【ジェフ千葉】水戸ホーリーホック戦プレビュー ~シーズン「ラスト10」の行方をデータでシミュレーションしてみた~
明治安田生命J2リーグ 第33節
ジェフユナイテッド千葉 - 水戸ホーリーホック
2017/09/16(土) 18:00 K.O / フクダ電子アリーナ
【公式】プレビュー:ジェフユナイテッド千葉vs水戸ホーリーホック 明治安田生命J2リーグ 第33節 2017/9/16
最下位群馬に16試合ぶりの勝利を献上してしまったおらがジェフユナイテッド千葉。
恥ずかしい、情けない、そんな厳しい声があって当然かもしれない。
敗れてしまったという結果については、15シーズンから勝てていない群馬との相性の悪さだと割り切ってしまえればよいと思いますが、内容に目を向けると簡単に済ませてしまえるものでもないような。
千葉にボールを持たれる事を前提に、さらにアウトサイドからの攻撃も想定してゴール前を固めることと、スペースを与えないために陣形をきっちり引いて跳ね返すことを徹底し、自陣からボールを前に蹴り出してそのセカンドボールワークに活路を見出すという、これまでも他チームが千葉相手に見せたセオリー通りに90分を戦った群馬。
相手のやり方は分かっているはずなのに、それに対応できないおらがジェフ(分かっていなかったとしたら、相当ヤヴァい)。
試合後にエスナイデル監督が「選手を疲れさせるくらいに練習する」と語ったクロスについても、精度が伴えば引いてゴール前に人垣を築く群馬の守備を果たして破れたでしょうか?
相手が対策してきたところをひたすら殴り続けて壊せなかった事を嘆くか、むしろ群馬の別の欠陥に気付けなかった事を嘆くのか、いずれの場合にしても準備不足のまま敵地に取り込んだことを嘆くべきか。
今季スタイルの積み上げとは別の臨機応変さや現場での対応力、さらに先制されて攻めあぐねる事態に対する措置の準備(スカウティング、分析力)の部分で遅れを取っている事が露見してしまったと思います。
落とせない試合をまたも落としてしまい、とうとう今シーズンも残すところ10節となりました。
順位は13位ながらPO圏6位までは勝ち点8差。まだまだ諦めるには早いポイント差ながら、この先の一戦一戦の重みはとてつもなく重くなってきます。
今回はその残り10節をどのような結果で駆け抜けるべきかを考えたく思います。
「無論、全勝あるのみ!」なのは当然ですが、そこはデータについて語るってコンセプトでこのブログはやっていますので理想は理想として、一方の今シーズンのデータから導き出せそうな現実的(それに近い)落としどころを、予測モデルを駆使して予想してみたいと思います。
「予測」は分析とは毛色が違うよってのを以前綴っていますが、初めての試みとしてジェフを題材にチャレンジしてみます。
football-data-visualization.hatenablog.com
データはご覧の提供でお送りします。
まず、予測とはなんぞや?については、先程の以前のエントリを参照いただきたく。
簡単に申し上げると、既知の情報から未来/未知の事象を何らかのアルゴリズム/モデル(数学的/統計的)を用いて推計することを指します。
今回トライした予測は、残り10節の戦績、勝敗数です。
順を追って進めたいと思います。
まず、表1にジェフと残り10節の対戦相手の戦績をまとめました。
【表1】ジェフ千葉&ラスト10の対戦チーム H/A 戦績まとめ(第32節終了時)
この先の対戦相手のうち、現時点でジェフより下位にいるのは京都と町田のみ。
次節の水戸含め残りは全てジェフより上位の相手。勝ち点3が6の重みをもつような対戦カードが目白押しなのです。
自分たちが這い上がると同時に相手を引きずり下ろすことにもなり、またその逆に蹴落とされるとそのまま踏み台にされ、相手はさらに高みに登ってしまう事に。
勝ち点から順位予想をし、PO圏に入るか否かを導き出せればとも思うのですが、ライバルチームの勝ち点予測&順位予測も絡むことになるので、諸々のデータ準備や計算の複雑さなど、週イチで綴るにはなかなか手に負えず……
どのデータを用いて勝敗数を予測をするかですが、各チームの総得点と総失点を用いてトライしたいと思います。
【表2】ジェフ千葉&ラスト10の対戦チーム H/A 得失点数まとめ(第32節終了時)
表2に得失点をシーズン全体とホーム、アウェイ毎でサマってみました。
というのも、今季のジェフはとりわけホームで強くアウェイに弱い傾向が顕著なので、その点を予測モデルに当てはめる際にも考慮せねば…という事で、他チームについても同じようにまとめています。
このデータを元とし、以下の指標を実際のパラメータとしてモデルに投入します。
<ピタゴラス勝率 算出式>
- Runs Scored = 総得点
- Runs Allowed = 総失点
上記「ピタゴラス勝率」は主に野球の世界で予測の際などに用いられている勝率でして、その名称はピタゴラスの定理に数式が似ていることに由来しています。
先ほどの表2の得失点からジェフとその他10チームの各勝率を計算したものが下記になります。
【表3】ジェフ千葉&ラスト10の対戦チーム H/A 勝率・スコア比(第32節終了時)
シーズン平均とホーム/アウェイでの各ピタゴラス勝率、右表に得点と失点の比、スコア比をそれぞれ計算しました。文字通りスコア比は1を上回れば得点が多く、下回れば失点が多くなることを意味します。
この先の対戦相手、そしてホームかアウェイかを見つつそれぞれの勝率、スコア比をご覧いただければと。
ジェフを例にすれば、ホームでは1.83である一方、アウェイは0.53ですから顕著に今季の傾向が見て取れます。
意外なのが、ホームとアウェイでジェフとは逆の傾向にあるチームがあること。
アビスパとゼルビアは、ピタゴラス勝率ではアウェイの方がホームよりも勝率が高い。ホームで8割、アウェイでも6割というピタゴラス勝率を誇る松本山雅や、千葉同様ホームで滅法強いのにアウェイでは負け越している長崎のように、ホーム/アウェイによる勝率の傾向というのは、チーム毎にありそうだなと。
各チーム、ホーム/アウェイ毎に「このスコア比の時、勝率はこう...」という因果関係が描けるかと思います。
この各パラメータをジェフのソレと突き合わせて勝敗を予測していくわけですが、単純に比較して「長崎のホーム勝率とジェフのアウェイ勝率、長崎の方が高いからジェフは負けるな・・・」という結論付けをするわけでは無い事はお分かりいただけるでしょうか?
勝率とは「確率」ですから、8割の勝率でも負ける時はあるわけです。「10試合やって8試合は勝てそうだが、2試合は負けそう」のようなイメージ。
ただ、サイコロを振るように90分のゲームを何度もやるわけにはいきません。同じ相手とは1シーズンでホーム/アウェイで1試合ずつしか対戦しません。
実際は当該チーム同士1試合ずつしかできませんが、データに表れたこれら傾向や差から数学的/統計的手法でもって、機械的に「仮に100試合、10,000試合やったら...」のようにランダムに試合を繰り返してみるやり方で、統計的に妥当な試合結果の推定をしてみたいと思います。
それらを可能とするために、今回は「モンテカルロ・シミュレーション」という手法を駆使したいと思います(アルゴリズムの詳細解説は他に譲ります)。
<参考>モンテカルロ法のお話
例として、次節対戦相手の水戸ホーリーホックとの勝敗予想をモンテカルロ・シミュレーションを駆使してやってみたのが、以下の結果。
【表4】ジェフ千葉vs水戸ホーリーホック 第33節スコア予測シミュレーション結果
千葉のホーム、水戸のアウェイという条件を考慮して、 各チームのH/Aのスコア比を元に得点数(左)、失点数(右)をそれぞれ0点から最大5点まで分布すると仮定して、機械的に100万試合シミュレーションした結果が表4になります。
(つまり、千葉と水戸、ホームとアウェイの前段までのスコア比(平均得点と平均失点の比)から0-0のスコアレスドローから、1-0、1-1...5-5までの各得点パターンの試合結果がどの程度起こるかを、サイコロを振るかのようにランダムに100万回繰り返した)。
縦軸に千葉の得点と失点、横軸に水戸の得点と失点となっていて、各セル重なった部分の数値は構成比を指します。
得点の分布で見ると、もっとも多かったスコアのパターンは、「千葉 2 - 0 水戸」、僅差で「千葉 1 - 0 水戸」というもの。
一方失点で見ると、「千葉 1 - 1 水戸」、次いで「千葉 0 - 1 水戸」。
※失点なので、少ないほうが勝利ということに。
これらシミュレーションした得点と失点のパターンを加味して、当該チームとの勝敗を予測。これを水戸と同様、この先の対戦相手とも同様にシミュレーションした結果、残り10節の勝敗数の予測は下記のようになりました!
<予測モデル|予想戦績パターンと勝ち点>
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予測モデルA|5勝0分5敗/15pt
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予測モデルB|6勝0分4敗/18pt
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予測モデルC|5勝1分4敗/16pt
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予測モデルD|4勝2分4敗/14pt
予測モデルがAからDまであるのは、先程の得点と失点の分布の種類(確率分布)や、スコア比と勝率との間にある「関数」(スコア比が±◯◯に動いたら、勝率が△△動く、という因果関係の考え方)、それら組み合わせをひっくるめて、いくつか種類の異なるアルゴリズムでそれぞれ試したからです。
予測精度や細かい結果数値はあえてはぶきました、、(あまり良い結果ではなかったので^^;
ピタゴラス勝率が引き分けの無い野球で用いられてきた指標であるのに対して、サッカーではドローゲームが多い事、ホームとアウェイの傾向などを考慮して、もう少しチューニングできればよかったですが、片手間でやるには時間が圧倒的に足りないですね(私のスキル、そしてレベルも...
はたして、おらがジェフの歩みや如何に。。
【図1】予想スターティング・フォーメーション
スタメンは近藤が最終ラインに戻り、アンカーにアンドリューが入るいつものメンバーでは無いかなと。もうミッドウィーク連戦も無いので、怪我などのアクシデントさえなければ、もしかしたらほぼこのようなメンツで残り試合も臨むのでしょうか。
ただ、前節群馬にセンターを閉じられて攻撃が手詰まりになってしまったように、サイドアタック/クロス一辺倒ではなく、中と外を臨機応変に使い分ける戦い方ができなければならないでしょう。
その場合、交代カードも含めて、フォーメーションや人選も多少はアレンジしても良いと思います。
虎の子の清武、ラリベイ、也真人をスタートから使うのではなく、3バック/2トップやワントップ2シャドー、ダブルボランチにするなどして、途中からジョーカーとして彼らを組み込むやり方など、これまで見られ無かったアレンジも要るのではないか。
ヴェルディ戦でサリーナスを逆足WGで置いてみたり、群馬戦でイッセーを途中投入でダブルボランチに起用したりなど、最後まで試行錯誤が続く事は決して悪い事ではないはず。
コンディションや相手との噛み合わせ、連携面などを含め、その都度の最適解をピッチで表現できればいい。
フクアリに乗り込む水戸も実は直近4節勝ちがない。
昨季はダブルを達成した相手でもある千葉に対して、苦手意識はあまりないかもしれません。ただ前項のデータで見たように、水戸もまたアウェイでの戦績は芳しくはない様子(平均0.5得点/1.2失点)。
前回対戦第19節は、ボールの走らないケーズデンキ・スタジアムで水戸がやりたい相撲で完全に押し切られてしまいましたが、今節のホーム・フクアリでは水もたくさん撒かれるでしょうし、ボールを走らせ巧みなパスワークで水戸のプレスを剥がして、終始主導権を握りたい。
4連勝していた上位ヴェルディを複数得点して止められた事をポジティブな経験として思い出して、守備から入るであろう水戸の出鼻を挫きたい。
あとはミスやカウンターからの失点をしないようなケア、対策に進歩があるのかどうかも注目したいポイントになるでしょう。
季節もすっかり秋。サッカー観戦には最高の季節になってきました。
ただ残りはもう5節。フクダ電子アリーナで見られる今シーズンの戦いもあと5試合だけ。
我々は声の圧と熱量で選手を後押しするしかありません。
選手はきっと闘志あふれるプレーと勝利で、我々に感動を返してきてくれるはずです。
データから現実的な結末と題して予測しといてナンですが(手のひらクルー)、残り全部勝つつもりで、ラスト10節を後押ししていきましょう。
では、また!