【ジェフ千葉】ロアッソ熊本戦プレビュー ~3バック&2トップの時と4バック&1トップの時、それぞれデータで比較しました~
2017明治安田生命J2リーグ 第23節
ロアッソ熊本 - ジェフユナイテッド千葉
19:00 K.O / えがお健康スタジアム
【公式】プレビュー:ロアッソ熊本vsジェフユナイテッド千葉 明治安田生命J2リーグ 第23節 2017/7/16
14年以来の3連勝を喜ぶべきか、ホーム・フクアリ無敗継続に安堵すべきか、はたまた3失点を喫した不安定な守備を嘆くべきか、先制しながらも結果的に「バカ試合」を演じてしまった事を猛省すべきか...
エンタメ性の高いゲームだったのは言うまでもありません。3連勝できたこと、後半戦を勝ってスタート出来たこと等、喜ぶべき結果なのでしょうが、どちらに転んでもおかしくなかったゲームだったなと。
先制した後、試合の主導権をガッチリ握って2点、3点と加点していく、前節大分戦のような展開が理想的でしょうし、それができたなら後半戦に向けての安定感、攻撃的サッカーの成熟が見えたのでしょうが、私個人的には守備の不安定さ、ゲーム巧者とは程遠い未熟な面を露呈した試合だったという評価です。
主将・近藤の不在も影響したのかもしれませんが、讃岐が徹底した人数を掛けて守り、奪ってから素早くカウンターに転じるサッカーに対する相性の悪さからくる拙さや脆さばかり目につきました。
12日水曜日の天皇杯3回戦は惜しくもガンバ大阪に敗れて敗退。
ミッドウィークの試合を挟んで中3日で迎えるのは、アウェイのロアッソ熊本戦です。
讃岐に続き、残留争いの位値に付ける熊本。前節は土壇場で追いついて水戸とドロー。前々節はヴェルディに4-0で勝利し、長い連敗を止めています。
清川監督が途中退任し、池谷監督へと指揮官が代わり、選手もフォーメーションも4バックから直近は3バックの3-4-2-1に変更した模様。
J2であっても複数のシステムを使い分ける事は珍しくありませんし、おらがジェフユナイテッド千葉も3バックの3-1-4-2と4バックの4-3-3(4-1-2-3)を使い分けています。
本エントリでは、ジェフの3バック/4バックの両システム別に様々データを集計してみましたので、そちらをお届けしてみます。
データはご覧の提供でお送りします。
まず、ここまでの22試合の戦績をフォーメーション別に集計してみました。
【表1】ジェフ千葉 フォーメーション別 戦績・得失点 比較
ジェフはここまで3バックで12試合、4バックで10試合戦ってきました。定義はスターティング・フォーメーションでカウントしていて、試合途中のシステム変更は今回は考慮していません(実は影響あるかもしれませんが)。
3バック時は2トップ、4バック時は1トップ(3トップとも言える)と、中盤の構成(アンカー+2インサイドハーフ)は不変でいて、後方と前線の形もそれぞれほぼ決まっています。
3バック&1トップ2シャドーは見られず、片や4バック&2トップも基本的にはやらないのがエスナイデルジェフの特徴。
この2つのフォーメーションを比較してみても、さほど顕著に特徴が出ている訳でもなさそうな…
そこで、ジェフの2つのフォーメーションに対し、これまで対戦した相手のスターティング・フォーメーションを組み合わせての戦績を表2にブレイクしてみました。
【表2】ジェフ千葉 フォーメーション&対戦相手フォーメーション別 戦績 比較
最も多かったのが、3バック&1トップの相手で実に15チーム。フォーメーション表記で言うと、3-4-2-1がJ2で良く見られるシステムかなと思います。
攻守における可変の有無やポゼッション志向、カウンター志向等、各チーム微妙にスタイルは異なりますが、3枚のCBと左右のWB。2枚のボランチに2枚のシャドーアタッカー、前線にFWが1人という並び。
ジェフの3バック時、4バック時それぞれで複数試合ありましたが、戦績はいずれも良くもなく悪くもなく。
4バックの相手とは7試合ありましたが、そのうちジェフが4-3-3で戦った場合の戦績があまり芳しくなく、特に失点数がアベレージで2.3点というのは、なかなか悪い数字。。
4バック&2トップの相手は、概ね4−4−2フォーメーションになりますが、噛み合わせ的にあまりギャップが生まれない組み合わせになりますね。相手2トップを2CBで見る。相手のボランチは2枚のインサイドハーフで見る。サイドはそれぞれ相手SBをWGが、相手SHをSBが見る形で数的同数。相手CB2枚を千葉はワントップが付く形。
実は今節対戦するロアッソ熊本との前回対戦が、この4−3−3対4−4−2の噛み合わせでした(試合はドロー)。
相手側から見たら、ボールを保持して繋ぐ千葉に対し、2トップがCBからのビルドアップを規制。SBに入ったところでスライドして千葉のアンカーへのコースを切りつつ、ボールサイドは数的同数の圧縮で奪いにいくのがセオリーになるのかなと。
このSBに持たされて詰まる、または蹴らされる形に追い込まれるとリズムを崩しやすいのが、今季のジェフ。3バック&WBであってもWBまで渡ったところで詰まる事が多かった。
開幕から程なくしてアンカー経由のビルドアップを規制されてから、インサイドハーフをSBの位置に落としてSBを高い位置に上げ、WGが中に絞ってハーフスペースに浮くパターンを良く目にしますが、この可変の形で相手のプレス打開もジェフの攻撃の特徴のひとつです。
3−1−4−2の場合もほぼ同様で、WGが居ない代わりに2トップの片方がやはりハーフスペースに浮いて縦パスを引き出す形を見せています(過去エントリ参照)。
football-data-visualization.hatenablog.com
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そうした可変のパターンがありつつも、基本的には陣形の型はある程度スタティックにして、2つのシステムを使い分けてる感じがします。ただ、相手に合わせてフォーメーションを変えている様な感じもしていなくて、自分たちの都合、つまり監督の人選で変えていそうな気がしています。
そのあたり、人とフォーメーションとの関係はどうなっているのかを確認したく、フォーメーションとポジション別に各選手の出場試合数をカウントしたのが表3。
【表3】ポジション/システム別 選手毎の出場試合数
GKがCB(スイーパー)を兼務していると言われますが、ここではCBとしてカウントしていません(笑)
各フォーメーションにおけるポジション別に選手毎の出場試合数をカウント。
フィールドプレイヤーでは、近藤、壱晟、清武、船山が20試合以上に出場。
インサイドハーフ専任の壱晟は別として、上記3選手は3バック、4バックいずれの場合でも起用されています。
近藤は3バックでは中央、4バックではCBの一角として。
清武、船山は2トップの場合はFWの一角に、4バック&1トップの場合は、左右WGとして起用。
インサイドハーフ専任の也真人を加えたこの5選手が、いずれのシステムにおいても軸となる選手であり、フォーメーション表記で位置する「列」が決まっている選手。つまり、近藤は常に最終ラインですし、清武と船山も常に前線。壱晟&也真人も同様にインサイドハーフ固定ですね。
次点で試合数の多い選手には、ポリバレントな選手が名を連ねます。
典型がCBとSBで起用されるキム・ボムヨンでしょう。第3節松本戦から登場したボムヨン。シーズン開幕後に加入ながら、CBとして10試合、SBとして6試合に出場。
直近2試合はCBの一角として起用されていますが、主には3バック時の左のCBか4バック時の左SB。ただ、フォーメーションの表記における列は動かない選手でもあります。未だ3バック時の左WBは、第3節松本戦で後半からの途中出場でプレーしたのみなんですね。個人的にはここが彼の最適ポジションに思えるのですが...
左SB、または左WBは直近の活躍が目覚ましい3年目の乾が定着しつつあり、ポリバレントなボムヨンはCBでの出場が多くなりそうな気配はしていますが、果たして...
列が動くポリバレントな選手としては、左利きのサリーナスと山本真希がいます。
サリーナスは当初は左のWBとして開幕から出場を続けていました。試合中のシステム変更などで、インサイドハーフに位置を変える事もあったりなどしていましたが、途中起用される事が多くなった頃からインサイドハーフでの起用がメインになりました。
暫く出場機会を失っていたものの、直近2試合途中出場した際は右WGに入るパターンに落ち着いています。所謂、「逆足のWG」になる訳ですが、左利きのサリーナスが右サイド奥でボールを持つとゴールに対して身体を開いてボールを保持する形になるため、視界を広く確保でき味方と相手ゴールとを同一視できるシーンが多くなります。
そうなるとインサイドにボールを持ち出す形が多くなるので、サリーナスの後ろをSBがオーバーラップしたり、そのまま左足でインスイングのクロスを入れる、またはカットインしてシュートを放つなど相手に的を絞らせない攻撃の型が生まれるのではないかと思います。
試合後半から終盤でのアクセントを付ける狙いでの起用が多くなりそうですが、得点が欲しい時こそサリーナスの力がこの先必要になってくるのではないかと思っています。
真希は11節のアウェイ讃岐戦から右WBとして起用され、4バックの右SBとしても6試合に出場しています。
それまではインサイドハーフとして4試合に出場しているように元来は中盤の攻撃的ポジションの選手。特徴でもある正確なキックで、右WB・右SBから“攻撃を作る”役割を担っていました。
先ほど今季のジェフはSBで詰まってしまうと申し上げましたが、その打開策のひとつがこの真希のWB/SBへのコンバートだと思っていて、それまで同ポジションで起用され続けていた北爪が主に上下動の活動量を特徴とする、いわば「使われる」選手であることから、攻撃のスイッチ役としては最適とは言えない選手でした。
直近は怪我の噂もあってかベンチ外が続いている真希ですが、彼が右サイド奥から正確なキックで縦にパスを付けられた事で、いくつかゴールに繋がる展開が見られたりもしていました。
20節の岐阜戦から北爪が再び起用されはじめて、連勝が始まってもいるので暫くはこのまま北爪が使われ続けるのかなとも思いますが、再び真希がこの位置に入るのか、あるいは天皇杯で良い動きを見せていた溝渕がリーグ戦デビューを飾るかも気になるところです。
ポジションと人選の話題で触れて置かなければならないのが、「アンカーは誰が適任か?」という問題(過去、アランダとアンドリューのパフォーマンス比較をしました)。
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今のところ、アランダ、アンドリュー、そして勇人の三人がこのポジションをローテーションしています。
選手、監督のインタビューなどから情報を拾うと、このアンカーから攻撃の舵取りをさせたい狙いがエスナイデル監督にはあるようで、アンカーから左右のサイドへ大きなパスによる展開が見られるのも今季のジェフの特徴だったりします。
ハイプレスにおいても、前線の選手がコース限定と追い込みをし、インサイドハーフがアプローチし、アンカーで奪い切る、または潰すというようなボール奪取のセオリーになっているように見えるので、アンカーの選手には攻撃のタクトを振る技術や判断力、展開を読む力に加えて、球際でも闘えてボールを狩り取る役割も求められるなど、今季のスタイル、そしてシステムにおいて最も重要なポジションになっています。
加えてハイラインを敷く攻撃的スタイルでは、アンカーの位置でボールを失うと即致命的なピンチを招いてしまうため、ミスが出来ないポジションでもあります。
そういった要素を踏まえると、やはり最も「重いポジション」なのがアンカーではないかなと。
アランダと勇人は主にドイスボランチの一角、アンドリューは攻撃的中盤が本来のポジションかなと思われるので、アンカーを専任でやってきた選手は今のジェフには居ない訳です。
アランダは直近は一列前のインサイドハーフでの起用が多く、アンドリューも途中出場ではこのポジションを担っていたりもします。勇人のアンカーも個人的には13節長崎戦におけるアランダとの同時起用でこそ機能補完されうる「ユニット」として最大パフォーマンスを得られると思っていまして、なかなか最適解が見当たらないのかなぁと思っています。
夏の補強でアンカー専任を獲得しないのかなぁ等と思ったりもしましたが、恐らくこの3選手でこの先もローテーションされていくのではないのかなと思います。
【図1】フォーメーション別 攻撃/守備 パフォーマンス指標の比較
分析らしい事もやっておこうかなと思いまして、図1のようにフォーメーション別にスタッツを表してみました。
3バックと4バックとで攻撃回数/被攻撃回数、シュート到達率/被シュート到達率の平均値を算出。
何故そうなるかはちょっと推測の域を出ませんが、傾向としては3バック時の方が攻撃も被攻撃も頻度が多くなりやすく、4バック時の方が攻撃/被攻撃の頻度がやや少なくなる。
ただし、攻撃→シュートまでの効率で言うと、4バック時の方が攻撃回数が少ないにも関わらずシュートまでは比較的効率よく持ち込めていそうだという結果に。
一方で被シュート到達率はいずれのフォーメーションでもほぼ同水準に落ち着いているので、これはフォーメーションによる違いではあまり変化は無い、ということなのかもしれません。
【図2】フォーメーション別 得点パターン
【図3】フォーメーション別 失点パターン
得点、失点のパターンも2つのフォーメーション別に集計してみました。
時間が許せば、後々深く掘り下げてみたいところですが、3-1-4-2の場合はクロスからの得点が4得点(4−3−3では2得点)、4−3−3の場合はクロスとドリブルから3失点ずつ(3−1−4−2ではクロスから2失点、ドリブルからはゼロ)、それぞれ得失点でやや傾向が見られたところかなと。
これはどちらかというと、対戦相手との兼ね合いが関係してそうな気もしています(対戦相手のフォメで形を選択していないから...)。
【図4】予想スターティング・フォーメーション
フォーメーションの話をしてきたので、そこのところを踏まえてのスタメン予想です。
システムは4-3-3(4-1-2-3)ではないかと。
(一応、表2の結果から見ると、最も平均得点&失点、勝ち点が良いので)
岡野、大久保とCB2枚を同時に出場停止で欠く今節、CBには現在控えに回っている選手が起用されるものと思われます。
多々良、若狭、ジュヨン、または連戦続きのボムヨンを中央で起用するのか。
酷使気味の近藤が出るのかも微妙なのですが讃岐戦での守備陣のデキを見るに、ドゥには出張ってもらわなければならないとイカンのでは無いかなぁと。
相方にはここ何節かベンチ入りしていた若狭を予想。
ボムヨンは恐らく休ませ、乾を左SB。もしかしたら控えに比嘉さんが入るやも...(右も出来るし、ベンチ要員としては使い勝手がいいと思ってます)
右SBは北爪と予想しましたが、天皇杯で公式戦デビューした溝渕がリーグでも見られるかどうかにも注目。
中盤から前はやや連戦続きで疲労もあろうかと思うのですが、也真人と清武、ラリベイあたりは代えがきかない人材かなぁと。
壱晟は天皇杯で良い動きを見せていたので、恐らくスタメン。也真人を休ませるかどうかですが、ターンオーバーならアランダが出るやもしれません。
天皇杯での決定機逸が目立っていた指宿も本調子まではあと少しといった様子でしたので、ワントップは引き続きラリベイかなと。
船山、清武のどちらか、あるいはその両方を休ませる可能性もありそうですが、そうなると代役は菅嶋、古川、サリーナスになろうかと思うのですが、この3選手の誰かを果たしてエスナイデル監督はスタメンに抜擢するかどうか...
8月にも中旬にミッドウィークの連戦が挟まるので、7月の中旬~後半に無理使いをして疲労を蓄積してしまうと、その8月のもっとも暑くキツい季節に主力選手が一斉に故障発生という最悪のシナリオにもなり兼ねませんので、どこかでターンオーバーはしてくるのではないかなと思っています(為田くんが出られる頃には...)。
熊本は直近のリーグ戦で起用されている選手の面々を見ると、前回対戦時の陣容から結構様変わりしていそうです。
好調なグスタボ、安をワントップに置いて、シャドーで機敏な動きを見せる中山を軸に攻撃陣を攻勢してくるのかなと。
最終ラインもGK含め、人も並びも変えてきているので、前回の対戦とはまた違った戦術で臨んでくるやもしれません。
現在ジェフは3連勝中。波に乗りきっているとは言い難いですが、攻撃陣が機能しているのは間違いないでしょう。天皇杯のガンバ相手の試合でも、シュートまでのプロセスはJ1上位相手にも十分通用するクオリティでしたので、最後の決定力と守備の安定感さえ伴えば複数得点と苦手のアウェイでの勝利も見えてくるのではないのかなと。
下位相手に勝ち点を取りこぼし、上位浮上と昇格を逃し続けてきたこの7シーズン。夏場の失速すらもはやジェフの“名物”とまで語られていますが、今季はこれまでのジェフとは一味ちがうのだという雰囲気が漂っている気がします。
その雰囲気が単なる予感で終わらず、確かなものになるかどうか、この夏の戦いの行方が教えてくれるでしょう。
昨季は「パワーの出る布陣」で臨んで失速してしまったので、3バックか4バックかは関係なく「夏バテしない布陣」で夏場の試合を戦い抜いて欲しいと思います(フリにならなければいいが...)。
今のジェフが良い方向に進んでいる事を願って、サポートを続けていきましょう。
では、また!