【ジェフ千葉】アビスパ福岡戦プレビュー ~警告数から見たインテンシティーと攻撃データの対比から占う「3戦連続上位喰い」の可能性~
明治安田生命J2リーグ 第38節
アビスパ福岡 - ジェフユナイテッド千葉
2017/10/22(日)/ 14:00 K.O / レベルファイブスタジアム
【公式】プレビュー:アビスパ福岡vsジェフユナイテッド千葉 明治安田生命J2リーグ 第38節 2017/10/22
上位チームを迎えてのホーム連戦を見事連勝で乗り越えたおらがジェフユナイテッド千葉。
しかも、岡山戦は3得点、松本戦は5得点とこの2節8得点を稼ぐ爆発っぷり(失点も1ずつ上積み)。
いずれも前線にターゲットとなるCFを擁し(赤嶺・高崎)、基本システムを3-4-2-1とする、「直線的な攻撃を仕掛けてくるチーム」(byエスナイデル監督)という共通点のある相手との連戦ということもあって、準備面でやりやすさがあったのも事実でしょう。
共に前回対戦、アウェイで敗れている相手からホームできっちり倍返し(得失点差計算)できたことは、リーグ終盤、PO圏へ食い込む戦いの中にあって、ラストスパートを掛ける意味でも良い勢いを産める連勝になったかと。
ホーム連戦の後は、アウェイ連戦。
2週連続で九州に乗り込む戦いになります。
まず、今節の相手は2位アビスパ福岡。
砂塵舞うホームでの戦いはスコアレスドローに終わりました(千葉はこの福岡戦が今季唯一のスコアレスドロー)。
リズムを掴みかけるも、井原監督の迅速なシステム変更と選手投入で押し返され、終盤セットプレーからゴールラインを割ったかに見えた決定機を作るも、ノーゴールの判定に泣いた悔しい引き分けだったかと。
あれから19節を経て相まみえることとなりましたが、昇格圏に残る福岡と中位にいる千葉という立場は同じまま。
とはいえ、サッカーは順位の優劣がそのまま結果に反映されるわけではない。事実、ジェフはホームとはいえ上位を立て続けに複数得点で破っている訳ですから、その勢いを持って難敵福岡を飲み込めるかどうか、というところでしょう。
自分たちが37節に渡って実践してきた「攻撃的スタイル」は勿論、ここまで呪われるが如く勝ちから見放されているアウェイ戦に臨む「メンタル」が試される、最終試験とも言えるアウェイ連戦になろうかと。
そのあたり、「攻撃的スタイル」と「メンタル」について触れるデータをもって、今節アビスパ戦の行方を占ってみたく思います。
データはご覧の提供でお送りします。
今季の千葉の課題で最も大きなものは、「アウェイ戦の結果」という事になるでしょう。戦績は4勝2分12敗と大きく負け越している事実以上に語る事はありません。
ホームでもアウェイでも、「我々の攻撃的スタイルを貫く」事はできているかと思います。ボール支配率やシュート数というスタッツを見れば、それもまた事実だろうな、と。
ここまでアウェイで苦しんできたのが、ゴールを決めるべき時に決められない「シュート決定率」という事になるでしょうか。
この点、以前あったエスナイデル監督のインタビュー記事に、精神面(メンタリティー)が課題だという言及があり、故に「高いインテンシティーが維持できない」事に問題の本質があるとありました。
ただ、インテンシティーとは決定機を決めるか決めないか、という一瞬の集中力のみを指すものでもないと思います。
インテンシティーというファクターを如何にデータで測れるかと、私はこれまで思案してきたのですが、「警告/退場」の多寡で測れないか?という仮説を提起したいな、と。
そのこころは、行き過ぎた反則(ここではファウルを指してます)を犯さざるを得ない状況になっているということが、チームとして、その個人としてのプレーに何らか問題が起きているという事ではないのかなと。
それならばファウル数でいいじゃないか?と思われるかもですが、戦術的ファウル(あえてファウルで相手を止める)を許容しているチームもあろうかと思い、チームとしては許容できない、むしろ避けたいであろう「警告/退場」の多寡で見ていきたいと思いました。
1度警告を貰う事で、2度目を受けないように接触プレーの場面などは慎重にならざるを得なくなるわけですし、そこもまたプレーへの集中力に影響を及ぼすだろうなと。
ちょっと遠回りなこじつけかもしれませんが、ひとまずそうした構造でインテンシティー、ひいては「メンタル」について間接的に見ていきたいなと思います。
【表1】2017シーズン J2リーグ 反則ポイント ランキング(第37節終了時点)
まず、俯瞰的にリーグ全体でこの警告と退場について一覧していこうと思い、表1に「反則ポイント」のJ2ランキングを載せました。
「反則ポイント」については、以下のような算出方法に基いています。
■反則ポイントの算出について
- 退場1回につき3ポイントを加算する。
- 同一試合における警告2回による退場も、1回につき3ポイントを加算する。上の表では「警告」2回、「警告2回による退場」1回と表示される。
- 警告1回につき1ポイントを加算する。
- 上記、2)、3)の警告のうち、「異議」「遅延行為」によるものについては、別途1ポイントを加算する。
- 出場停止1試合につき3ポイントを加算する。
- 大会の終盤で、残り試合数よりも出場停止試合数が多い場合は、出場停止試合数分をポイント加算する。
- ベンチにいる交代要員、またはチームスタッフに対する処分も、ポイント加算の対象とする。
- 他大会の影響で出場できない試合については、ポイント加算しない。
- 警告および退場(退席を含む)がなかった試合1試合につき、3ポイントを減ずる。
上記をご覧いただければお分かりのように、反則ポイントは少ない方が良いのです。唯一マイナスなのが、大分トリニータ。ワーストなのは、町田ゼルビア。
おらがジェフはというと、なんとリーグ・ワースト4(福岡は真ん中の11位)。
「今季のジェフはファウルが多いよな...」と思う方もいらっしゃるかと。
というのも、今季はハイプレスで奪い切る前進守備をセオリーとし、球際でも激しくコンタクトを試みる等、守備の局面であっても攻撃的スタイルを実践している事から、ファウルを取られてしまうシーンが多いのかなと。
ただ、ファウルが多い事と警告が多い事は必ずしも一致しないと思っていまして、そこはうまく警告を貰わないようにコントロールできるものではないかなと思います。本当はファウル数が取れれば多寡を併せて見てみたかったのですが、「ファウル数」のデータがなく断念...
【表2】福岡/千葉 2017シーズン 警告・退場・出場停止状況 比較(第37節終了時点)
今節の相手、福岡との比較で警告、退場、そして出場停止の事象の詳細を比較したものが表2。
表1の反則ポイントが無警告試合によって減点されていく方式のため、ランキングと単純なシーズンの警告/退場の多寡とは連動していないことがエクスキューズになろうかと。
故に福岡と千葉のファウル数の差異は12ですが、福岡は退場がゼロ、出場停止数は千葉が福岡の倍という、ペナルティの重い罰則区分で差が開いている事が分かるかと。
課題のアウェイ戦との関わりでは、60の総警告数のうち、31がアウェイ戦でのもものとホームとあまり差異は無いものの、退場、即ち数的不利に自ら追い込み試合を壊してしまった試合は3試合を数えます(金沢戦、愛媛戦、群馬戦)。
このあたりに精神面(メンタル)の拙さ故に、インテンシティーを維持できないという問題が浮き彫りになっているのでは...と見るのは穿ち過ぎでしょうか(うーん、さすがに無理あるかも...?
【表3】アビスパ福岡 2017シーズン 選手別 警告・退場の記録(第37節終了時点)
【表4】ジェフ千葉 2017シーズン 選手別 警告・退場の記録(第37節終了時点)
参考までに警告/退場がそれぞれどの選手に対してのものかを上記表3と4で、福岡/千葉それぞれ一覧にしました。
選手毎にどの反則対象で警告を受けたかを各列「反スポーツ的行為」から「遅延行為」まで、それぞれ受けた警告数をカウントしています。
千葉は、30節岐阜戦に主力3選手が揃って出場停止になったように、今季7人もの選手が累積の警告、または退場処分等の影響で出場できない事象に遭いました(岡野は天皇杯での退場のリーグでの消化)。
翻って福岡はここまで3人。今節出場停止となるジウシーニョと、CFのウェリントンがそれぞれ2度の累積警告で各3試合出場停止に。
ただ福岡は、いつぞやの千葉同様、終盤戦のこのタイミングで累積警告3枚と出場停止まであと1枚となっている選手が4人います(實藤、三門、冨安、石津)。
残り試合も少なく、しかも昇格を争うライバルとの試合(東京V、湘南、松本、岡山)ばかりなカレンダーであること、そして勝ち負けによってはPOもあるかもしれない事を考えれば、なるべく出場停止は喰らいたくない...という思惑がこの4名を縛るかもしれません。
千葉戦のピッチに立つ可能性の高いこの4選手の動向に、ひとつ注目してみてはどうでしょうか。
【表5】アビスパ福岡/ジェフ千葉 アタッキング&被アタッキング データの比較
さて、次におらがジェフの「攻撃的スタイル」について、各指標を見ていこうかと。
今節の相手、アビスパ福岡との対比がこれまた興味深いので、ひとつずつ見ていきます。
表5にアタッキング/被アタッキングの各スタッツとそのリーグ順位をそれぞれ可視化しました。
まず、「攻撃回数」。
これは、ボール前進、即ち相手ゴールに向けてボールを動かすプレーの頻度と言い換えられますが、おらがジェフはこの攻撃回数の指標においては今季リーグ2位。
これに対して福岡で見るべき指標は、「被攻撃回数」。
攻撃回数とは逆の意味、即ち相手の攻撃(ボール前進)を受けた頻度を指します。
この指標が福岡は、リーグ2位(少ない方が順位が上)。つまり、攻撃を受ける回数が少ない、相手のボール前進を防いでいると言い換えられるかと。
千葉の矛か福岡の盾、どちらが上回るかという構図が見えてきます。
次いで「シュート数」と「被シュート数」。
シュート数は1位が福岡で千葉が2位。共に多くシュートを放っているチーム。
翻って被シュート数はというと、1位が千葉、2位が福岡。つまりシュートを打たれる頻度がリーグで最も少ないのが千葉で、次いで少ないのが福岡ということ。
シュート数/被シュート数について攻撃回数と絡めると、これもまた興味深い構図になっています。
攻撃回数もシュート数も多い千葉に対し、被攻撃回数が少なく被シュート数も少ないが、シュート数はリーグで最も多い福岡。
千葉に関しては、過去何度も見てきたように今季掲げる「攻撃的スタイル」が文字通り実践できている証左であるといえるかと。 ボールを握って相手守備陣を揺さぶり、シュートまで持ち込むというカタチが作れているのだろうなと。
対する福岡は、データから浮かび上がる強みはやはり守備なのかなと。その上で、リーグ最多シュート数に現れているように、相手の攻撃をシュートまで持ち込ませること無く防ぎ、ボールを奪ってはカウンターでシュートまで持ち込む鋭さを兼備している、と。
最後、「ゴール数/被ゴール数」及び「成功率/被成功率」を見ることで、福岡と千葉の相克が占えようかと思います。
ゴール数は3位の千葉が1.6、6位の福岡が1.4と、アベレージでは1試合あたり1ゴールは決めているというデータに。
ただ、成功率で見ていくと千葉が9.6%の10位に対し、福岡は7.9%の21位。数多くシュートを打っているものの、精度に難ありなのが福岡という事なのかなと。
千葉にとって問題なのは、被ゴール数1.5とリーグワーストの被成功率13.8%というデータ。
シュート成功率でやや難ありな福岡が相対するは、リーグで最も被シュート成功率が高くなってしまっている千葉という構図。
ザッとここまでの対比をまとめますと、
- ボールを支配し、積極的にシュートまでの攻撃をピッチに描くであろう千葉
- シュートまでは打たせない堅い守備で攻撃を防ぎ切ろうかという福岡
- ボール奪取から鋭いカウンターでシュートまで打ち切ろうかという福岡
- 堅守を敷く福岡の守備陣を破って、シュートまで打ち切れるか、千葉
- 撃たれたシュートがリーグ・ワーストの確率で失点となっている千葉...
- しかし、シュート精度にやや難のある福岡...
- 先制点、そして、勝利はどちらの手に...
福岡の守備か千葉の攻撃か。
互いのシュートは決まるのか、どうか。
前回対戦、スコアレスドローという堅い展開もあるのかどうか...
互いに是が非でも勝ち点3が欲しい一戦。。
データで見てきた通りの展開になるかどうか、日曜日の試合は見ものです。
【図1】予想スターティング・フォーメーション
ここ数試合、人もシステムも変えているという福岡。
ただ主要な人選は千葉同様、そこまで変わり映えはしないのではないかと思います。
前回は兼田だったGKに杉山が入り、岩下、冨安、駒野、亀川、三門と山瀬、そしてスタートから出るか、途中投入かが曖昧なウェリントンと、おなじみの顔ぶれだろうと。
攻撃陣のバリエーションが多彩な福岡。千葉が岡山、松本と前線にターゲットを置くチームとの対戦で連勝していることを鑑み、ウェリントンの強さ・高さではなく、仲川や石津の速さや松田力を加えての前線のモビリティで千葉のDF陣にプレッシングを仕掛けてくるのか。ベンチにウェリントンを置いておくことで、仮にビハインドの局面となっても巻き返せると見るか。井原監督がスタメンに選択するアタッカー陣に、福岡のゲームプランが現れようかと思います。
おらがジェフは、町田がスタートから出るかどうか、その場合ホームで連勝できた原動力にもなった、4-2-3-1の「船山システム」を継続するのかどうかが焦点。
トップ下で躍動した船山の良さを活かさない手はないだろうなと。二人を同時併用し、トップ下とサイドを局面によって入れ替えて相手を撹乱することも可能かと。
堅守を誇る松本相手に5得点もできた背景には、戦術やシステム、駆け引きの部分で上回った部分もあったkもしれませんが、やはり大きかったのは先制点であろうかと。
今節もまた、守備の堅さを誇る福岡のこと。先に失点してしまうと引き篭もられて、カウンター狙いの術中にハマってしまおうかと思います。
相手を前掛かりにして、ハイプレスにハメる展開が千葉にとっては理想的。
リスクマネジメントも含め、ロングボールを使って陣地回復とリスク回避を選択して我慢する時間も長くなるかもしれません。
福岡は4-3-3と予想しました。頂点にはウェリントン置く、この並びではアンマッチと思えるシステムを井原さんが採ってくれれば...(前節、ソリさんが名須川をスタートで使ってハマらなかった伏線もあったので)。
ラスト10節を連勝のお陰で3勝2敗と勝ち越しで進捗できています。
残り5節。勝ち続けるしかありません。
即ち、上位チームを喰い破っていくしか道はない。
最後まであきらめの悪い「闘う犬」らしく、このまま上位チームに食い下がって行こうではありませんか。
では、また!