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【ジェフ千葉】V・ファーレン長崎戦プレビュー ~強さの秘訣は守備にあり?! 高木イズムをデータから紐解く~

   明治安田生命J2リーグ 第34節
 V・ファーレン長崎 - ジェフユナイテッド千葉

 2017/09/24(日) 19:00 K.O / トランスコスモススタジアム長崎


【公式】プレビュー:V・ファーレン長崎vsジェフユナイテッド千葉 明治安田生命J2リーグ 第34節 2017/9/24

 

 矢田旭為田大貴

 今季レンタルで途中加入のふたりが快心のプレーを披露して、ホーム・フクアリに約1ヶ月ぶりの勝利がもたらされました。

 2点を奪ってから、バックパスのミスで1点を失ってしまったのは猛省していただきたいところですが、経験豊富な多々良と大久保を途中投入し、この日絶好調だった為田を前線に残してのカウンター仕様で逃げ切ったあたり、ハイラインに固執せず交代選手と残した選手の力量を信頼してプランBを遂行して結果を出したエスナイデル監督、以下コーチ陣の働きには賞賛を贈りたいですし、残り9節に向けた伸びしろも感じました。

 ラリベイや熊谷、也真人らはコンディション的にも好調を持続させているように見受けられますし、アンカーで途中起用された多々良のように新たに本職とは別のポジションで好パフォーマンスを見せたり、為田のようになかなか期待に応えられず腐ってもおかしくない状況から起死回生の働きを見せるなど、チームのバイオリズムはここに来て上向いてきているように思えます。

 現在、昇格PO圏まで6ポイント差。 追う立場の千葉はもう足踏みは許されない状況。今一度ムチを入れて最後の直線でどこまで上位チームを差せるか...

 そんな昇格を占う試金石として打ってつけのカードが今節やってきます。

 現在2位にいるV・ファーレン長崎とのアウェイ戦。

 苦手なアウェイである上、今季長崎はホームで滅法強いのです。

 ここを超えるか、あるいは退けられてしまうか...千葉の本領が試される一戦と言えそうです。

 

 今回はV・ファーレン長崎を率いて5年目の高木監督の仕事の跡をデータからトレースしまして、長崎に沁み渡った「高木イズム」を絞り出してみようと思います。

 

 データはご覧の提供でお送りします。

www.football-lab.jp

 

 2013年のJ2初年度から長崎を率いて今季で5年目の高木監督。

 13年と15年を6位で終えて、過去4シーズンで既に2度の昇格POを戦っているあたり、今季こそ悲願のJ1昇格を睨んでいることでしょう。

 今シーズン開幕前、クラブが経営難から資金繰りで深刻な状態に陥るなど、過去シーズンに比べても最も難しいスタートとなったはずでしたが、チームは大崩れすることなく着実に勝ち点を積み上げて現在自動昇格圏の2位まで浮上。

 13年のJ2シーズン勝ち点66という記録まであと7ポイントということで、現在4連勝できている好調ぶりを維持できれば、この記録を超えることとJ1昇格という大目標達成が現実味を帯びてくることに。

 J2シーズン5年目ながら、どこか強かさを湛えているV・ファーレン長崎の特徴を知りたく、過去4シーズン分の「チームスタイル」各指標をグラフに可視化してみました。

 

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【図1】V・ファーレン長崎 チームスタイル各指標のシーズン比較(14年-17年)

 

 データが14年シーズンからしか無かったため、最も好パフォーマンスであった13年の特徴を盛り込めなかったのは口惜しいですが、ひとまず今季を含めた4シーズン の攻撃の特徴について図1にまとめました。

 数値はいわば偏差値のようなものでして、もっとも高い数値をマークしていたのは14年の「ショートカウンター」の項でその値は70。

 この年に自動昇格を果たした湘南と松本もこのショートカウンターの偏差値は高い水準にありましたが、その2チームを上回り長崎はリーグトップの数値を記録。

 ただ、14年は14位でシーズンを終えており、際立ったプレースタイルが結果には結びつかなかったようです。

 その後、15年、16年と図1をご覧いただくとお分かりいただけるかと思いますが、シーズンを追う毎に、攻撃についての各項の数値はスケールダウンしており、今季に関して言うと50以上の数値をマークしている項はひとつもありません

 この数値が必ずしも攻撃の優劣を表すものではありませんが、相対的に見て長崎のアタッキングプレーはリーグ平均と較べて消極的である、という見方はできるでしょう。

 グラフの形状から見るに、今季は昨季を踏襲しているように映りますが、セットプレー以外は軒並み下降しているように見えます。

 図1の偏差値は攻撃のアクションについてのものですから、今季の特徴と過去シーズンからの変化を追うと、長崎は攻撃的なチームではなくなってきている、という評価ができそうです。

 

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【図2】 V・ファーレン長崎 攻撃各指標のシュート到達率 シーズン比較(14年-17年)

 

 図2は攻撃の項目毎のシュート到達率を可視化したもの。

 図1の偏差値は、攻撃アクションの発生頻度を元に算出されたもの。シュート到達率はそうしたアクションのうち、どの程度の割合コンバージョンできたのかを表します。

 仮に50を下回る偏差値の攻撃プレーであっても、高いシュート到達率をマークしていれば少ないチャンスを着実にシュートまで繋げられた事を意味します。

 シーズンを追う毎に攻撃アクションの積極性が影を潜めている傾向が見て取れましたが、図2を見ると図1の下降幅ほどにはシュート到達率は下がっていない印象。

 それでも過去シーズンよりも高い数値をマークしたのは、「左サイド攻撃」のみ。「ショートカウンター」、「セットプレー」からのシュート到達率も例年並みと言えるでしょう。

 図1と図2の変動を併せて見るに、シュート到達までの効率は高まっていると言えますが、劇的に改善されているというわけでもない。

 今季、上位に居続けている要因はやはり攻撃にあるという事ではなさそうです。

 

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【図3】V長崎 17年シーズンのボール支配率 ✕ パス成功率散布図と勝敗のプロット 

 

 図3は毛色を変えまして、今季ここまでのスタッツを元に作図してみました。

 投入したデータは、今季ここまでの33節のスタッツ。長崎のボール支配率(平均44.6%)とパス成功率(平均69.4%)を縦横の軸に置いての散布図に勝敗をプロットしました。点のひとつひとつがキャプションで記された対戦相手とのゲームを表します。

 ◯印が勝利、同グレーが引き分け、黒丸が敗戦を表します(千葉戦は敗戦ですが勝利した愛媛と被って白丸に見える)。

 ボール支配率はリーグ21位ということなので、長崎はボールを支配するスタイルのチームではないということ。総得点42点のうち約半数がセットプレーから生み出されているように、典型的なJ2仕様のチームといえます。

 図3の点(ゲーム)の散らばりを見るに、自明ではありますがパス成功率が高ければボール支配率が高くなる右肩上がりの傾向にあります。

 ボールを支配しない、つまり相手にボールを持たれても苦にしないチーム故、散布図の左下方向に布置されたゲームでは軒並み戦績が良い。

 逆を言えば、ボールを持たざるをえない展開になったゲーム、図3では右上方向にあるゲームは軒並み戦績が悪い。

 今季の平均ボール支配率よりも高かったゲームでの戦績は5勝4分7敗。支配率が平均を下回って尚敗れたのは、0−5で大敗した第13節千葉戦を含め、第3節の徳島戦と第8節の福岡戦のみ。

 相手にボールを握られて守備を食い破られて敗れたのは全て前半戦での戦い。つまり直近は、どんなに相手にボールを支配されようとも耐え忍んで勝ち点をもぎ取れているということ。

 可視化しませんでしたが、長崎の得点経過別の勝率を見ると、先制したゲームでの勝率は88.9%(16勝1分1敗)。さらに前半をリードして折り返した場合は、83.3%(10勝1分1敗)ということで、リードを奪ったあとは守備の意識を高く保ち、そのまま耐え切って勝ててしまうということなのかなと。

 

<参考>状況別勝敗

J. League Data Site

 

 高木監督は5年もの間、V・ファーレン長崎を指揮し続ける中で攻撃についてはシュート到達までの効率化を図り、一方の守備はボールを相手に握られようとも焦れることのない耐久力を高めることでJ2仕様のクオリティを磨き上げたのではないか。

 シーズン終盤の今、長崎が4連勝できていることと合わせて見ると、そうした彼らが得意とする戦い方がより研ぎ澄まされてきているのではないのかと推察できます。

 

 本来であれば、図1で見たような可視化で守備のレベル推移をウォッチできればよかったのですが、J2では守備の「チームスタイル」指標がオープンにされておらず、なかなかストレートには傾向が見られずでして...

 ここまで見てきたような、少々まどろっこしい分析ではありますが、長崎の強かさ、「高木イズム」の正体が守備の堅さにある、というところは朧気ながら見えてきたのではないかと思います。

 

【表1】ジェフ千葉vsV・ファーレン長崎 第34節スコア予測シミュレーション結果

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 水戸戦に引き続き、モンテカルロ・シミュレーションにてスコアの分布をば出力してみました。

 アウェイに弱い千葉、ホームに強い長崎、それぞれの傾向を反映してのシミュレーションですので、千葉にとっては渋い予測になってます(最頻スコア予想は0-1で長崎勝利か)。

 上記見てきたように、千葉にとっては相手に先制を許すと得意とする守備の意識を一層高く持たれてしまうので、ビハインドの状況からゴールをこじ開けるのはかなり難しくなってしまうかと。

 反対にこちらが先制できれば、長崎がボールを持たなくてはならない状況に追い込むことができるので、ホームで5−0と大勝した時のような展開、即ちこちらのプレッシングに引っ掛けて逆襲で追加点を狙っていく流れに持ち込めるやもしれません。

 シミュレーションではロースコア予想ながら、ホームではそれを覆す結果を手にできた訳ですから、統計やら過去データを無視するような結果(千葉にとって良い方)を期待したいところです。

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【図4】予想スターティング・フォーメーション

 

 長崎は、今節の千葉について前節の大分と同様ボールを保持するものと考えているでしょう。そういった意味では、大分戦の成功体験をそのまま活かしやすいシチュエーションと考えていてもおかしくはないでしょう。

 攻撃的特徴を持つ養父ではなく、前節途中投入で守備の安定感をもたらした前田を今節は先発で起用するかもしれない。

 千葉にとって要警戒は、やはりセットプレーでしょうか。前回対戦では岡野がうまく封じ込めたファンマもここにきて復調の兆しを見せており、彼がターゲットとなるセットプレーやロングボールでの縦一発は最大限の注意を払うべきポイント。

 

 千葉は好調をキープする選手を引き続き起用することになろうかと。

 清武については、水戸戦でのイージーミスがあったから外すというより、持ち前の攻撃の部分でやや精細を欠いているようにも見受けられたので、ベンチに置いてみるというのも選択肢としてはありかと。

 というのも、途中投入の攻撃的カードがここのところ指宿ばかりになっている気がするので、清武のような能力の高い選手をジョーカー的に起用するのも理にかなっているように思えるからです。

 ゲームプランは、やはり先制点を先に献上しないことが第一。

 今節はつまらないミスからピンチを招くようなことが無いようにお願いします。。1点がこの上なく重いゲームになろうかと思います故。。

 

 千葉としては残り10節の初戦をまずは勝利できたことをポジティブに捉えつつ、この先も続く戦いの多くが上位とのカードということを忘れずに、引き分けで良しとせず勝利を希求して戦って欲しいと思います。ここで連勝できれば、間違いなく終盤の追い上げが加速するはずですから...

 明日は最高の結果を期待します。

 では、また!

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