってスペースを埋める統制の取れたアクションを遂行しているように見受けられました。

 

 そのあたりを踏まえて同じ図1の右の散布図、横軸の攻撃回数はそのままに縦軸にボール支配率をクロスした可視化をご覧ください。

 前エントリで上げたように、千葉は岐阜と同じくはるか右上に布置しています。

 右の散布図も4象限で区分するなら、千葉や岐阜、また少し下に位置する名古屋などは「ボールを保持し、数多く攻撃を加える」スタイルのチーム。

 対して、左の散布図で遥か左下にいた大分はというと、ボールポゼッションはリーグ平均よりも高いので、ボールは保持するチームであることがお分かりいただけるかと。

 ただ、千葉と異なるのは攻撃回数が最も少ないため、「ボールは保持するが、数多く攻撃をすることはない」というスタイルなのが大分というチーム。

 これは、どういうことなのか。

 もう少し可視化を見ていきながら考察していきます。

 

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【図2】J2各チームの攻撃&守備の効率性 考察

 

 図2では、攻撃回数/被攻撃回数と「シュート到達率」、「被シュート到達率」との散布図。

 シュート到達率は、Football LABさんの「チャンス構築率」と同じく、攻撃回数のうち、どの程度の割合シュートまで到達したのかを表す指標です。

 

 これを見ていくと、まず左の「攻撃→シュート到達率」の散布図では、図1同様に平均値を示す点線で区切った4象限の右上に千葉が、左上に大分が布置しています。

 ちなみにシュート到達率のリーグ平均は9.9%。ほぼ10%と見ると、10回攻撃を試みるうちの、1本はシュートまで持っていけているという具合です。

 このシュート到達率、千葉はというと、11.4%、大分は10.2%。

 千葉は数多く攻撃を繰り出しているというのに、シュートまでの効率性で比べると攻撃回数がリーグ最低の大分とさほど変わらないという事実。。

 ここまでの可視化からは、燃費の悪い千葉、省エネな大分、という見方になってしまいますね。。

 

 一方の守備はというと、右の散布図「被攻撃→被シュート」を可視化、同じく4象限での解釈を加えますと、千葉は右下「相手から受ける攻撃は多いが、シュートまでは持ち込ませていない」という守備の特徴が伺え、一方の大分は左上「相手から受ける攻撃は多くはないが、ややシュートまでは持ち込まれている」という風な見方かと。

 千葉の守備についての解釈ですが、ハイプレス&ハイラインの機能について考察したエントリであったように、攻撃は多く受けるものの、被シュート到達率は下がっているんですね(課題はもう少し深い部分にある...) 。

 

football-data-visualization.hatenablog.com

 

 大分はというと、自陣に引いてセットして守るのですが、そこからゾーンに侵入したボールホルダーに対してアグレッシブにアプローチするということはなく、警告数がリーグ最低水準であることから、ファウルをすることなく奪うアプローチで守っています。

 そういったプレーモデルであることから、相手の攻撃を受ける局面ではその頻度は多くはないまでも、シュートまではやや持ち込まれる頻度が多くなってしまっているということなのかなと思います。

 この激しい守備はやってこないという部分に、千葉としてはつけ込む隙がありそうではありますが...(直接FKなど、セットプレーの機会は減るかも)

 

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【図3】J2各チームの攻撃&守備のコンバージョン率 考察

 

  最後に「決定率」を加えての可視化を。

 左右散布図はそれぞれ左が「シュート到達率→決定率」、右が「被シュート到達率→被決定率」になります。

 図3キャプションを「コンバージョン率」としていますが、コンバージョンとは「最終成果」、つまりゴールを指しています。

 

 右の「シュート到達率→決定率」の布置では、千葉も大分も右上の象限「攻撃からシュートまで持ち込めていて、シュートをゴールに陥れる事ができている」という見方ができるチームと言えるかと(千葉は勝利試合は多くないけど、大量得点で勝っているので、データ上はそうなってしまっている)。

 この象限には、東京V、徳島、長崎など一桁順位のチームが居並んでいます。

 では、何故そういったチームと同じ傾向の千葉は13位に沈んでいるのか...

 

 左の散布図がこれまで何度も述べている千葉の課題、問題点の根源を示していまして...

 「被シュート→被決定率」の散布図では、千葉は右下「攻撃からシュートまでは持ち込ませていないのに、撃たれたシュートを沈められている」というのが現状。。被決定率は群馬に次ぐリーグ21位。。

 GKの質の問題だ!という見方もあるでしょうが、ハイライン故に1度か2度、試合の中で訪れてしまう交通事故のような決定機を沈められる。または岐阜戦の1失点目や岡山戦の2失点目のような、やってはいけない自ゴール前でのミスからの失点など、ゴールキーパーには酷な決定機で失点していることから、このような被決定率になっているのかな、と。。

 対する大分は、左上「攻撃からシュートまでは持ち込まれるが、撃たれたシュートは防げている」ようです。

 球際はあまり厳しくなくファウルをせず守るが故にシュートまでは撃たれていますが、ブロックの意識、最後の局面はやらせない意識が高いためか被決定率はリーグ5位の低さ。

 この散布図で注目なのは、左下の「攻撃からシュートまでは持ち込ませておらず、撃たれたシュートも防げている」チーム。

 絶好調の水戸はじめ、首位の福岡、2位の湘南、前節徳島に負けるまで9戦無敗だった山形など、相手の決定機でやらせていない、そもそもシュートも撃たせていないという守備ができているチームが居揃っているんですね。

 千葉もハイプレス&ハイラインで自ゴールから相手を遠ざけている事で、被シュート数自体を減らす事はできています

 被決定機に繋がる拙いミスを減らすことと、ハイラインという構造上1度や2度訪れてしまう決定機を何とか防ぐという事ができれば、この散布図における左下のチームらの仲間入りができるのではないかなと。

 ハイラインを継続する限り、後者のような構造上訪れる決定機からの失点は防げずとも、決定機に繋がるミスをしないようにリスクマネジメントを浸透させるだけでも、前半戦喫した同様の失点は、後半戦減らせるのではないかなと思います。

 

 そういった背景も鑑みつつ、千葉と同様ボールをポゼッションしながらも、リスクを負わないサッカーで勝ち点を積んでいる大分との一戦を、ひとつターニングポイントにできないかなと願う次第です。相手のプレーや戦い方から何か学ぶものがあるんではないかな、と...

 

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【図4】大分トリニータ戦 予想フォーメーション

 

 図4に当たらない予想スタメンなぞ載っけてみました。

 岐阜戦でのハードワークの代償か、指宿や近藤が途中交代で引っ込んでいたり、アランダが終盤足を攣っていたりなど、リーグも半分を消化しようかという時期、夏場の戦いに差し掛かっているなど、ケガ人が出てきてもおかしくない季節。

 幸い、千葉は他所のチームよりもケガの事象は少ないようなので、陣容のやりくりにはそこまで苦労してなさそうですが...

 エスナイデル監督はスタメンを毎回いじる傾向でして、これは選手個々のフィットネスのデータも参考にしているという説によると、酷使しすぎない配慮からくるものだとされています(確証はありあません)。

 

 大分は恐らく前節と同じ布陣ではないかなと。

 元千葉の選手も実は多くいたりしていて、山岸なんかは久々のフクアリ帰還になると思いますね(竹内もか)。元千葉のベテランふたりは、大分の相手の隙を伺う戦い方にマッチして、行くべき時と引くべき時の判断が巧いなという印象。

 ダブルボランチの鈴木と川西も、やはり攻守の判断や技術的な部分でも高いクオリティを見せてくる選手かなと。

 最も警戒すべきは、チーム得点王の後藤で、単純にスピードがあるということもそうですし、シュート技術も高い。ハイライン裏に抜け出されて決定機を与えてしまうと、高い確率でゴールを陥れられてしまうかと。

 

 千葉としては、岐阜に続いてボールを保持してくる相性の良い相手。

 球際で激しい守備を見せるような籠城戦で強みを発揮する相手ではないので、アウェイと言えど大分はボールを持ってくれるのではないかなと。

 ハイプレスで追い立てて、中盤でうまくボールを引っ掛けてのカウンターがうまく嵌まれば勝機も見えてきましょう。

 

 リーグ前半戦最後の試合で訪れた連勝のチャンス。無敗のフクアリでそれが達成できるかどうか。

 

 この後、再びのホーム讃岐、アウェイの熊本と下位との対戦が控えており、連勝で勝ち点を稼いでジャンプアップするには絶好のカレンダーになっています。

 

 途中、12日のミッドウィークにはガンバ大阪との天皇杯3回戦もあり、J1上位チーム相手の力試しには絶好の機会。

 

  前節苦手のアウェイで勝てた良い流れをホーム・フクアリでも継続できるよう、全力で後押しをしていきましょう。

 

 では、また!

 WIN BY ALL!!

 

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