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【Jリーグ】2017年のJ1リーグをデータでまとめてみました ~チームスタッツ編~

2017 明治安田生命 J1リーグ 優勝 川崎フロンターレ 


【公式】川崎フロンターレ初優勝の瞬間!!2017明治安田生命 J1リーグ

 

 最終節、逆転でのリーグ初優勝を果たした川崎フロンターレ歓喜で幕を閉じた2017シーズンのJ1リーグ。

 まだ天皇杯が残っていますが、ひとまず今シーズンの戦いは終わりました。

 

 昨年と同様、この時期に今シーズンのデータのまとめをやっておこうと思います。

 前半戦振り返り、そして昨季のまとめエントリをトレースした格好にはなりますが、お付き合いください。

 

football-data-visualization.hatenablog.com

 

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 データはご覧の提供でお送りします。

www.football-lab.jp

 

 

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【図1】パス成功率 × ボール支配率 の散布図

 

 まず通例のパス成功率→ボール支配率の散布図。

 ボールを正確に繋げて動かせるチームは、相手よりボールを保持できるよねっていう自明の結果。

 J1は特に右上に布置するチームが上位にいる傾向が強いリーグ。

 例外として、広島の低迷、ボール支配率で5割を下回るセレッソや磐田が上位に食い込むなど、これまでの構図から外れたムーブメントも見受けられたり。

 パス成功率で75%、支配率で50%という閾値で切ると、鳥栖、札幌、清水、甲府、新潟がその閾値を下回る群、いわば「持たざるクラブ」という括りが浮かび上がってくるかと。

 この「持たざるクラブ」のうち、甲府と新潟はJ2降格。清水も最終節でギリギリ残留を決めているなど、特にパスの精度が伴わないと、J1では苦しい戦いを強いられる傾向にあります。 

 

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【図2】パス成功率 × シュート到達率の散布図

 

 パスを繋げる/ボールを動かせるかどうかと、シュートまで到達できているかを2軸で可視化したのが図2。

 ここでも川崎や鹿島が右上に布置していて、精度高くパスを繋ぎ、シュートに至るまでボールを効果的に運べていることが分かります。

 中位に沈んだ浦和や残留争いに巻き込まれた広島もここでは鹿島や川崎と同じ象限にいるのですが、低迷した要因は以降の別の可視化で明らかになるかと...

 図1における、新潟や甲府ら「持たざるクラブ」群に加えて、ここではJ2降格となった大宮と、戦力的には充実しているはずのFC東京が左下に布置。

 即ち、パス成功率は一定水準にありながら、効果的にシュートまでボールを運べていない事を表しているのかなと。

 特にFC東京の状況を見るに、大久保、ウタカら強力なFWを擁しながら、彼らにうまくラストパスを供給できなかったのではないかと推察できます。

 

f:id:knovocelic:20171208131845p:plain 【図3】攻撃回数 × ボール支配率の散布図

 

 図3で見ていきたいのは、ボール支配の多寡と攻撃頻度の関係性について。

 右上はボール支配が高く、かつ攻撃回数も多い、ボールを握りつつ積極的にゴールを狙ってボール前進を図る傾向が強いことを表し、右下はボールは支配すれど攻撃頻度は多くない、いわば果敢に攻撃するよりも、ボールを失うことを避けてポゼッションをする志向が強いことを表します。

 反対に左上はボール保持はビハインドながら攻撃頻度は多いカウンター志向の強さを表すかと。

 ここでは柏と鹿島がボールを保持しつつ積極的に攻撃を仕掛けていくチームと言えそうです。

 川崎や浦和はどちらかというとポゼッション傾向。広島は顕著にボールを保持して攻撃に移行する頻度が少ないチームであると言えるかと。

 新潟、甲府、清水はボール支配率45%以下ながら攻撃回数はリーグ平均以上。奪ったら即時速攻を仕掛けるカウンター型チームと言えるかと。

 ただ、そうしたスタイルで満足のいく結果を残したのはセレッソくらいかなぁというのが私個人の印象です。

 今季、セレッソはFWの杉本が20得点以上のゴール数を記録。やはり決定的な仕事ができる強力なFWがいなければ、J1においてはカウンター・スタイルでシーズンを戦い抜くのは厳しいと言わざるをえないのではないでしょうか。

 

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【図4】シュート到達率 × 攻撃1回あたりのパス本数の散布図

 パス、攻撃、そしてシュートまでのプロセスについて、もう少し噛み砕いてみたく、図4にシュート到達率と攻撃1回あたりのパス本数をプロットしました。

 右上の浦和、川崎、広島は攻撃に際して手数をかけてパスを繋ぎつつも、高いシュート到達率を記録。労力を掛けただけ、きっちりシュートまで繋げられている事が分かります。

 およそ1攻撃あたりパス本数4本がアベレージかと思いますが、鹿島やセレッソ、柏、ガンバなど上位から中位までのチームがここに集まっています。

 シュート到達率は10%~12%あたり。10回の攻撃のうち、1回はシュートまで繋げられている。その1回あたりの攻撃は、およそ4~5本のパスでボール前進を図っている、ということが分かるかと。

 図4中央より左下方面にいるのが、「持たざるクラブ」プラス大宮とFC東京

 特に後者の2チームは、パス数はおよそ4本とリーグ平均並に繋げていながらも、シュート到達率は10%未満。パス本数では2チームより少ないながら、11%以上のシュート到達率を記録する磐田と対比すると、いかに非効率かが分かるかと。

 大宮とFC東京については、シュートのひとつ手前のプロセス、ラストパスの局面で違いが生み出せなかったという事でしょうか。

 

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【図5】決定率 × シュート到達率の散布図

 

 これまでは、パス→ボール保持→攻撃→シュート、という各プロセスにフォーカスして2軸で見てきましたが、図5はシュート→ゴールという仕上げの部分についての可視化。

 これは、18チームそれぞれにバラけました。

 優勝を果たした川崎フロンターレはシュート到達率→決定率の効率においても文句なくトップ水準。精度高いパスワーク、効率的なアタッキング、ゴールを陥れるクオリティと攻撃のすべての過程で高いパフォーマンスを見せたと言えそうです。

 この可視化で右下に沈んでいるのがサンフレッチェ広島でして、広島が今季苦しんだ要因もここにあろうかと。

 シュートまでのプロセスでは、図4までで見てきた可視化の通り、浦和や川崎とほぼおなじ水準で来ていたかと思うのですが、肝心要の「決定率」が付いてこなかった...

 シーズン折り返しのレビューでも言及しましたが、ここがボトルネックとなってしまったことが今季不調に陥った最大の要因でしょう。

 J2降格となった新潟も同じく「決定率」に泣いたチーム。

 

 反対に決定率の高さで凌いだと言えそうなのがサガン鳥栖コンサドーレ札幌

 特に後者はシーズン途中にジェイの補強を敢行しましたが、それがデータ的にも奏功したと言える結果になったのかなと。

 ヴィッセルFC東京は、抱える陣容に対しては物足りない決定率にとどまった印象。

 個人的に特徴的に感じるのは、ジュビロ磐田です。

 図4までの可視化を振り返ると、パス成功率は平均的ながらボール支配率はむしろ下位。攻撃頻度も高くないものの、シュートに至る手数は少なく効率的で、決定率では鹿島の上を行く水準。

 最終節では鹿島の優勝を阻むなど、今季はとても興味深い戦いぶりだったと思います。

 

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【図6】被決定率 × 被シュート到達率の散布図 

 

 今度は反対に被決定率と被シュート到達率の散布図。

 前半戦のレビュー同様、浦和が上位に絡めなかった要因がコレでして、「被決定率」が高すぎたこと。打たれた枠内シュートに対して失点してしまう割合が、新潟よりも悪かったのです。

 反対にもっとも自ゴールが堅かったのが鹿島アントラーズ

 もしも、鹿島が優勝を果たしていたら、この堅い守備が優勝の要因とされていたでしょう。川崎が持ち前の攻撃力で初タイトルを得たのとは対照的でしたね...

 その川崎も実は守備においてとても機能していたと言えそうです。

 被シュート到達率は10%超えも、被決定率は鹿島並だった川崎。柏、磐田もまた被シュート到達率、被決定率が低く抑えられており、能力の高い正守護神と守備陣を合わせたクオリティが高かったのだなと思わされます。

 

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【図7】2017シーズンJ1チーム アタッキング効率の比較 

 

 攻撃→相手陣内侵入→シュート→枠内シュート→ゴールまでの各プロセスの歩留り≒効率について、各指標を一覧化してグラフにしたのが図7。

 ラベル表記したのは各指標の最大値、最小値です。

 優勝した川崎フロンターレは、攻撃頻度こそ高くないですが、シュート到達率、枠内シュート率、決定率が軒並み高かったです。決定率はリーグ1位。得点王に輝いた小林悠らの仕事が光った結果かと。

 相手陣内(30Mライン)侵入成功率、シュート到達率の1位は浦和レッズ、攻撃回数では柏レイソルがリーグ1位。

 リーグ上位に食い込んだチームは、攻撃効率の指標でも目立った数値を記録しています。

  降格となった3チームは、これら攻撃の効率指標で軒並み最小値を叩いてしまっています。

 最下位大宮は相手陣内侵入成功率でリーグ最下位。

 新潟は決定率が最下位。

 甲府はシュート到達率と枠内シュート率で最下位。

 攻撃のクオリティが一定水準伴わないと、やはりJ1に残留するのは難しいということなのでしょうか...

 

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【図8】2017シーズンJ1チーム 守備アクション効率の比較 

 

 図8は守備時のアクション効率についての可視化。

 降格チームは先程とは反対に最大値を出してしまっています。

 大宮は被シュート到達率が最大。

 新潟は被攻撃回数とタックル試行率が最大。それだけ押し込まれて崩されかけていたということかと。

 甲府はこれら守備時指標はすこぶる悪い訳ではなかったものの、やはり攻撃において貧打に泣いたということなのかなと思います。

 

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【図9】スプリント回数 × 走行距離 の散布図

 

 トラッキングデータについても一応の可視化を。

 こちらは、グロスの出力結果でしかないので、攻撃/守備、トランジションなどのどの局面でどれだけ走力を掛けていたのかが切り分けられない以上、多い少ないを言及しても意味が無いかなと思っています...

 

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【参考】2017シーズン J1チーム 主なスタッツの相関行列

 

 最後にスタッツ間の相関行列を載せておきます。

 分析、可視化はある程度恣意的に見ていきましたが、最初にこうした統計的な傾向を眺めつつ、先入観などなしにあの指標とこの指標が何か関係していそうだ...というアプローチで考察していくのもアリかもしれません。

 

 ざっと2017シーズンのJ1について、データで振り返ってみました。

 次回はJ2についても同様の流れで今季をレビューしてみたいと思います。

 

 では、また! 

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