【ジェフ千葉】 長谷部ジェフ、(まだ5試合だけど)データで徹底解剖 vol.1 ~Revolutionは残り12試合で起こす!?~
明治安田生命J2リーグ 第30節
ジェフユナイテッド市原・千葉 2 - 0 ファジアーノ岡山
◆ハイライト(スカパー!)
【ハイライト】ジェフユナイテッド千葉×ファジアーノ岡山「2016 J2リーグ 第30節」
今季イチのデキで3位の岡山を完封、完勝。そして、長谷部監督代行ホーム初勝利でポイント3ゲット。勝ち点もようやく40点台に載せました。
とはいえ、ジェフは現在9位で昇格PO圏の6位京都までは11ポイント差。今季残りは12節。リーグ戦も残り3分の1を切って、夏の終わりから秋にかけて終盤戦に突入します。
翻って、関塚監督を解任し、「代行」という形で長谷部コーチが監督に就任。第26節アウェイのニッパツ横浜FC戦から指揮を執り、先日の岡山戦までの戦績は2勝1分2敗。結果だけ見れば正直厳しいですが、ピッチで披露されている内容は前任者の末期に比べればかなり改善したという声も聞こえてきたり。
システムを4-4-2に戻し、ターンオーバーを挟んで何人か選手を入れ替えたり、守備のセオリーを仕込んでいたりと着々とチームの修繕、進化を図っている様子。
そこで、本エントリではわずか5試合ではありますが、長谷部ジェフの戦いをデータで可視化、前任の関塚ジェフとの比較から、残り12節での昇格PO進出は叶うのか?そこのところを考察してみたく存じます。
データは引き続きご覧の提供でお送りします↓
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※データは第30節終了時点
分析・可視化の前提として、長谷部ジェフは直近5試合しかデータがありません。そのため前任・関塚ジェフとの比較も解任される直前のホーム清水戦から遡っての同じ5試合で比較したく思います。たった5試合で何か変わるものなのか?やってみなければ分からん...ということで、やってみました。
まず、今回の分析範囲の各5試合における、関塚、長谷部両監督指揮のもとでのジェフの戦績、勝ち点を以下に。
◆関塚ジェフ :1勝1分け3敗 / 勝ち点4 / 8得点 10失点 / 第21節~第25節
◆長谷部ジェフ:2勝1分け2敗 / 勝ち点7 / 5得点 5失点 / 第26節~第30節
比較対象となる各5試合、ホーム2試合・アウェイ3試合は同じ。当然ながら対戦相手は異なります(ちょうど第21節がシーズン折り返しで日程の都合上愛媛戦が2試合あります)。
戦績だけ見れば、長谷部さんの方がポイントを積んでいるので、上向いているのか?!と言いたくなりますが、ディテールの部分を以下の分析からあぶりだしたいと思います。
まずは、関塚監督解任の大きな要因であった守備について。関さんはここの改善がままならず、失点数を増やし勝ち星を積むことができなかったわけですが。。長谷部さん指揮の5試合で喫した失点は5。いずれも敗戦した2試合でのもの。その2試合含め、5試合でのパフォーマンスは前任者のラスト5と比べてどうなのか。
分析・可視化は第21節から第30節まで、ジェフのバイオリズムを時系列で追えるようにしました。そこに守備のパフォーマンスについての指標を重ねていきます。
一応、データの対象となる10試合の戦績を羅列します。
<第21節~第30節 ジェフ千葉 戦績一覧>
- 第21節 / 愛媛 2 - 1 千葉 / ニンスタ(A)
- 第22節 / 千葉 0 - 1 水戸 / フクアリ(H)
- 第23節 / 町田 2 - 3 千葉 / 町田市陸(A)
- 第24節 / 山形 1 - 1 千葉 / NDスタ(A)
- 第25節 / 千葉 3 - 4 清水 / フクアリ(H)
- 第26節 / 横浜FC 2 - 1 千葉 / ニッパツ(A)
- 第27節 / 千葉 0 - 0 愛媛 / フクアリ(H)
- 第28節 / 北九州 0 - 2 千葉 / 本城陸(A)
- 第29節 / 熊本 3 - 0 千葉 / うまスタ(A)
- 第30節 / 千葉 2 - 0 岡山 / フクアリ(H)
【図1 ジェフ千葉 直近10試合の被攻撃回数・被シュート率・被枠内シュート率】
まずは、守備に関するデータには、失点数、被シュート数・被枠内シュート数、被攻撃回数とあります。これはいわゆる相手のアタッキング試行数なわけで、これに対してジェフ側の守備時のアクション試行数があり、それがタックル、クリア、インターセプトになります。ひとまず、守備の分析・可視化の項ではこれらスタッツを用いていきます。
図1では、被攻撃回数はそのままに、「被シュート到達率」、「被枠内シュート到達率」という指標を作成してグラフ化しました。それぞれ以下式にて算出してます。
- 被シュート到達率 = 被シュート数 ÷ 被攻撃回数 × 100
- 被枠内シュート到達率 = 被枠内シュート数 ÷ 被攻撃回数 × 100
いわば受けた攻撃(被攻撃回数)のうち、シュートを打たれるまで行かれてしまった、枠内にシュートを飛ばされた割合になります。被攻撃回数の多寡と併せて、シュートをどれだけ打たれたのか、割合で比較してみようと。
左から21節→30節と並んでいて、清水戦までが関さん、その次の横浜FC戦から長谷部さん指揮になります。
これを見ると、「被シュート到達率」は右肩上がりの傾向に。長谷部さんにバトンタッチしてからも、シュートまで打たれる割合は増え続けているわけです。しかし翻ってそれらが枠内に飛ばされているか、「被枠内シュート到達率」で見ると横ばいもしくは、下がっているように見えます(熊本戦はすこぶる悪かったようで…^^;)。
打たせるけど(あるいは打たれるけど)、枠には飛ばさせない。当然、相手の精度というファクターもあるでしょうが、やはりジェフ選手たちのアクションに変化があったのだろう…とうことで次の可視化。
【図2ジェフ千葉 直近10試合のタックル・クリア・インターセプト 各試行数 】
図2は実数だけのグラフ(率と複合の場合は背景黒にしてます)。これを見ると、長谷部ジェフのある変化が分かります。
それは、「クリア数」の増加と「タックル数」の減少。
図1と同じく試行率(どれだけ被攻撃受けて、そのうちどのくらいトライしたのかの割合)で見たのが次の図3。
【図3ジェフ千葉 直近10試合のタックル・クリア・インターセプト 各試行率 】
試行率になおした図3でも同様の傾向が見て取れます。さて、これはどういうことなのか。
まず、「タックル」についてですが、これは正確にはスライディングタックルを指していまして、ボールを奪うアクションにあたります。つまり相手ボールホルダーに対して積極的にアクションをかけて奪おうというもの。
一見、タックルが多いほうが積極的にボール奪取を狙っているわけだから、守備のパフォーマンスとしてはいいんじゃないのか?と思われるかもしれませんが、当然ながらそれらタックルはすべて成功するわけもなく。タックル成功数(成功率)がいかほどか、ここのデータは得られないため成否は分からないんですね。
また、タックルを発動するシチュエーションについてもエクスキューズがあります。積極的に奪いにいってのタックルならまだしも、守備を崩されて最後の手段として止む無く仕掛けたタックルという場合も考えられるわけでして。
図2,3のタックル試行数・試行率トップ2の町田戦、清水戦は2失点、4失点しており、タックルを多く仕掛けたがあまり成功しなかった、または守備を崩された上での最後の手段でのものが多いように推察されます(推察です、あくまで)。
長谷部さんからこのタックルが控えめに転じているということは、前述のエクスキューズに倣って考察すると、関塚ジェフから以下2点の変化があるのかと。
- 無闇にタックルでボール奪取を狙わなくなった
- 守備組織が大きく崩されるシチュエーションが減った
この上記2点はベクトルが異なるようですが、実は連続しているのかなと思っていて、
無闇にタックルを仕掛けない → かわされて守備が崩れることが減った
→ よって、最後の手段で仕掛けるタックルも減った
というロジックなのかなと。
映像、または現地で観ていても、長谷部ジェフになってからある程度リトリートして待ち構えてから、ゾーンに侵入した相手、すなわちボールホルダーを捕まえにいく守備に変化しているのかなというのは感じていました。
特に快勝した岡山戦、ドローに終わるも後半は攻守機能していた印象の愛媛戦など、3CB+WBというシステム3-4-2-1を採用するチームとの構造的ミスマッチも、約束事が徹底されてか守備で破綻するシーンはほぼ見られずでした。
一方で増加している「クリア数」に関して、これも推察にはなりますが、長谷部さんに変わってから危機回避をまず優先しているのかなと。これは映像や現地観戦の記憶からもう一度掘り起こしたいところなのですが、ボールを奪ってから味方に繋ぐよりもまず、ボールを蹴りだしてリセットしてしまうことで、再び奪い返されて二次攻撃を受けないようにしているのかなと。
これはボールゲインしたゾーンについてのデータが無いので分析しようがないのですが、パス数、ポゼッション率でリーグ上位のジェフのこと、関塚時代は奪ったら、それがどのゾーン、シチュエーションでもポゼッションを確保することが優先されていたのかもしれません。
それが序盤は機能していたけど、対戦相手のスカウティングもありジェフがボールゲインしてポゼッションに移行する前に奪い返される、二次攻撃を受けて失点。。のような場面が増えたのかと。
第23節町田戦から5バックを採用するなど、止まらない失点を手当てすべくシステム変更などを試みるも、関さん最後の清水戦のハイライトを見ても効果の程は、推して知るべしといったところでした(悲しいけれど)。
一方、クリアが増えている長谷部ジェフ。クリアによって味方にボールを繋がず相手に渡してしまうことになりますが、ボールを危険なゾーンからクリアすることによって守備の陣形を整え、ラインを押し上げて相手に押し込まれてしまったゾーンを回復する時間が得られます。待ち構えてから人を捕まえに行く守備の約束事もあるとしたら、「危なくなったらまずはクリア → 陣形を整えてもう一度守る」というように、守備のリズムを好転させる流れを作りやすい。
守から攻、攻から守というトランジションに即したロジックをチームに浸透させつつあるのか?長谷部さんの中ではそうした手当てするべきタスクが整理されているのかもしれません(そうであってほしい!)。
タックル数とクリア数。このふたつの指標で関塚、長谷部両監督が指揮するジェフのコントラストが浮かび上がってきましたが、次エントリ以降は攻撃の面での変化も追っていこうと思います。
では、また!!