【後半戦の行方を占う】2017シーズン J2リーグ前半戦をデータで振り返る
早いものでJ2リーグも折り返し。
週末の第22節のゲームからリーグ後半戦に突入します。
暦は既に7月。夏です。暑いです。。
そう、我らサポーターにとっては、夏の夜の楽しいサッカー観戦シーズンですが、選手らにとっては、そらもうキツい季節。
そうは言ってられないのが、Jリーグの厳しいところで、この夏場に加速するか、失速するかで秋以降のリーグ終盤戦での勝ち点計算や、最後の昇格・残留への勢いといったところに響いてきますから、暑かろうとキツかろうと手を抜いてはいられないのです。
そんなタイミングだということも頭に入れつつ、前半戦全21節のデータが手元に集まったので、ザザッと可視化を眺めつつシーズン半分を振り返ってみたいと思います。
データはご覧の提供でお送りします。
ひとまず分析・可視化は過去エントリで取り上げた昨シーズンのまとめなどに倣って進めたいと思います(基本2軸の散布図押しです)。
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【図1】 パス成功率 ✕ ボール支配率 J2チーム比較散布図
岐阜戦のプレビューでも取り上げた、「パス成功率✕ボール支配率」の散布図。
支配率では岐阜と千葉が飛び抜けていながら、両者ともに今のところは二桁順位ということで、ボールを握る→試合を支配する(キリッ)→でも勝てる訳ではない、というJ2ならではのトレンドは、今季も同様であるという匂いがしてきます。
【図2】攻撃回数 ✕ ボール支配率 J2チーム比較散布図
図2は「攻撃回数✕ボール支配率」の散布図。
ボール支配が攻撃を伴うものなのか、そうではないのか。。
このあたりは前エントリで、大分トリニータの考察でもちょっと触れていたりします。
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岐阜と千葉はポゼ率に比して攻撃も頻度多め。
ただし、攻撃回数最頻なのは、パス成功率断トツ最下位の町田ゼルビアというのも興味深い結果。
パスが繋がらずともお構いなしに攻めまくるゼルビア...
ラインアウトが多め、アクチュアルプレーイングタイムがすこぶる短いという事象との関連も過去エントリで考察していますので参考まで。
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【図3】 攻撃回数 ✕ 攻撃1回あたりのパス本数 散布図
図3が初めてやってみた可視化でして、「攻撃回数✕攻撃1回あたりのパス本数」というもの。
これで分かるのは、攻撃回数が多いか少ないか、その攻撃の手数は多いか少ないか、というもの。
手数をパス本数で表していまして、パスで崩して攻撃を仕掛けるのか、あまりパス本数を掛けずにとにかく攻める(つまり、単純に蹴る)のかを見ようと。
図2まで岐阜と千葉のポゼするフレンズだったのが、図3になるとその間に名古屋が顔を出します。千葉の方が同じ攻撃頻度でも手数は岐阜や名古屋ほどは掛けないよという事。
前エントリで、「あまり攻めていかない大分」について触れましたが、攻撃の頻度は歴然と差があれど、いざ攻撃に移行したときの手数自体は千葉とさほど変わらないという事実が見てとれます。
異端なゼルビアはというと、1回の攻撃あたり、なんとたったパス2本しか手数をかけていない。
これは、平均すると2本のパスで攻撃が終わっているという事でもあり、2本で相手に引っかかることもあれば、2本でシュートまで行けてしまう事もあろうかと言うこと。
【図4】攻撃回数 ✕シュート到達率 散布図
図4は、「攻撃回数✕シュート到達率」の散布図。
攻撃はできていても、シュートまでいけてなければ意味がありません。
ここで注目なのは、突如右端に躍り出てくる首位・福岡。
図3までは馬群の中に埋もれていたのに、シュートというアクション指標を絡めると、こうして抜け出してきますね。
徳島、ヴェルディ、湘南あたりも攻撃→シュートまでの効率性で言えば、割と高効率な印象。千葉も弾数多く攻撃しているわけなので妥当な結果かと。
一方、図3まで右上にいた岐阜と名古屋が福岡とは反対に馬群に飲まれています。どちらもパスで相手を崩し切るスタイルを志向しているので、シュートを打たせてもらえずに攻撃が終わるシチュエーションが多いのかもしれません。
【図5】パス成功率 ✕シュート到達率 散布図
図4をもう少し噛み砕いてみたのが、図5の「パス成功率✕シュート到達率」の散布図。
パス成功率のJ2リーグ平均は71.6%なので、下位でも繋ぐ志向の群馬、金沢より上に位置するチームは比較的パスを繋げるチームと言えるのではないかなと。
その中で首位にいる湘南や福岡なんかは、パス成功率で言えば、群馬、金沢とそこまで大差ないのにも関わらずシュート到達率では開きがあるので、データには見えない効果的なパス、またはパス以外のプレー、崩しのロジック、または違いを生み出す選手の質などが潜んでいそうだなと。
ヴェルディ、徳島、千葉とスペイン系3監督のチームが仲良く右上にいますが、首位湘南よりもパスが繋げてシュートまで行けているのに順位は湘南より下がってしまう背後には、これまた別の要因が隠れているように思えます。
【図6】決定率 ✕シュート到達率 散布図
攻撃に関しては最後の可視化になりますが、「決定率✕シュート到達率」の散布図。
シュートまでいけていても、ゴールを奪えなければこれまた勝つことはできないということで、「結局は決定率だよ」と言いたいところなのですが、そうではないぞ、と。
湘南と福岡はシュート到達率では上位ではありますが、決定率ではむしろ下位なのです(散布図の決定率は枠内シュート決定率)。
FootbalLABにあるスタッツでも、シュート数あたりの決定率では、福岡がリーグ18位、湘南はなんと20位なのです。。
では、福岡と湘南が首位にいる要因は何なのか。。
J2をよく知る方ならば、察しがついているとは思いますが...
【図7】被決定率 ✕ 被シュート到達率 散布図
図6を守備時のものにひっくり返したのが図7。
被攻撃あたりどの程度シュートを撃たれてしまっているか、どの程度失点してしまうかを表す可視化です。
全てではないにせよ、この可視化がJ2で上位に行くためのファクターが詰まっているかなと思っていまして、要するに失点しにくければ上に行ける、という通年通りの傾向が出ています。
勝つことも大事だが、負けないことが一番大事(そんな歌があったような...)。
福岡と湘南が左下、つまりシュートを撃たせず、ゴールも割らせないチームであることが分かるかと。
松本も同じ象限に位置していますが、現在下位に沈んでいるのは攻撃面でパッとしていないからではないかなと。
攻撃では70%以上のパス成功率というのがひとつの指標になっていまして、パスで崩すスタイルであろうとなかろうと、一定水準以上のボールプレーが実現できないとダメだということ。
堅守を誇るも、攻撃がセットプレイ一辺倒では上には行けないんですね。
ここは少し例年と異なる傾向かなと思いまして、名古屋、岐阜をはじめ、スペイン系監督の3チームに群馬など、今季はボールを繋ぐ意識が高いチームが増えたことでパスに関するスタッツの水準が押し上げられています。
昇格に向けて重要な要素として、守備の堅さがまず第一にありながらパス成功率に表れるように、主体的かつ精度を伴ってボールを動かすスキルも備えていなければならないのが今季のJ2。
加えて昇格後、J1での戦いでもこのボールプレーのレベルが備わっていなければ、すぐにJ2へ逆戻りになり兼ねないのが、これまた難しいところ。
首位の福岡、湘南の勝ち点43は、ほぼ例年の自動昇格チームと同じペース(年間80pt台ペース)。
ただ、昨季2位フィニッシュだった清水は昨季同時期勝ち点34でした(最終的には84)。この夏場からの後半戦を猛チャージで走り抜け、終盤の怒涛の追い上げに結びつけた好例です。
今季のJ2はかなりの混戦になっており、この夏場からの後半戦でギアを上げて勝ち続けられれば、昨季の清水の例のように自動昇格争いに躍り出る可能性もあります。
昨季の清水の34ptターンをひとつの目安として、そうしたチームが現れそうか、本エントリで載せたそれぞれの可視化における各チームの位置も見つつ、後半戦の予想を巡らせるのも面白いのではないかと思います。
ということで、今回はこれまで(次回はJ1もやるよ)。
では、また!