【ジェフ千葉】東京ヴェルディ戦プレビュー ~ロティーナ・ヴェルディとエスナイデル・ジェフ、守備のパフォーマンスをデータで比較~
明治安田生命J2リーグ 第31節
ジェフユナイテッド千葉 - 東京ヴェルディ
2017/09/02(土) 18:00 K.O / フクダ電子アリーナ
【公式】プレビュー:ジェフユナイテッド千葉vs東京ヴェルディ 明治安田生命J2リーグ 第31節 2017/9/2
ラリベイ、清武、也真人が揃って出場停止となったFC岐阜戦は、良いところ無く完敗となりました。
7、8月の夏場の獲得勝ち点は16のまま。
昇格PO進出に向けた反攻の契機とはならず、3試合勝ちなし、ホーム戦連敗。
何よりもネガティヴな印象として突きつけられたのが、主力と控えメンバーとの力量差。戦力的にはJ2でも上位であるはずなのに、控えメンバーでは主力メンバーの穴を埋めるには至らないのだなということを改めて露呈してしまった格好に。
岐阜のパフォーマンスが良かった事は事実ですが、17位の相手に3失点した上に歯ごたえの無い戦いを見せられては、シーズンも終盤に差し掛かる時期にも関わらず上積みが薄く感じられてしまって、ちょっと不安になってきてしまいます。
夏が過ぎ、季節は9月に。
シーズン残り12節となり、順位は12位。PO圏内6位とは、勝ち点6差。
今節の相手は、その6位に位置する東京ヴェルディです。
次節、最下位の群馬戦以降残り10節は全て昇格のライバルとの直接対決。ジェフにとってはまだ自力で這い上がれる勝ち点差ながら、それらライバル達相手に連勝していかなければ埋まる差ではなくなってきています。
それ故に今節のヴェルディ戦は絶対に落とせない試合。
ということで、今回は久方ぶりに真面目なプレビューをお届けしようかなと。
千葉、ヴェルディそれぞれ「守備」のデータに着目して、パフォーマンスについて比較考察していければと。
データはご覧の提供でお送りします。
とりあげる守備のデータは、以下の通りです。
- 被攻撃回数
- 被30Mライン進入回数
- 被シュート数/被枠内シュート数
- タックル数/タックル成功率
- クリア数
上記各データを元に下記加工指標を作成してみました。
- 被30Mライン進入成功率
- 被シュート到達率
- 被枠内シュート到達率
- タックル試行率
- ボールゲイン率
- クリア試行率
過去エントリでその定義を解説している指標もあるかと思いますが、今回は「ボールゲイン率」についてだけご説明を加えておきます。
タックル数にタックル成功率を掛けた数値(タックル成功数)を被攻撃回数で割ることで、相手の攻撃に対してタックルを掛けて奪取に成功した割合として定義しました。
「ボールゲイン率」とは、いわば「タックルによるボール奪取率」を表します。
さて、今回どうして守備に着目したのか。
残りの戦いでは負けが許されません。何故かというと、勝ち点が積み上げられないからです。
最善なのは勝ち点を3ずつ積んでいく事。それが叶わないのであれば、最低でも1を。つまり、残り12節は毎週1ポイントでも前進し続けなければならない。
そのためには、失点を少なくする事が求められます。
しかし、攻撃的なサッカーを志向するジェフは、現在のスタイルを続ける限り劇的に守備が改善され、失点が減る設計ではない。
その中ででも何とか守備が改善する兆しは見いだせないものか...
そんななかで今節の相手東京ヴェルディに目を向けてみたいと思ったのです。今季、ヴェルディが躍進を果たしている大きな要因に、「守備の安定」が上げられるかと。
現在、ヴェルディは33失点(千葉は47失点)。
昨季は61失点ですから、シーズン2/3を消化した時点ではあるものの、劇的に減っていると評価できるかと思います。ひとえに今季から就任したロティーナ監督、コーチ陣の手腕、実践している選手の働きによるところが大きいでしょう。
(逆に千葉は今のペースで進捗すると60失点弱になってしまいます...)
【図1】守備パフォーマンスの時系列変化(ジェフ千葉)
【図2】守備パフォーマンスの時系列変化(東京ヴェルディ)
ジェフ、ヴェルディ、それぞれの守備アクション、そのパフォーマンスについて可視化しました。
左端の開幕時から右端の直近30節まで、棒線の被攻撃回数と折れ線で描いた各守備アクションの指標を重ねました。
各指標ともジェフとヴェルディとで純粋な差があるのはご覧の通りですが、両チームの特徴とその時系列変化に着目して、ジェフとヴェルディについて考察をしていきます。
まずは、図1のおらがジェフユナイテッド。
グレーのクリア試行率とタックル試行率の折れ線が開幕から直近までを通じて接近している、または時にタックル試行率がクリア試行率の線を上回っていると思います。
「ボールを支配したい」という志向が強いジェフですので、守備時のアクションとして、相手にボールを明け渡す事になるクリアをあまり選択することが少ない事に起因していると思います。
それ自体は目指すスタイル故の事象なので、問題は無いのかなと。
私が気になったのは、水戸戦から直近にかけて、タックルによるボール奪回のパフォーマンスを表すオレンジ線の「ボールゲイン率」が、やや下振れて推移していることです。
被攻撃回数も夏場にかけてややダウントレンドではあるのですが、青線のタックル試行率はフラットか、むしろ上昇トレンドになりつつあるものの、タックル成功率が上がっておらず、ひいてはボール奪取に繋がっていないということを示しているようだと、ちょっとマズいかなと思います。
タックルはスライディング・タックルを指すように、守備時アクションの中でもリスクを伴うもの。崩されかけてやむを得ず行うシチュエーションが多かろうと思うのですが、それがボール奪取に繋がっていないというのであれば、即ち相手の攻撃を終わらせられていないという事になります。
タックルではなく、リスク回避のためにクリアに切り替えているという事であれば、まだ良いのでしょうが、そういうわけでもなさそうな。
ジェフの守備アクションの基本形はハイプレスなので、スタンディング・プレーによるボール奪取がメインになるかと思います。ただ、そのパフォーマンスを示すデータはなく、タックルやクリア等のデータは、どちらかというと相手に押し込まれたシチュエーションでのパフォーマンスを示すもの。
ボール支配で上回る事が多いジェフの事ですから、クリアやタックルが発動される場面といえば、多くは被カウンターの場面だろうなと。その時の守備が外されているようでは、この先も失点は無くならないではないかと思わされます。
ここのパフォーマンス向上は、ラスト10で追い上げるためにも急務と思います。
一方のヴェルディ。
守備アクションのプライオリティは、クリア>タックルと言えそうです。グレーの線と青線がジェフほど接近してはいないので、そう評価してもよいだろうと。
オレンジ線のボールゲイン率も青のタックル試行率のトレンドとほぼリニアに推移しているかと思います。
複数失点が続いた19節愛媛戦から讃岐戦あたりまで、タックル試行率、ボールゲイン率が下降トレンドにありましたが、以降直近までは再び上昇トレンドに入っている。
現在4連勝中で、そのうちわずか1失点という安定した守備を物語るデータであるとも言えそうです。
クリアすべき時はクリアをし、奪い切る守備に行く時には奪いきれている。それができなくなると失点も増えているという事がデータからも窺えるなと。
守備のアクションにパフォーマンスが伴っているからこそ、失点を抑える事に繋がっているのだなということが分かります。
【図3】被攻撃時データの歩留り構造(ジェフ千葉)
【図4】被攻撃時データの歩留り構造(東京ヴェルディ)
図1、2は守備時のアクションとパフォーマンスについて。
図3、4は相手の攻撃、つまり自チームにとっての被攻撃が、アクションとパフォーマンスの結果としてどのように推移しているかを見たもの。
まず千葉ですが、青線の被30Mライン進入成功率、オレンジ線の被シュート到達率は、シーズン序盤から直近まで低く抑えられているなと。
被30Mライン進入は自陣深くに進入を許したかどうかを表し、シュート到達率は文字通りシュートまで持ち込まれたかどうかを表します。
この数値が低く推移しているのは、おそらく千葉のハイプレス&ハイラインが奏功しているから。ボール支配率の高まりと相まって相手陣内に押し込んでいる時間が長い事からこのような数値になっているのだろうなと。
ただ、グレーの被枠内シュート到達率はというと、かなり上振れているうえに安定して推移していない。枠内に撃たれている試合はとことん打ち込まれているといった様子が伺えます(奇しくも前回対戦のヴェルディ戦とか...)。
ジェフと同じ見方でヴェルディの方を見てみると、被30Mライン進入成功率、シュート到達率ともに10%~30%のあたりで推移しています。
ジェフのボトルネックであった被枠内シュート到達率はというと、試合毎に変動があるのはジェフと同じながら、分布しているのは20%台後半から30%台半ば、悪くても40%台後半といったところ。
概ね30%台、悪いと50%を有に超えることもあるジェフと比べると低く抑えられている事が分かるかと。
自陣に進入を許す事は、ジェフのような極端な前進守備と圧縮陣形の戦術を執っていないので致し方ないものの、失点に繋がる被枠内シュートは抑えようという守り方がなされているのではないか。
ブロック数などのアクションはデータで確認できないため、推察にはなりますが失点に繋がりそうな場面では体を張る、プレーを切る。そのための準備、ポジショニングがジェフよりもヴェルディの方がうまく機能しているのかもしれない。
ジェフは構造上被カウンター場面が多くなるため、守り方が難しくなるのも分かりますが、シーズン終盤を睨む時期に差し掛かってきているので、枠内にシュートを撃たれないように相手のプレー精度を削ぐような守り方を、被カウンターのような場面でも実践していくことが求められようかと思いますね(難しいとは思いますがね)。
【図5】予想スターティング・フォーメーション
ヴェルディも勝てない時期を経てフォーメーションや人の組み合わせ、補強なども経て現在の4-3-3に落ち着いて、連勝できてきているという印象があります。
高木兄弟ではなく、前線にはサイドアタッカーだった左利きの安西を右に配置するなど、前回対戦から形を変えてきています。
ジェフは出停だった3人が戻ってきますが、入れ違いでアンドリューが2試合いません。アンカーには勇人が入りそうですが、アランダの可能性もあるかと。
右SBにはお疲れ気味だった溝渕ではなく山本真希をもってくるのではないかなと。
ボールの起点として計算できる真希の存在は、攻撃面でのメリットが大きくなろうかと思います。
味スタでの対戦では、前半ほぼ一方的に押し込みながら得点が奪えず、ハーフタイムの修正によって息を吹き替えしたヴェルディに後半3得点を見舞われました。
今節も前回対戦時と同様、アグレッシヴに試合に入り得点を奪い切ることができるかどうか。
天皇杯での対戦では、リードして迎えた後半に中ライン気味に構えてカウンター狙いの戦術変更が効いていたようにも感じたので、あの時のイメージで序盤から主導権を握れれば、勝機も見えてきそうな気がします。
夏場にほぼ出ずっぱりだった3人が1節分休めた事で、後半残り10節あまりをフルに稼働できれば巻き返しの可能性も十分あると思います。
一方で、前節為す術無く敗れてしまった事実を経て、控えに回るであろう選手たちには奮起を期待したい。
指宿や為田、またはサリーナスやイッセーといった選手の力が必ずや必要になってくると思います。
各チーム疲労も蓄積してきてパフォーマンスにも響いてくるリーグ終盤戦。
文字通り総力戦でなければ、長丁場のJ2リーグは乗り切ることが難しい。
選手層の厚みは、シーズンを通じての個々の成長によってもたらされると思います。それを実践できている湘南のようなチームは、やはり昇格に値する戦いを実践できているのだなと思います。
ジェフも残りの12節で成長曲線を描ければ、最終盤の昇格争いに割って入れるものと信じています。
いま一度、立ち上がれ千葉!我らとともに!!
共に上へと登れると信じて。。
では、また!