【ジェフ千葉】19位に沈むチームに何が起きているのか? 〜不振の要因をデータから考察〜
【公式】ハイライト:アビスパ福岡vsジェフユナイテッド千葉 明治安田生命J2リーグ 第10節 2018/4/22
J2リーグ|19位|勝ち点10|3勝1分6敗|17得点 22失点
予想の遥か下方を彷徨っているおらがジェフユナイテッド千葉。
前回の「船山システム」考察の記事から1ヶ月空いてしまいましたが、その頃には予想だにしない順位に陥っており、正直かなーり凹んでます。
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また、開幕直後にあげた自動昇格までの勝ち点計算のエントリで指摘した10節終了時点で勝ち点20というマイルストーンからも、およそ半分ほどの進捗に留まっています。
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こんな現状に甘んじているのは何故なのか。
開幕からまたハイラインに戻したから。
4−3−3に拘りすぎているから。
茶島のスタメン起用に固執しているから。
エベルトや増嶋らCBが安定しないから。
エスナイデル監督に問題を修正する手腕がないから。
外から見ている身分ならば何とでも言えます。
誰かのせいにして嘆くことも、「繰り返す」ジェフの体質を呪うこともできます。
確かに今のジェフは不甲斐ない試合ばかりかもしれない。
ただ、試合を観ただけの印象そのままにチームを責めるというだけでは、何故このような不調に陥っているのか、その要因を見落としてしまうのではないかと。
なので、リーグのおよそ4分の1を消化した現時点のチーム状況をデータから考察したいと思います。
データはご覧の提供でお送りします。
2018シーズンはエスナイデル体制2年目。
よって昨季からの「継続」によって、より高みに行けると多くのサポーターは考えていたと思います。
ただ、今季10節を終えての結果と内容を思うと、果たして昨季からの積み上げは「継続」されているのか?と疑問に思うのも仕方ないことかと。
そのあたりを比較するべく、17年シーズンと18シーズンの主なスタッツをピックアップして可視化、分析を試みました。
【図1】パス・スタッツのシーズン比較(17'-18')
今季まだ10節、されど10節消化したので、今季平均と昨季シーズン平均とを比較。
さらに、戦績毎、及びホーム/アウェイ毎にスライスしての各平均値をプロットしました。
図1はパス本数とパス成功率のシーズン比較。
青色のバーと青線が昨季、グリーンのバーとグリーン線が今季。
私が気になったのは2点。
ひとつは、パス本数が増えていること。
もうひとつは、パス成功率が低くなっていること。
この2点を繋げると、「パス本数は増えているのに、パス成功率は下がっている」ということに。
これって、けっこうマズい状況です。
何故なら、成功しなかったパス、ミスパスが増えているということを意味しているから。
昨季のスタッツ、特にジェフの勝利時のパス成功率は、シーズンアベレージよりも低いです。ただパス本数も同様に少なかったのです。これなら、ミスパスの頻度も少なくて済みます。
今季も勝利時、そしてホームでのゲームはパス成功率は昨季同様低くなってはいますが、パス本数は少なくはなっていない。
もうひとつ気になったのは、アウェイのパス成功率。
ここだけはシーズンアベレージよりも高くなっています。これは恐らく、引かれた相手のブロックの外側で無為なパスを繰り返して釣り上がったものかと。
ジェフの強烈なカウンターを食らわないために、ガッツリ引いて逆にカウンターでハイライン裏を狙う相手のスカウティングによるジェフ対策がスタッツの一端に表れたのでしょう。
今季の対戦相手は、相当にジェフを警戒しているという証左です。
【図2】クロス・スタッツのシーズン比較(17'-18')
図2はクロス数とクロス成功率の比較プロット。
ここではパス・スタッツとは少し違って、クロス成功率だけ昨季より下がっています。
ジェフの戦い方、特に相手陣内から相手ブロック攻略のセオリーは、ほぼほぼサイドアタックです。多用するサイドチェンジもサイド→最後方→逆サイドや、ピッチを大きく横切るといったように、相手ブロックに近いピッチ中央を経由せずに、相手ゴールから遠いサイドレーンにボールがあることがほとんどです。
故にある程度相手のラインを押し下げると、そこからクロスを入れることが多くなります。今季もクロス数はリーグ2位(昨季は1位)。今季ここまでの17得点のうち、5点がクロスからのゴールということで、昨季の12ゴールの約半分を10節時点で稼ぎ出しています。
ゴールに直結するプレーでもあるクロスの精度が昨季並、または昨季以上の水準になれば、大きな武器になるとは思うのですが...
【図3】アタッキング・スタッツのシーズン比較(17'-18')
図3に30mライン進入回数とシュート数の比較プロット。
昨季より相手ゴール前のゾーンへの進入回数は、やや低いままです。
回数の減少幅より下がっているのが、折れ線のシュート数でしてシーズンアベレージで20本弱ものシュートを放っていたのが、今季は15本にも満たない水準に留まっています。
前述のパス・スタッツで一端が見えたように、対戦相手は引いてゴール前を固める対策を敷いてくることが多くなったことから、30mラインの内側のゾーン、すなわち相手ゴール前への進入が容易でない事は想像に難くない。
相手の対策をこじ開けて効率的にシュートまで持ち込むやり方を何か見つけなければ、今のままでは相手の土俵の上で戦わされる試合がこの先も続くことになるでしょう。
【図4】被アタッキング・スタッツのシーズン比較(17'-18')
今度は逆に相手のジェフゴール前への進入回数とシュート数の比較プロット。
昨季は被シュート数が約10本。シーズンアベレージでも戦績毎、ホーム/アウェイであっても、おおよそこの水準に変化はありませんでした。
何故ならジェフがボールを保持し、相手陣内でプレーする時間がほとんどだったから。「いつでもやることは変わらない」と述べるエスナイデル監督の狙いが一応は出せていたという事かと。
ただ、今季は昨季に比べるとややシュートを撃たれています。
特に敗北時、及びアウェイのゲームでは、30mライン進入、及びシュートをより多く許してしまっている。図1のようにいくら相手陣内でプレーしようとも、今季はミスパスが多くなり相手に攻撃の機会をみすみす渡してしまう頻度が多くなっています。
そうなると相手はハイライン裏に人とボールを送り込んで容易にジェフのゴールを急襲してしまう。そうしたシーンが毎試合、リプレイのように繰り返されてあっけない失点を喫している。
ゴールに直結する崩しやパスによるボール前進ができず、不用意にボ―ルを保持するためだけのパスを重ねる度に失点のリスクが膨らんでいく...そういった負のスパイラルに陥っているのかもしれません。
簡単にではありますが、今季10節を終えてのスタッツを昨季のアベレージと比較してみました。
ゲームを観ていてモヤモヤとしていたものの一部分は晴れてきたのかなと。
それでもま胸に残る鬱屈した思いを晴らすには、勝ちを重ねて順位を上げていくことでしか果たせないのではないかと思います。
まだ開幕から10節を終えただけ。
新加入選手の戦術浸透や昨季からいる選手との連携深化には時間を擁するのも分かる。
それでも、試合は続きますし消化する度に昇格へのリミットは刻々と迫ってきます。
昨季1シーズンかけて土台を築き、2シーズン目の今季はその土台の上に骨組みを築くフェーズ。
昨季手に出来なかった「安定感」を未だ得られていない。築いた土台に安定感が無ければ、その上に骨組みを築くこともままならない。これから先どうにか戦績が上向いて、安定感の端緒を掴むことができるかどうか。
課題は多く、それらを克服する道のりも険しいでしょう。
「こんなはずでは無かった」と思うのは、期待が大き過ぎたからか、それとも必然だったのか。
こうなることを予期していなかったのなら、それはひとつの過ちでしょう。ただ、課題はいつどんな時でも降って湧いてくるものです。それが今こうして立ちはだかっているのなら、それを乗り越えることでしか道は開けません。
それすら出来ないというのなら、J1昇格は遠い夢で終わってしまうでしょう。
どれだけ現実的に昇格という目標を捉えているのか、ジェフユナイテッド市原・千葉というクラブの度量と力が試されているということなのかもしれません。
その過程をそばで見届ける存在である、サポーターもまた試されているのかもしれません。丸々8シーズンも耐えてきたのですから、この先だっていくらでも我慢してやりましょう。
今回はここまで。
それでは、また!