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【ジェフ千葉】愛媛FC戦レビュー ~今も残る“オシムの系譜"の最前線にいる監督・間瀬秀一~

  2017明治安田生命J2リーグ 第16節
ジェフユナイテッド千葉 4 - 2 愛媛FC

 得点者:近藤貴司 12' / 乾貴哉 31' / 山本真希 38' / 町田也真人 44' / 近藤直也 65' / 小島秀仁 76'


【公式】ハイライト:ジェフユナイテッド千葉vs愛媛FC 明治安田生命J2リーグ 第16節 2017/5/27

 

 この日、間瀬監督との対戦を楽しみにしていたジェフサポーターは少なくなかったのではないでしょうか。

 (そうか、間瀬さんが千葉を去ってもう10年近くなるのですね。。)

 愛媛の間瀬秀一監督は、かつてジェフで通訳、そしてコーチを務められたファミリーの一員。

 その当時の「ファミリー」の長たる、イビチャ・オシム監督の通訳として、サッカー界外にも広く知られることとなったオシム語録」の“助産夫”でもありました。

 

 語録の周知に寄与した木村元彦氏のベストセラー著書「オシムの言葉」にある間瀬通訳にまつわるエピソードの最後には「俺は監督になる」と記してあります。

 さらに、「オシム監督の言葉を直接聞いて、その考えや教えを識る者として、日本のサッカー界にそれを伝えていかなければならない」という使命にもにた間瀬さんの決意も記されています。

 この本はもう10年以上前に書かれたものですから、市原・千葉時代に監督としてピッチに戻ってくる、という思いが強くあったのだな、と。

 

オシムの言葉 (集英社文庫)

オシムの言葉 (集英社文庫)

 

  

 偉大なるサッカー指導者の隣にいたときから10年以上もの時が経ち、この日かつての師と共にいたジェフ千葉と相対するチームの将として、フクアリのピッチに帰ってきた間瀬監督。

 

 

 試合は千葉が押し気味に推移しかかるも、間瀬さんが「千葉については研究し尽くした」と語った通りの奇襲によって、愛媛が先制。

 さらにセットプレーからあわや2点目かという場面を千葉のGK佐藤優也が横っ飛びで掻き出し難を逃れました。

 

 ヴェルディ戦から数えて3試合連続で先制を許す展開ながら、前節に見せた熱い反攻とは異なる落ち着いた姿勢で反撃に出るジェフ。

 特にこの日、3-1-4-2システムのアンカーに入った佐藤勇人の攻守におけるハードワークが光りました。

 間瀬監督とも旧知の仲である勇人。

 敵将として迎える間瀬さんを意識していたかどうかはさて置き、オシム時代を彷彿とするボール奪取や攻撃参加で、この日は中盤の支配者として君臨。

 30分過ぎに勇人の果敢な攻撃参加から愛媛の守備ブロックに混乱が生じ、最後は清武のクロスにファーサイドから飛び込んだ乾のプロ初ゴールで同点。

 

 

 失点後の落ち着いた態度で戦いを見つめる姿が印象的だった間瀬監督。

 同点にされながら愛媛の選手らには動揺は見受けられなかったものの、ジェフの勢いをいなすような反撃を繰り出せないまま、愛媛は立て続けに失点を許し、前半のうちに試合をひっくり返されてしまいます。

 

 

 

 間瀬監督は後半開始時からこの日先発だった西田に変えて有田を投入。

 その後も積極的な選手交代で後半15分までで全ての交代カードを使い切ります。

 しかし、後半19分にコーナーキックから千葉の近藤に頭で決められて4失点。

 その後1点を返すものの、トータルスコア4-2でタイムアップ。

 

 

 順位では下位の千葉相手に力負けとなった印象が強かった愛媛。

 試合後のインタビューで清々しささえ湛えながら「負けました」と潔さを見せた間瀬監督。 同時に「私が責任を持ってチームを強くしていく」とも。

 采配や立ち居振る舞いは、感情を隠さなかったかつての師とは対照的に終始落ち着いていた印象だった間瀬監督。

 オフに主力選手の多くが前任の木山監督率いる山形に引き抜かれる形で退団し、戦力の大幅ダウンと今シーズンの苦戦を囁かれながら、いざ蓋を開けてみると16節を消化して、7勝3分6敗 勝ち点24の10位。

 この日はアウェイ寄りメインスタンドの最前線から観戦した私の印象としては、負けはしたものの堂々としたプレーぶりを見せる愛媛の選手らを見るに、間瀬監督の仕事に一分の迷いは無いなということが見て取れました。

 

 間瀬さんがオシム監督の通訳を離れて、監督としてピッチに戻ってくるまでの十余年。

 それは、オシム監督がジェフを離れ、日本代表監督、サッカー指導者の現場を退いてから現在までの年数に合致します。

 今日に至るその十余年の間に日本サッカー、Jリーグではオシムと関わりのあるサッカー指導者がそれぞれのチームを指揮。今現在もその息吹というか、名残を見ることができます。

 そんな間瀬監督に至るオシムの系譜”を改めて整理して可視化してみました。

 数量的なデータという切り口ではないですが、監督同士の関係図というか、樹形図のような形でこれまで日本で指導してきた監督とオシム監督との関係性を記してみました。

 

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【図1】オシム監督と関係が深いサッカー指導者の関係図

 

 オシム監督がジェフ市原(当時)にやってきたのが2003年。

 それ以前の経歴は、旧ユーゴスラビアを率いてのワールドカップベスト8をはじめ、古巣のジェリェズニチャル・サラエヴォやシュトルム・グラーツでの欧州チャンピオンズ・リーグ出場、同国内リーグでのタイトルの獲得など、持たざるクラブやチームを勝つチームに育て上げる手腕はあまたいる指導者の中でも随一かと。

 

 オシムの教え子、または指導者として仕事を共にした面々のうち、同郷者としてあげられるのは、“ミシャ”ペトロヴィッチ現浦和監督、大分やFC東京町田ゼルビアでも指揮したポポヴィッチ監督、選手としても名古屋グランパスのレジェンドとなり、ユーゴスラビア代表の10番を背負ったストイコビッチ監督のお三方でしょうか。

 ミシャ監督とはオーストラリア1部シュトルム・グラーツで監督とアシスタントコーチという間柄。オシムがジェフに移ってからは、ミシャ監督がグラーツの監督として後を引き継ぎました。

 ポポヴィッチ監督は現役時代にオシム監督が指揮するグラーツリベロとして活躍。既に30代に差し掛かりながら、読みの鋭さと的確な状況判断でチームを後方からコントロールしたとか。

 ストイコビッチ監督の選手時代については、最早説明不要でしょう。ただ、ユーゴスラビア内戦前後の代表チームにおける内外の微妙な力関係の中で、監督とエースとして共に戦った間柄。オシムを「最高の監督」と賞賛しはばからないピクシーとの絆は、二人にしか分からないものなのかもしれません。

 

 オシム監督がジェフと日本代表で仕事をした2003年か2007年の間、当然ながら日本人の指導者とも関わり合いがありました。

 通訳の間瀬さんとの関係は言わずもがな、当時市原・千葉のアシスタントコーチだった「エジさん」こと江尻篤彦ジェフ千葉コーチは、当時オシムさんからかなり厳しい言葉を浴びせられた一人(以下抜粋)。

 

オシム「お前がこのチームに一番長くいるんだろ。それは聞いた。お前はこのチームのすべてを知っているんだろ?なんでこのチームは勝てないんだ。お前はここで選手、指導者も経験している。なぜこのチームが勝てないのかわからないお前がいること自体がジェフが勝てない理由なんだ。」

 

 いや、これは、キッツいですね(笑)

 あの鋭い眼光でコレ言われたら、次の日から仕事に行きたくなくなりますよね...

 江尻さんは降格した09年途中から2010年のJ2元年でジェフのトップチームを指揮。ジェフの監督になったことで度々メディアからオシム監督時代のエピソードを引き合いに出されたりなどしていたことを思い出しますし、オシムさんから強く影響を受けたということも語っていたかと。

 そんなエジさん、オシム監督が指揮するジェフを離れて05年から一時期アルビレックス新潟のヘッドコーチをやっていました。

 その時の新潟を率いていたのが松本山雅FC反町監督

 反町さんとは北京五輪代表でも監督、コーチとして仕事を共にしています。

 そのソリさんはオシム・ジャパンにおけるコーチとして代表を支えていた一人。

 今も昔も試合後の会見で見せるソリさん独特の皮肉混じりの受け答えなど、どことなくオシムさんの影響を受けているのかなとも思えたり。。

 

 また、直接オシム監督と関わりは無いながらも、間接的に関わっている“孫弟子”ともいえる指導者が現サンフレッチェ広島の森保監督。

 前任のミシャ・ペトロヴィッチ監督の下ではアシスタントコーチを務めていましたから、ミシャを介してオシムのエッセンスが流れている...と思うのは、ちょっと無理がありますかね...

 

 改めてこの“オシムの系譜”を眺めてみると、シュトルム・グラーツからの繋がり、旧ユーゴスラビア代表での繋がり、そしてジェフユナイテッド市原・千葉での繋がりがそれぞれあるのだなと。

 

 ただ、ジェフはご存知の通りオシム監督、アマル・オシム監督の時代の遺産を2017年現在の姿から見出すことはちょっと難しいですし、今季から千葉に復帰した羽生が、「(当時とは)まるで別のチーム」と語っているように、十余年の歳月で何もかも変わってしまったような...

 名古屋にしても、ストイコビッチ体制でリーグ制覇を成し遂げながら、昨季の小倉体制による混乱が尾を引いてJ2に降格。今季、風間体制の下でのJ1復帰をゼロから目指しているという状況。

 

 ミシャ監督が礎を築いたサンフレッチェ広島も跡を継いだ森保監督が2度のリーグタイトルをもたらすなど輝かしい栄光を手にするも、今季は降格圏をさまよう戦いを強いられるなど受難のシーズンを送っている。

 オシム直系指導者と言えるミシャ監督のレッズも、未だミシャ体制ではアジア、そして国内のリーグタイトルがないまま5シーズン目を迎えています。浦和レッズにおいてオシムの名残を見いだせるかと言えば、ジェフでのオシム申し子の象徴・阿部勇樹が第一線で活躍を続けているということくらいかと。

 

 翻って間瀬監督の愛媛FC

 現行の日本人監督としては、唯一のオシム直系指導者に率いられるプロビンチャ

 自身、「オシム超え」を掲げている事から、思いっきり師匠を意識しまくっている青年監督に率いられる愛媛FCが、今季どのようにシーズンを駆け抜けるのか、非常に興味深いです。

 

 おらがジェフ千葉に話を戻しますと、リーグ中盤に入りながら勝ったり負けたりを繰り返し、なかなか波に乗れない状況のまま。

 ただフクアリでの無敗は未だ継続中ですし、試行錯誤を続けるメンバー選考やシステムについても、まずはひとつの解が見いだせそうな感じ。

 

 

 今一度、今季初の連勝ができる権利を得たところなので、アウェイのファジアーノ岡山戦、再来週無敗のフクアリに迎える上位アビスパ福岡との戦いまでで、如何に勝ち点を積み上げられるかによって、苦手とする夏場の星取りの行方、さらには昇格戦線が見えてこようかという感じでしょうか。

 昨季2位で昇格した清水エスパルスを引き合いに出しますと、昨季の同時期はジェフとさほどポイントも順位も変わらなかったです。

 しかし、この夏場を迎えようかという時期から大きく飛躍し、夏場そして秋以降の戦いも勢いを持って駆け抜けたことで、2位での自動昇格を果たしました。

 勝ったり負けたりで一喜一憂してしまうかとは思いますが、今季のエスナイデル・ジェフのスタイルは序盤にして既に明確になっているように、リスクを冒し、アグレッシヴに攻めきるというもの。

 奇しくもジェフを異端なスタイルでタイトル争いを繰り広げるチームに押し上げたオシム監督も「リスクを冒すことを恐れるな」と説いていた事を思い出さずにはいられません。

 1試合あたり1点奪われるのは当たり前。2点、3点取って勝てばいいというような“殴り合い上等なサッカー”が面白くないわけがない。

 この愛媛とのゲームも、土曜のデー・ゲームながら観客動員数は7,000人台という寂しいものでした。何とか今季ジェフが繰り広げるサッカーの面白さがホームタウンに伝播し、リーグ中盤から終盤にかけて動員数が増えていくことを願わずにはいられません。

 

 

football-data-visualization.hatenablog.com

 

 リーグの折り返しが見えてきましたので、前半戦のデータによる振り返りを準備しつつ、時間の許す限りホーム・フクダ電子アリーナへ赴いてジェフをサポートしていきたく。。

 勇人や羽生らの活躍に“オシムの風”を感じるのも善し、エスナイデルの風”、「パシオンの嵐」に身を任せて踊るも一興かと思います。。

 

ではまた、フクアリで会いましょう!

WIN BY ALL!!

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