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【CSをちょっとプレビュー】2016シーズン J1リーグをデータでまとめてみました ~ゲームスタッツ編~


出場クラブが決定!Jリーグ最強クラブに輝くのは…!?【明治安田CS】

 

 2016年のJリーグが終わり、来季に向けて早くも新加入と退団、引退、または監督交代、続投などなど…日々の報道とクラブリリースに一喜一憂する、オフ恒例の別れと出会いの季節になりました。

 この選手があっちへ、あの選手がそっちへ…

 うちのエースが何故あそこに…?

 守備の要抜かれたら来季どうなるよ?

 新監督っていったい誰なの?

 生え抜きプリンス強奪やめて…

など、など。

 

 朝から悶々として、仕事も手につかない…そんな一日を過ごしていると、ふと目に入った「明日のCS」なる文字。。

……ん、ん?

 (おい!Jリーグ終わってねぇーじゃん!!)

 

 ……はい、終わってません。リーグは閉まったけど、チャンピオンシップ残ってましたねー。最終節から日にち空いたので、忘れてた…

(あと昇格プレーオフ残ってますね。ジェフ出られないから、遠巻きに眺めるスタンス…)

 

 てなわけで、本エントリは明日の川崎-鹿島戦含めの、2016シーズンJ1リーグのまとめをデータで視てみようと思います。(今度J2もやります。昇格プレーオフ前後にでも、)

 

 元データは、ご覧の提供でお送りします。

サッカーをデータで楽しむ|Football Lab

 

 まずは明日から始まるチャンピオンシップ(以下CS)のおさらいをば。

 今シーズンのJ1は浦和が年間王者&2ndステージ優勝でした。同2位の川崎、1stステージ王者の鹿島とのCS準決勝を経て勝った方が浦和とのホームアンドアウェイでの王者決定戦をもってリーグタイトル獲得となります。来季からは1シーズンに戻るので、ややこしくも当事者からしたらドッキドキなシーズンは今年で終わりです。

 

 浦和、川崎、鹿島サポさんは明日からのCSに向けてもう一度今シーズンを振り返る手引きとして、来季タイトルを睨む他チームのサポさんは今季の課題探しの材料に、そして残念ながら降格となったチームのサポさんはその原因探しの参考として、それぞれ本エントリをご覧いただければ、これ幸いに存じます。

 

 ゲームスタッツまとめは下部の表1に。スタッツはシーズン累積、または平均になります。それら指標の一部を主に散布図で可視化し、各チームをプロットして比較できるようにしました。

 まずは、ボールプレーのスタッツから。

 

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図1 パス成功率 ✕ ボール支配率 J1チーム比較散布図】 

 

 まずは、ひとつずつ考察してきます。

 サッカーというボールスポーツの原則、90分の試合においてボールを保持した割合、「ボール支配率」所謂ポゼッション率と、「パス成功率」のプロット。総パス数とパス成功率だけあるので、パス成功数は?って人は計算してみてください。

 自明ではありますが、パス数の多寡はあれど、基本的にパス成功率が高くなればボールを失うことが少なくなるわけなので、自ずとポゼ率は高くなります。

 パス成功率といっても、ロングパスからショートパスまで、前後左右のパス方向、そして自陣なのか相手陣内なのか、ピッチを分けたときのどのゾーンでのパスなのかなど、データとしてあるにはあるのですが項目多くなるので、一旦割愛。。

 チームの特徴に言及しますと、川崎、浦和の年間勝ち点1位と2位が右上に布置。次点で広島、柏、ガンバ、マリノス。ボールプレーに優れるチームという分類ができるのかなと。

 反対に左下、つまりパス成功率が低く、そのためポゼ率も低いチームが福岡、名古屋、甲府になるかと。

 降格2チームがこの象限に布置していることから、降格要因に関して考察を。

 あとに続く可視化にもいくつか別の要因は隠れているのですが、J1でやはりボールプレーの水準を高めないことには残留は厳しいということがまず前提として言えるのかなと思います。

 残留に必要なもの。それは勝ち点です。勝ち点を稼ぐために必要なのは勝つことであり、勝つためには相手よりも多くゴールすること、そして失点しないこと。特に前者の「ゴール」のためには、過程はどうあれ前提としてボールを握っていなければならない。ボール保持、ボール前進、そしてアタッキングによる相手守備網の攻略、そしてゴール、と。。

 当たり前すぎて書いててアレですが、それがなかなか難しいのがサッカーという競技。上位を争う力量のあるチームは、ボール保持、つまり失わないスキルが高い。そういった相手との戦いでどのようにゴールを奪うのか、勝ち点を稼ぐのか。。

 戦術については、好きだけどそこまで明るくないのでデータに戻ります ^^;

 翻ってポゼ率最下位の甲府残留成功していますが、甲府に関しては「そこ」は割り切ってシーズンを戦い抜いたという事実があります。5−4−1で後方にブロックを敷き、ロングカウンターによる急襲と前線のタレントによる高い決定力によってしたたかに勝ち点を稼いできた(2ndステージ第11節時点でポゼ最下位ながら決定率はリーグ5位だった)。

 それもまた、身の丈に合った甲府のJ1残留の術なのかなと思ったり。

 今季の名古屋に関しては、小倉監督がアクティブなサッカーを志向していたものの、ピッチでそれを実現できなかったことが、データからも浮き彫りになった恰好かと思われます。

 福岡は昇格後の補強面でこのボールプレーを手当する強化がままならなかったことが、ポゼ率&パス成功率低水準のイチ要因なのかなと推察できます。

 

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 【図2 攻撃回数 ✕ ボール支配率 J1チーム比較散布図】 

 

  続いて、ボール保持からボール前進、すなわちアタッキング≒攻撃を視て行きたく、「攻撃回数」のスタッツをポゼ率と。

 図1と同様にポゼ率が高ければ攻撃回数も高くなるだろう、、とはならないのが面白いところ。「攻撃回数」では、鹿島がリーグトップで「135.2回」(ポゼは51.8%で同6位)。浦和、川崎はポゼ率では抜けているものの、攻撃回数ではポゼ率で5割を割り込む湘南やFC東京よりも1試合平均では少ないという事実。

 ここは広島が特に顕著で、攻撃回数はリーグ最下位の109.2回ながらシュート数16.4本ゴール数平均1.7と、同2チームを上回るスタッツ。

 これはボールポゼとアタッキングに対する思想といえると思いますが、ボールを失わないことで常に主導権を自ら握った上でゲームを進めたいという意図がすけて見えてくるかなと。そのために、パスワークの質、ボールプレーの成熟がなされているという事実が図1と次の図3から分かります。

 特にゴールまでのプロセスに関しては、次の図3で広島の布置を視ていただくと如実に分かるのですが、、

 

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 【図3 パス成功率 ✕ シュート到達率 J1チーム比較散布図】 

 

 図3ではボールプレーの直接的指標としての「パス成功率」とゴールというKGIのサブKPI的指標、「シュート到達率」との散布図。

 (シュート到達率 = シュート数 / 30Mライン進入数

 広島は高い水準で「パスワーク→シュート」までのプロセスが切れずにコネクトできていることが分かるかと。

 ただ、ここで面白い布置を見せているのが中央やや右より下にいる、名古屋、福岡、甲府、磐田の4クラブ。パス成功率は低水準ながら、シュート到達率ではやや高めに布置しています。これは恐らく、シモビッチやウェリントン、ジェイ、クリスティアーノ(今季途中)ら個人能力の高い強力なFWが前線にいることで、アバウトなパスながらボールを預けさえできれば、個人で打開してシュートまではいけてしまうという事実があるのかな、と。

 ただ、この4クラブはいずれも残留争いに巻き込まれ、実際降格もしているということから、強力な外国人FW一本槍のやり方だけでは、J1の下位戦線を抜け出せないということが言えそうです。

 

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 【図4 スプリント回数 ✕ 走行距離 J1チーム比較散布図】 

 

 図4はボールプレーからちょっと毛色が変わり、トラッキングデータから、「スプリント回数」と「走行距離」の散布図。こちらのデータの見方は、以前のエントリを参照いただければと存じます。。

 

football-data-visualization.hatenablog.com

 

 今季のトラッキングデータ、各J1リーグ平均値は以下の通り。

 [スプリント回数]:157.9回(前年151回)|[走行距離]:112.6km(同112km)

 上の前エントリで今季は2015年より走ってるかも?なーんて思ってましたが、あんまり上振れしませんでしたね ^^;

 もはや代名詞となりつつあるチョウ監督指揮の湘南が走力面では他チームをぶっちぎっています(降格とはなったが、、スプリント回数は1試合平均190回!)。走行距離に関しては、フィッカデンティ監督就任1年目の鳥栖がリーグトップの1試合平均118.0km

 トラッキングデータの難点は、ポゼ時/非ポゼ時どっちの走りか色分けできない点。なので、推察にはなりますが、、スプリント>距離なのが、鹿島と大宮。スプリント<距離は、新潟と柏、FC東京も?

 昨季とほとんど布置が変わっていない、スプリントも走行距離も低い省エネ志向なのが、川崎と広島。神戸も走力面では近い象限ですが、川崎と広島はこれまで視てきた可視化にあったようにボールプレーの水準がリーグでも優位。ボールを正確かつミスなく握れることで、ボールを走らせ相手を走らせることで、守備にわまる時間を削り無駄な体力消耗を間接的に回避している、と。

 そこのところをもう少し指標を掛け合わせて視ていこうということで図5。 

 

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 【図5 パス数 ✕ 走行距離 J1チーム比較散布図】 

 

 パス数と走行距離との散布図。人は走らず(走行距離は低め)、ボールを走らせる(パス数多め)なのが川崎と広島。同じポゼ志向でも採用するシステム、人のタイプがちょっと違う2チームなのですが、データ上は似た象限に布置するという不思議。。

 対して浦和は川崎、広島よりもボールも走るが、人も走るよ〜ということで右上に布置。近いところで言うとガンバと柏も。

 図1や図2では浦和は川崎、広島なんかと近い象限でボールプレーに優れるという部分では似通ってはいましたが、そこに走力の指標をかませてみることで、ちょっと違いが見えてくる。。

 その部分をもうひとつだけ可視化してみたのが、図6。

 

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図6 スプリント回数 ✕ シュート到達率 J1チーム比較散布図】  

 

 走力、ここではスプリント回数としましたが、攻撃〜ゴールのプロセスとの絡みで視てみようということで、「シュート到達率」との散布図。

 シュート到達率は広島がリーグトップ。が、スプリント回数では、リーグ最下位の109.2回。よって右下に孤高に布置。。あくまで「パス」、そして実は高めなクロスとドリブルなどを駆使。(あるサイドの選手が突出して頑張っているという部分最適の結果なのだが、、別のエントリで。。)

 ボール保持→前進→相手守備網攻略→相手ゾーン進入→シュートまでのプロセスが構築できている広島。

 ここでCSのちょっとプレビューポイントなのが、鹿島と川崎の布置。エクスキューズとして、このスプリント回数が攻守、ポゼ/非ポゼで分解できない前提なのですが、シュート到達率では同水準ながら、スプリント回数では鹿島と川崎はご覧の開きがある。

 一方翻って図4に戻っていただくと、走行距離の面ではさほど開きがあるわけではなく、鹿島(110.5km)、川崎(109.7km)ともに長い距離を走るチームではないことがわかります。

 う〜ん、プレビュー的に物足りないので、最後にジェフ千葉のプレビューでよくやる「歩留り」という指標の加工と可視化でスタッツ比較をして締めたいと思います。

(歩留り他アタッキング指標構造の解説はジェフ千葉プレビュー記事参照)

 

football-data-visualization.hatenablog.com

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 【図7 アタッキング指標歩留り率 J1チーム比較】 

 

 図は攻撃回数〜30Mライン進入〜シュート〜枠内シュート〜ゴールまでのプロセスを攻撃のステップとして捉え、前のプロセスを母としたときの試行率とした各指標を折れ線でチーム毎年間順位のソートで一覧化したもの。

 ラベルで表示したのが、各指標の最高と最低。攻撃〜30Mライン進入成功率トップは浦和で47.1%。アタッキングのうち実に5割弱のライン進入試行が成功しているという驚異的な指標かと。。これの最低は甲府24.8%。引きこもり戦術をベースとするなら妥当な結果。

 相手ゾーン進入〜(射程内からの)シュート到達率では、広島の36.9%が最高、同最低はFC東京27.1%(ガンバも同率)。

 枠内シュート率は、35.8%のガンバが最高。同27.8%の湘南が最低。シュート到達率では最低のガンバですが、打てば枠に飛ぶという示唆。やっぱアデミウソンてシュート巧いの...?

 最後、決定率。最高は神戸の39.0%。最低は福岡で22.6%。神戸はレアンドロ&PJという優秀なアタッカーが決めるべきときに決めてくれる印象。神戸に関してはこれまで視てきた可視化で走行距離が最低(同107.4km)な以外、特に目立った特徴がなかったのですが、、ゴール沈めちまえばいいんだ!って感じが、ぽくていいっすね。。

 で、CSのプレビュー鹿島vs川崎比較でいうと、川崎のが効率という面では優勢かと。枠内シュート率、決定率で鹿島を凌いでいるところがポイントかと。大久保、小林悠という高い決定力を誇る日本人FWへ質の高いパスを供給できる陣容とコンビネーションを備えていますし。

 対して、鹿島。アタッキングの歩留りもさることながら、被攻撃面でもやや不安定さが。。ということで最後の可視化。

 

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 【図8 被攻撃回数〜被シュート〜被ゴール歩留り率 J1チーム比較】 

 

 今度はアタッキングとは逆で、被攻撃回数〜被シュート到達率〜被ゴール率の歩留り。攻撃回数は平均値になりますね。

 なんと、シーズン平均では、鹿島が被攻撃では最多(135.3回)。最低はやはりというべきか、広島(同105.6回) 。ボールを握っているからこそ、殴られる回数も少なくて済む、、という理屈。

 ただ、鹿島に関しては、被シュート到達率は最低の7.7%。最高はガンバの12.8%。ブロックなどのスタッツがないので、タックル数などで視ると、鹿島はタックル数平均が25.1回でリーグ最多。インターセプト3.1回で最多です。

 殴られる回数は多いけれど、アグレッシブな守備でシュートまでは持ち込ませないということか。対する川崎も広島と同様、ボールロストを回避するためか、アタッキングの歩留りではシュート到達率は高くはない。

 等々力でも一戦、殴られる強い鹿島の激しい守備を川崎が高いボールプレーによっていなす、というような展開で推移するのかな、と。

 ただ被ゴール率は、鹿島の方がやや高く(9.6%)、川崎からみると何とかシュートを枠に飛ばせれば、というところでしょうか。。

 

表1 2016シーズン J1チームのゲームスタッツまとめ

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 ここまで、ゲームスタッツのシーズン平均をチーム軸で比較してきましたが、やはり色々と面白い示唆が出てくるなぁというのが個人的な印象。

 ただ、11/3の最終節から20日近く間が空いており、シーズン4連敗で終えてしまった鹿島としてもきっちり立て直しを図ってくることでしょうし、川崎もけが人を抱えているなどベストの布陣で臨めるかは微妙なところ。

 それぞれにエクスキューズを抱えつつ、CS準決勝、一発勝負で浦和への挑戦権を争います。

 個人的にジェフ千葉を視ている身としては、J2でも同様の可視化と考察をしつつ、昇格チームの成功要因はもちろん、J1定着、または残留可否を占う...といった考察もできればなぁと思ったり。

 ただ、J2はトラッキングデータがなかったり、ゲームスタッツでも欲しい指標がなかったりなど。。あとは選手に関するスタッツや、ひいては指導者の特徴があぶりだせるデータも揃えられると、J1、J2それぞれで面白い分析ができそうだなぁと夢想したり。。

 

 オフシーズンは移籍市場も動くので、選手、指導者のデータはそっちの角度で考えつつデータ収集を試みようと思います。

 

 それでは、鹿島、川崎、両サポの皆さん。明日はスリリングな一戦を存分に味わってください。

 では、また!!

 

 

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