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【ジェフ千葉】FC岐阜戦レビュー ~ポゼッション対決の行方・観戦会プレビューの振り返り~

 2017明治安田生命J2リーグ 第20節
 FC岐阜 4 - 6 ジェフユナイテッド千葉

得点者:大本祐槻 14' / 乾貴哉 24' / 古橋享梧 45' / 指宿洋史 45+2' / 清武功暉 47' /

キム・ボムヨン 54' / アランダ 60' / 古橋享梧 67' / ラリベイ 69' / 永島悠史 78'


【公式】ハイライト:FC岐阜vsジェフユナイテッド千葉 明治安田生命J2リーグ 第20節 2017/6/25

 

 両軍合わせて10度もゴールネットが揺れた長良川競技場での一戦。

 「15位と16位の直接対決」という、当事者以外からしたら見るものの少ない試合だったかもしれませんが、「J2屈指のポゼッション対決」と銘打たれた戦いは、スペクタクルに満ちた90分間になりました。

 ジェフはこの20節の岐阜戦まで、パス数とボール支配率で相手に上回られた試合はひとつもありませんでした。今節の相手、FC岐阜が唯一戦前のスタッツでジェフのそれを上回っていたチーム。

 それ故、ジェフはいかに岐阜のポゼッションを削るか、即ちいかに岐阜のパスワークに対抗するのかがこの試合の見所でした。

 

 この日は、前エントリで告知した通りzu-ka-ki-さん企画の観戦会に参加し、前説でマッチプレビューを披露させていただきました。

 試合の方はジェフのスポンサーでもある居酒屋Enyaさんにてパブリックビューイング

 本エントリはその時の内容を振り返りながら、試合後にアップされたデータをなぞっていこうかと思います。

 データはご覧の提供でお送りします。

www.football-lab.jp

 

(観戦会の模様はzu-ka-ki-さんのブログに詳細が綴られています)

standing-ovation.blog.jp

 

 冒頭に下記のような関係図をお見せしたかと思いますが、最初にコレを持ってきたのはFootball LABさんのデータとサッカーの局面とをマッピングして、それぞれプレーとデータを結びつけて理解いただくのに役立つかと思ったからです。

 トランジションに関するデータが乏しいのが歯がゆいのですが...今回は、「パス」のデータについてお話しします。

 

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【図1】サッカーにおける4つの局面+セットプレーとデータの関係 

 

 観戦会の前説で私からお話ししたマッチプレビューでの主眼は、「岐阜のパスワーク vs 千葉のハイプレス」でした。

 ミッドウィークの天皇杯ではリードして折り返した後半から、千葉はハイプレスではなくハーフウェーラインあたりでセットして待ち構える守備に切り替えたこともあって、パスワークが巧みな岐阜相手にも、もしかしたらプレッシングではなくゾーンディフェンスをやるのか...とも思っていました。

 前説で上げたデータ(下記図2)にあるように、「岐阜は相手陣内でもパス成功率が落ちない」というファクトがあったため、もしかしたら岐阜のパスサッカーを警戒してハイラインをやめ、ゾーンで引っ掛けてカウンターに勝機を見出すのでは、、そんな妄想をしていたのです。

 

 しかし、試合が始まるとジェフの選手らはいつものように果敢にハイプレスを発動。これまでと同様、ポゼッションでリーグ1位の岐阜相手にも真っ向勝負で対抗するおらがジェフ。

 試合は序盤から繋ぐ岐阜、そこに襲いかかるジェフという構図。

 前半早々に優也とボムヨンの拙い連携ミスから先制を許すも、攻勢を保った中で得た右CKから乾が頭で合わせて同点。

 これまでの試合では、ジェフのCKは右は左利きの選手、左のCKは右利きの選手が蹴り、弾道がインスイングに(つまりゴールに向かうように)なるようになっていたように思えましたが、この時のキッカーは左利きの乾ではなく右利きの清武。

 高さが無い岐阜相手に187cmの長身を誇る乾がターゲットマンとして加われば、セットプレーで優位性を発揮できるー そんな戦前のスカウティングがあったのかもしれません。

 前半終了間際にも岐阜のパスワークに対し、大久保がボールにチャレンジするも外され、パスを受けた岐阜の古橋に対して近藤のポジショニングとボムヨンのカバリングが噛み合わず、CB間を割られて失点。

 が、すぐさま近藤のロングフィードに快速を飛ばして抜け出した北爪の折り返しを指宿が詰めて同点。前半を2-2で折り返します。

 

 岐阜が上げた2ゴールはいずれも千葉のミスによるもの(2点目はポジショニングとコーチングミスと思っている)。

 試合の中身を見るに千葉のプレッシングは、岐阜に少なからずダメージを与えていたように思います。岐阜のパスワークはさすがでしたが、流れの中から決定機らしいチャンスは作れてはいなかったように見えました。

 翻っておらがジェフも岐阜の人数を掛けた囲い込みに対して、やや余裕のないパス回しを強いられていた様子。次第にプレスで奪ったボールを前線の指宿、清武、そして途中から前線に張るようになった乾といったフィジカル優位性のある選手へロングパスを入れるようになり、リスクを回避して岐阜の包囲網を掻い潜る展開が多くなっていました。

 そのあたりの、中盤でのボールの奪い合い、トランジション戦の時間が長くなる展開は、双方のパススタッツにどのような変化をもたらしたのか。

 観戦会でお配りしたシーズン平均のパス成功率の可視化に、この試合の岐阜、千葉のパス成功率を追記したのが下記図2。

【訂正】観戦会でお配りした下記可視化の、自陣内/相手陣内のシーズン平均パス成功率の数値を貼り間違えていました。。正しくは下記の通りです。観戦会でご覧になった方、大変申し訳ありません。お詫び申し上げます。

 

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【図2】岐阜・千葉 両軍のパス成功率(シーズン平均/第20節) 

 

 相手陣内でもパス成功率が落ちない岐阜と、やや相手陣内ではパスを引っ掛けてしまう千葉。ただ、千葉のハイプレスはここまでの19試合を平均すると、13〜14%程の相手パス成功率を削ぐくらいには威力がありそうだ、という話でした。

 この20節の対戦の結果、13〜14%まででは無いにしろ、5〜6%程度は岐阜のパス精度を削ぐことができたようでした。

(岐阜のパス精度の自陣内/相手陣内での分けは、節毎にデータを取れていないので今節だけ取り出せなくてスミマセン)

 

 この5〜6%のマイナスがクリティカルに効果的かどうかはちょっと評価が難しいところですが、岐阜の選手らがいつもなら8割のパスを繋げているところを、千葉の執拗なプレスによって8割に届かない程度にパス精度が落ちたことで、感覚的に小さくないズレや攻撃のテンポが出ないという事に繋がって自慢のパスワークによる攻撃が機能しなかったのではないかと思います。

 

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【図3】ジェフ千葉 節毎のパス本数についての深掘り 

 

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【図4】各チーム対ジェフ千葉戦のパス本数についての深掘り 

 

  図3と4は、これも観戦会でお配りした詳細データの加工指標、「1分あたりのパス本数」、「攻撃1回あたりのパス本数」、「ポゼッション回復のパス本数」を節毎にグラフ化したもの。

 ジェフのパス本数もJ2における平均のそれと比べるとJ2リーグ2位のスタッツを記録しているくらいなので当然多めになります。

 岐阜も千葉も1回の攻撃に手数をかけているという部分では同じ。

 

 そこを踏まえ、図4をご覧いただくとFC岐阜の数値が異常値であることがひと目で分かりいただけるかと。

 他チームが対ジェフ戦では1回の攻撃あたり平均2本パスを繋げればいい方なのに対して、岐阜は倍の4本繋いでくる。注目なのは、ポゼッション回復のパスは約1本と、他チームと変わらなかったということ。

 ちなみに普段のFC岐阜はというと、90分あたり7〜8本のパスを繋ぎ、1回の攻撃に対しては5本はパスを繋ぐ。

 それが、千葉戦は同5本、攻撃移行時は4本なので、それぞれポゼ回復のパスと攻撃時のパスがそれぞれ1本ずつ少なかったという事になる。

 FC岐阜が後方でビルドアップする時、またはポジティブ・トランジションからポゼッション回復をするためのパスを2本繋ぐところを、そのいとまを与えず1本減じる。

 または攻撃に移行して千葉の守備網を切り裂こうとする際のパスも普段より1本少なくすることができた。

  これこそが、おらがジェフのハイプレスの威力、と言えなくはないか。 

 

 後半、千葉が4得点を奪い、一時は3点差まで開き試合はほぼ決してはいましたが、千葉は後方に引いて籠城戦をすることなく、終盤足が止まるまでボールホルダーへのプレッシングを継続(プレッシング継続は監督の指示かもしれませんが...)。

 この日の長良川は高温多湿ということで、ハードワークを続けるには条件的には厳しそうではありましたが、80分前後までプレーのインテンシティは落ちなかったおらがジェフ。

 前半のミスからの2失点を含め、結果的にトータル4失点している訳ですから、守備やゲームマネジメントには未だ改善すべき点が多いかとは思います。 

 ゲーム展開や点差によって前から奪いに行くべき時と、ある程度引いて体力の消耗を抑えながら耐える時とを使い分けられるようになれるのが理想ではあるでしょう。

 ただ、今季初めて相手にボールを支配される局面に晒されても、伝家の宝刀であるハイプレスを貫いてハードワークすることができた点は、その完成度は抜きにしても讃えられるべきものではないでしょうか。

 今はまずそのハイプレスを鋭利な武器とするための過程なのではないかなと(シーズン半分使っちゃったけど...)。

 前半戦も残るはホームの大分戦のみ。 

 天皇杯でハイプレスをやめ、ハーフウェーラインで迎撃する守備にも着手したように、これからリーグ後半戦に入って一度対戦した相手との再戦を迎え、敵も我々も戦術や対策をアレンジして行くものと思います。

 ハイプレスをやらなくなる試合がこの先あるにせよ、現時点でJ2最高水準のパススタッツを記録する相手に対しても、ハードワークしてハイプレスを貫く事でその精度を狂わせるのに一定の成果を収めることができた。

 アウェイで勝利できた事と合わせ、単純に自分たちのスタイルを出し切った事は自信にしてほしいなと思います。

 

 毎年のように夏場に失速してしまうおらがジェフですが、今季のジェフは夏に強いやもしれません(走りきれるという意)。

 提携企業との取り組みの甲斐あってか、ここまで負傷による長期離脱者はゼロ。

 多湿のゲームでもインテンシティを高く保って戦い抜く事ができた。

 加えて、ボールを保持しようとする相手に対しては、自慢のハイプレスで奪って反転速攻を繰り出せればリーグ屈指の破壊力を発揮できる事も分かってきた。

 

 首位とは勝ち点13差。昇格PO圏とも大差ではないにせよ1勝、2勝で届く差ではない。

 リーグ後半戦、昇格をその手にするためには連勝、そして負けない事が求められます。

 まだ一度もない連勝を皮切りに後半戦は連勝スタートで折り返せるよう、次節ホーム大分戦を全力でサポートしましょう。

 

 引き続きデータをウォッチしつつ、最新のジェフについての分析と考察を毎試合お届けできればと思います。

 

 では、また!

 WIN BY ALL!!

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