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なでしこジャパンは本当に世代交代が遅れていたのか?~選手の平均年齢とキャップ数の推移~

  なでしこジャパン リオ・デ・ジャネイロ五輪本大会出場を逃す

 ちょっと間が空いてしまいましたが、データが揃ったので更新します(^ ^

 

本エントリのテーマは、「なでしこジャパン」について。

ご存知の通り、なでしこジャパンがまさかのリオ五輪最終予選敗退となり、サッカー競技は男女アベック出場とはなりませんでした。

 2011年ドイツW杯優勝、2012年ロンドン五輪準優勝という世界の競合国へと躍り出たサッカー日本女子代表、「なでしこジャパン」。

今回の敗退の要因と言われている世代交代の遅れについて、ちょっとデータを集めてみたので集計・可視化をしてみました。

個人的な見解としては、世代交代の遅れ、すなわちチームの高齢化がなでしこ弱体化のひとつの要因であるという意見については、仮説のひとつとしてはそうだろうとしか言えないかと。

サッカーは相手があるスポーツですから、他国、とりわけ今回はオーストラリアや韓国といった最終予選を戦う国々が日本以上に成長したという仮説も当然あるはずです。

しかも総当りとはいえ、それぞれ一発勝負であること、チームのコンディショニングの差、スカウティング、戦術、采配など勝敗を分けたディテールを上げればキリがない…

とはいえ、「チームの強化」という視点に立てば、やはり中長期的な取組みであるはずで、選手の入れ替り≒新陳代謝と表現するサッカーの進化が伴わなければならないのも事実。

そういった私なりのエクスキューズを事前に並べつつではありますが、なでしこのドイツW杯以降から直近のリオ五輪最終予選までのなでしこジャパンについて、選手の平均年齢と出場キャップ数の2軸で世代交代の推移を見たいと思います。年齢は言うまでもなく、チームが若いか高齢なのかの指標、キャップ数は国際経験のある選手で構成されているか否かの指標です。

 

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図1】2011~2016年 なでしこジャパン 年齢と出場キャップ数平均値の散布図

 

 図1は2011年(ロンドン五輪最終予選)から2016年(リオ五輪最終予選)までの、各年主要大会での代表選出選手の平均年齢と平均出場キャップ数とをプロットしたものです。

ドイツW杯制覇後すぐにロンドン五輪予選があったかと思いますが、ほぼ選手の入れ替りはなく臨んでいたのかなと。当時は平均年齢が25.6歳(澤さん除くと25.2)、出場キャップ数の平均は57(同50)。

それが、直近のリオ五輪予選では、平均年齢が27.6、平均出場キャップ数は64です。今回、澤選手が引退しているので澤を除いた2011年実績から数えて5年間で選手年齢にして2歳、出場キャップ数にして14それぞれ高くなっていることになります。

これを各年それぞれ細かく見ていったものが下記の通りです。

 

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【図2 2012年ロンドン五輪 選出選手の年齢 × 出場キャップ数 散布図】

ドイツW杯の翌年の大会ということで、メンバーは全てドイツW杯経験者で占められました。平均年齢は26.4(同26.0)、平均出場キャップ数は68です。

 

 

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【図3 2014年アジア競技大会 選出選手の年齢 × 出場キャップ数 散布図】

1年飛びまして2014年アジア競技大会の同散布図です。色分けはそれぞれ2011年から数えてメンバー入りした年を表してます。2011年メンバーはドイツW杯・ロンドン五輪メンバーです。中島、菅澤、山根はこの前年から選出されています。図1の散布図でも分かるように、この2014年の同大会は国際経験の浅いメンバーが多数呼ばれています。とはいえ、平均年齢は26.2(同25.6)、平均出場キャップ数は48と、チーム年齢は据え置かれつつも顔ぶれはフレッシュな面々が増えた。戦績は決勝で北朝鮮に敗れての準優勝でした。

 

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【図4 2015年カナダW杯 選出選手の年齢 × 出場キャップ数 散布図】

恐らく、ポスト・ドイツW杯のなでしこ佐々木監督政権におけるひとつのピークだったのがこのカナダW杯。決勝でアメリカに圧倒的な実力差で敗れての準優勝でした。図1でもあるように平均年齢は28.7、平均出場キャップ数は75です。

散布図をご覧の通り、顔ぶれはやはりドイツW杯から変わり映えのないものに。ロンドン以降選出されて定着したのは、有吉、菅澤、中島、川村、北原、山根ら。

この約半年後に迎えたのが、リオ五輪最終予選です。同散布図が以下。

 

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図5 2016年リオ・デ・ジャネイロ五輪最終予選 選出選手の年齢 × 出場キャップ数 散布図

やはり顔ぶれはドイツW杯からほぼ変わらず。実に5年間に渡り主要選手は固定されているという事実。

カナダW杯から約半年という準備期間をどう見るかという見方もあれば、もっと遡ってロンドン五輪後からカナダW杯、リオ五輪に向けたチーム構築をするべきだったという見方もあるかと。

ここでハマってしまってはまずいなと思うのが、メンバー固定化が即イコール 予選敗退の要因だと直接的に結びつけてしまうことです。上記のようなメンバー固定化は事実として確かにある。しかし、チームの弱体化、最終予選の敗因とは、慎重に因果関係と影響度を分析する必要があるでしょう。

 

「世代交代」というテーマは、クラブでもナショナルチームでもつきまとう大きなテーマ。男子も五輪後にU23代表選手がどのくらいハリル・ジャパンに食い込むかは、ロシアW杯のチーム構成を占う上でも注目ポイントかと。

一方で出場キャップ数が示す国際経験、さらにはチームの成熟度も無視できない指標。年代別代表の国際大会出場経験がのちのちその国の強化に効いてくるということも、国際舞台での経験という意味では無関係ではないかと。

この2つの指標はトレードオフに近い力学が働いているのかもしれません。

若い世代で代表チームを構成し、国際経験を積んで強化を図っていくというやり方もあるでしょう。これに近いアプローチで結果を残したのが、シドニー五輪の選手を中心に構成された日韓W杯時のトルシエジャパンかと。

この対局にあるのが、南ア杯予選から本大会を戦ったメンバーを中心に引き続き代表を構成し、ブラジルW杯本大会まで継続したザックジャパン。山口、清武らロンドン五輪メンバーも組み込みつつも、やはり遠藤、長谷部、長友、本田のチームでした。

どちらが正しいということではなく、その時の最高のパフォーマンスを発揮できるメンバーで臨むということだとは思うのですが、俗に言う黄金世代・谷間の世代というのはあるかと思いますし、そこをどう見極めてその時最高の代表を構成するかということだと思います。

 

 なでしこジャパンは佐々木監督が退任し、新たな監督のもと選ばれた選手たちによって再び世界大会のタイトルを睨んで強化を図っていくことでしょう。否応にも世代交代は進むはず。その時、同じくリセットされてしまうであろう代表キャップ数という指標と、新生なでしこの戦績とを引き続き追って見ていきたいなと。

経験の浅さも、若きなでしこのポテンシャルによって凌駕していくのか、やはり経験のなさ、未熟さはそのままなでしこの停滞を指し示すのか。

今回の敗退を機になでしこへの関心を失わないで欲しいなと思う、わたしからのイチ・分析・データ可視化をお伝えしました。

 

では、また!

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