サッカーをデータで視てみよう

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【後半戦の行方を占う】2017シーズン J1リーグ前半戦をデータで振り返る

 週末の第18節のゲームから既に後半戦に突入しているJ1リーグ

 先週のミッドウィークに未消化だった13節があったりなど、データのアップデートが間に合わずきっちり前半戦で区切れるのが今しかない...ということで、前々回のJ2リーグ前半戦の振り返り同様、J1リーグの2017シーズン前半戦も振り返ってみます。

 おおまかな可視化はJ2のものをトレースしています。データは第17節終了時のものに揃えています(順位、勝ち点も同様)。

 

football-data-visualization.hatenablog.com

 

 データはご覧の提供でお送りします。

www.football-lab.jp

 

 昨季シーズン終了時にもJ1リーグのゲームスタッツを元に振り返りをしていますので、およそ半年前との比較をご覧になりたい方はそちらも参考までに。。

 

football-data-visualization.hatenablog.com

 

 まずは、パス成功率✕ボール支配率の可視化から。

 

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【図1】 パス成功率 ✕ ボール支配率 J1チーム比較散布図

 

 J2のものと見比べていただくとその違いが顕著なのですが、J1ではパスが繋げてポゼッションできるチームほど戦績が良い、つまり上位にいけるリーグという傾向にあります。

 ただ、今季に関してはイレギュラーなチームがふたつほどあります。

 それは、サンフレッチェ広島浦和レッズです

 そのあたり、この2チームが何故低迷に喘いでいるのか、以下の可視化とも併せて考察していきます。

 

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図2】攻撃回数 ✕ ボール支配率 J1チーム比較散布図

 

 これもJ2のものと同様、ボールポゼッションが攻撃を伴うものか、そうでないかを図2の可視化から。

 図1でも顕著な浦和レッズ川崎フロンターレ、そしてサンフレッチェ広島がボール支配率で抜きん出ていますが、攻撃回数で見るといずれもリーグ平均より少ない数値(平均124.7回)。

 攻撃回数1位は柏レイソル、2位が鹿島アントラーズで、現在首位争いをしているチームがほぼ同位置にいます。いずれもパス成功率75%以上、ボール支配率も50%以上ということで、「ボールを持てる」チーム。

 同じく首位を伺うセレッソ大阪もボール支配率では50%を下回るものの、パス成功率が高く攻撃回数でも6位につけています。

 

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 図3】パス成功率 ✕シュート到達率 J1チーム比較散布図

 

 「ボールが持てる→攻撃ができる」かどうかを見た上で、図3ではそのあたりを少しブレイクした2軸、パス成功率✕シュート到達率の散布図

 パスを繋げてシュートまで行けているチームほど右上に布置します。

 図3でボールは持てるけれども、攻撃の頻度はやや少なかった3チームが再び右上に躍り出ます。

 攻撃回数は平均以下の頻度でも、いざ攻撃に移行すればそこは屈指のパス成功率を誇る訳ですから、シュートまで持ち込むことはできている様子。

 浦和と広島、冒頭でイレギュラーだと申したこの2チームが抜きん出ています。

 そこからやや左下の集団を見やると、先ほどの柏、鹿島の他、セレッソ大阪ガンバ大阪、神戸、磐田など攻撃に特徴を発揮しているチームが連なります。

 

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 図4】 シュート到達率 ✕ 攻撃1回あたりのパス本数 J1チーム比較散布図

 

 パスについてさらにブレイクしてみたのが、シュート到達率と攻撃1回あたりのパス本数による散布図。シュート到達率は縦軸に変わります。

 パス精度が高い3チーム、浦和、広島、川崎は攻撃の手数を多く掛けながらもシュートまで持ち込めている事が分かります。パス精度が高いからこそなせる技、ということでしょうか。

 ガンバ大阪と今季からポジショナル・プレーに着手していると言われる仙台も、やや攻撃に手数を多く掛けている模様。

 大型補強を施しながら戦績が芳しくないFC東京、序盤の連敗が響いて低迷している大宮は、攻撃に手数を多く掛けていながらシュート到達には効果的に至っていない事が分かります。

 首位を伺う鹿島、柏、セレッソ大阪、好調な磐田などは平均的、またはあまり多く手数を掛けずに攻撃を行いシュートまで繋げられているようです。

 ここまでのファクトをまとめると、鹿島、柏、ガンバ、セレッソなどは、パス精度も高くボールを保持でき、前に運ぶ時、即ち攻撃に移行した時は手数を掛けずに効果的にシュートまで到達できている。

 攻撃がとても効果的に機能していることが伺えます。

 

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 図5】決定率 ✕シュート到達率 J1チーム比較散布図

 

 図5、決定率✕シュート到達率の散布図で最終成果であるゴールが奪えているかを見てみます

 まず、ここでサンフレッチェ広島がイレギュラーである要因について、指摘したいと思います。

 ご覧の通り右下にいる広島は、シュート到達率はリーグ首位ながら決定率(枠内シュート決定率換算)では下から3番め、ヴァンフォーレ甲府よりも下なのです。

 高い精度でパスを繋ぎシュートまで持ち込めてはいるものの、肝心要のネットを揺らす事ができていない。ボールを握って攻めているのに点が取れない。他でも指摘されているように、これこそサンフレッチェ広島の最大の低迷要因ではないかなと。

 

 一方の浦和はというと、1試合平均2.3ゴール、シュートも1試合平均16.3本はリーグ首位。図5でも右上に布置しており、シュート→ゴールまでのプロセスの効率性は申し分ありません。攻撃における破壊力は昨季以上なのではないかな、と。

 好調なチームも軒並み高い決定率をマーク。シュートがゴールに繋がっている事が分かります。

 攻撃→シュートまでは高効率だったヴィッセル神戸ですが、決定率で見てみると広島に次ぐ効率の悪さ。先日来日したポドルスキー、そしてJリーグに復帰したハーフナー・マイクの働きでこの決定率が上向くのかどうか、後半戦の大きな見どころのひとつでしょう。

 逆に攻撃からシュートまではスムーズに移行できていなかった鳥栖FC東京ですが決定率は上位チームに匹敵する数値。特に後者は大久保嘉人ピーター・ウタカと個人能力の高いFWを揃えているので、少ないチャンスをきっちりモノにできている証拠かなと。

 

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 図6】被決定率 ✕ 被シュート到達率 J1チーム比較散布図

 

 反対に守備におけるパフォーマンス、被決定率✕被シュート決定率の散布図を見てみます。

 右に行くほど被攻撃に対して被シュートが多く、上に行くほど被シュートが失点になってしまっている、という見方になります。

 図5では攻撃が機能していると申し上げた浦和レッズですが、この図6で見ると今季イレギュラーな傾向になっている要因が浮き彫りになります。

 被シュート到達率、つまりシュートに持ち込ませない守備は機能していそうなのですが、被決定率が最下位の新潟に次いで悪い数値なのです。

 日本代表を外れたGK西川の不調なのか、決定機阻止ができていないDF陣の問題か、昨季年間勝点1位の原動力となった堅守が今季は機能しなくなったことが、浦和レッズ低迷の大きな要因と考えられます。

 広島もほぼ同様の位置におり、攻撃の決定率と守備の被決定率両方で問題を抱えていることが分かります。

 ミシャことペトロビッチ監督率いるレッズとそのミシャの影響が強い広島。

 ガラパゴス」とも言われる“ミシャ式”を敷くチームの低迷は、ひとつの時代の終わりを象徴しているのでしょうか。。

 

 最下位にいる新潟は、シュートまではさほど持ち込ませていない一方で、被決定率はリーグワーストの数字(16.7%)。攻撃でも枠内シュート決定率がリーグ最低でしたから、最下位にいるのも致し方無いのかな、と。。

 残留に向けて守備も攻撃も手当しなければならない訳ですが、攻守の要であったレオ・シルバの抜けた穴は想像を遥かに超えて大きかったのだなと思わされます。

 

 好調なチームは軒並み下側に布置していることが分かります。

 被決定率リーグ最低なのは横浜Fマリノス。攻撃が持ち味の川崎フロンターレは今季鬼木体制1年目ですが、守備の安定感を得ている印象そのままに、図6のデータでもそれが見て取れます。

 柏、鹿島、セレッソ大阪などもやはり左下のシュートに持ち込ませず、ゴールを割らせていないということが分かります。

 攻守両面が機能してこそ、今の順位にいるということがそのままデータでも出た恰好です。 

 

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  【図7】2017シーズン J1リーグ チーム別アタッキング指標の効率性

 

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 【図8】2017シーズン J1リーグチーム別 ディフェンディング指標の効率性

 

 図7と8はその攻撃、守備の効率性を一覧化した可視化。

 左から第17節終了時点の順位ソートで並んでいます。

 攻撃では最少頻度の攻撃回数で最高のシュート到達率の広島(決定率は下から3番目)、守備ではリーグ最少のクリア試行率ながら、被決定率は下から2番目の悪さである浦和、このミシャ式2チームのイレギュラーっぷりが目立つかなぁと。

 歩留りで見てみると、プロセスの途中まではまっとうに機能しているのに、肝心要のポイントだけすこぶる悪く、それ故にそれぞれ今の順位になってしまっている。

 浦和も広島も、「一番大事な歯車が狂っている」、という状態かなと思いますので、後半戦はこの2チームのそれぞれ問題となっているポイントが改善されるかにも注目したいと思います。

 

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 【図9】2017シーズン J1リーグ前半戦 得失点分布

 

 図9は前半戦の得失点分布を上から順位ソートで。

 上位はいずれも1試合平均1失点未満。逆に残留争いにいる下位に目をやると、軒並み1試合平均1得点未満。

 冒頭の可視化にあったように、十分なパス精度が無い、それ故にボールが保持できない、能動的にボールを動かしシュートまで持ち込むスキル水準が無いと攻撃では貧打に喘ぐこととなり、ポゼッションがままならないイコールそのまま相手ボール保持に傾くわけで、その分攻撃を喰らい続けて、やがて守備が決壊してしまう。

 今季昇格初年度なのはセレッソ大阪清水エスパルスコンサドーレ札幌ですが、昇格POで上がったセレッソは首位争い、J2優勝した札幌が残留争いをしているというのも例年とは異なる逆転現象で、これまた興味深いです。

 セレッソも清水も昨季J2の戦いでは、順位は札幌より下回ったもののボールプレーにおけるクオリティ、パス精度やボール保持率は札幌より高い水準にありました。

 J1の舞台に上がった今季、J2の順位ではなくJ2でのボールプレーのスタッツがそのまま戦績に反映されており、やはりJ1とJ2は傾向が異なるリーグであるなぁという事に改めて気付かされました。

 

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 【参考図1】トラッキングデータ J1リーグチーム別比較散布図

 

 最後、おまけにトラッキングデータの散布図を。

 J1のみこの走行距離、スプリント回数が計測されています。

 ただ、攻守いずれに割かれた走力なのか、分離不可能なため安易に分析には用いていません。

 

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【参考図2】アタッキング指標rawデータ 散布図行列

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【参考図3】ディフェンディング指標rawデータ 散布図行列

 

 参考図2と3は、可視化に用いたrawデータ(元データ、生のデータの意)の散布図行列です。

 図6まで個々の散布図(加工指標含む)で表していたかと思いますが、それらを縦横行列にまとめて掛け合わせました。

 細かい&小さくて恐縮ですが、気になるスタッツ同士の傾向など、ご覧いただければJ1リーグの傾向を詳細に考察できるかと思います。

 

 ちょっと冗長になってしまいましたが、J1リーグの前半戦振り返りを締めます。

 今季は優勝賞金にDAZNマネーが上積みされており、例年以上にタイトルの重みが増しています。そのためにオフの補強に強気な投資をしたチームも見受けられますが、今季タイトルという目に見える形でその投資回収ができないと、後々のシーズンに足かせとなって尾を引くやもしれません。

 夏の移籍ウインドーはまだ開いているので、そのあたりの投資≒補強があるのかどうか。また、大宮、新潟、広島に続く監督交代があるのかどうか。

 

 データとともに、そのあたりの動向も併せてウォッチすると、優勝争い&残留争いの行方がより面白いものになると思います。

 

 今回はここまで!

 では、また!!

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