【海外サッカーはデータも最高峰】欧州リーグ 16-17シーズンをデータで比較
19日、UEFAチャンピオンズリーグは準々決勝第2戦を終え、4強 が出揃いました。
ROUND16でPSG相手に奇跡の逆転を見せたバルセロナでしたが、アッレグリ監督率いるユベントスを破ることができず、このベスト8で姿を消すことに。
バイエルン・ミュンヘンはレアル・マドリーに、ドルトムントはモナコにそれぞれ破れ、ブンデスリーガのチームも姿を消すことに。昨季のプレミア王者レスターを下したアトレティコ・マドリーを加えた4チームでセミ・ファイナルに臨みます。
私自身は今年からDAZNに加入しまして、ラ・リーガやブンデスリーガなどの試合、それもメガクラブ以外のチーム同士による試合も観られるようになり、これまでJリーグをメインに見ている身としては、なかなか刺激的で一層フットボールに浸れる日々を送っています。
サッカーについての関心は、観るものを魅了するプレーもそうですし、戦術のせめぎあい、球際の激しい攻防も大きな見どころですが、私のひそかな注目ポイントは、やはり「データ」。
主にJリーグを中心にデータを漁る日々を過ごしていますが、少しずつ欧州のリーグ、大会のデータ/スタッツにも触れていこうと思っています。
今回はシーズン終盤に差し掛かっている欧州リーグについてのデータをいくつか可視化しまして、各国のリーグでどのような傾向、特徴があるのかをザッと見渡せればと思います。シーズン終了後に再び分析をするための予行演習ということで...
データはご覧の提供でお送りします。
◆https://www.whoscored.com/Statistics
概ね、Jリーグに比べて欧州リーグのデータ/スタッツは項目も多く、細かくプレーを定義してデータを取得している印象があります。
今回データ引用元にした「whoscored」 もそうしたデータサイトのひとつで、使いやすさが特徴かなと(元データはOpta sportsのもの)。
今回は、「Team Statistics」という項から、欧州の五大リーグ、即ちイングランド1部・プレミアリーグ、ドイツ1部・ブンデスリーガ、スペイン1部・ラ・リーガ、イタリア1部セリエA、フランス1部・リーグ・アンの全98チームの各データを集め、一挙に可視化をしてみました。
Jリーグのものよりも詳細なデータがありますが、今回はプレ分析的に分かりやすい項目について、5つのリーグ間の比較をしていきたいと思います。
【図1-1】欧州5リーグ一覧 ボール支配率 ✕ パス成功率 散布図
【図1-2】欧州5リーグ別 ボール支配率 ✕ パス成功率 散布図
まずは、Jリーグでも可視化したことのある2軸の散布図を。横にボール支配率を、縦にパス成功率です。
図1-1は98チームすべてをひとつの図にプロットしまして、リーグ毎に色を分けています。
右上には、バイエルン・ミュンヘン、マンチェスター・シティ、パリ・サンジェルマン、そして今季注目を集めるセリエAのナポリといったリーグも様々ながらボール保持に優れたチームが居並びます。
図1-2でそれをリーグ毎のカセットに分けまして比較しやすいようにしてみました。
左から、ブンデスリーガ、ラ・リーガ、リーグ・アン、プレミア・リーグ、セリエAの順。
リーグ毎に分けると、そのリーグの傾向が透けて見えてきます。ブンデスリーガはバイエルン・ミュンヘンだけ右上に突出しているのが分かりますし、リーガもレアルとバルサ、そしてラス・パルマスがちょっと右上に浮いている。リーグ・アンはパリ・サンジェルマンとニースが同様の傾向。
反対にボール保持でビハインドなチームは左下に沈んでいるわけですが、特にブンデスリーガとプレミアでそうした顕著なチームが見受けられ、全体の分布も長く間延びしたような形に見えたり。反面、リーグ・アンやセリエAはさほど間延びした分布にはなっていません。
【図2-1】欧州5リーグ一覧 被シュート数 ✕ シュートブロック数 散布図
【図2-2】欧州5リーグ別 被シュート数 ✕ シュートブロック数 散布図
今度は守備のデータから被シュート数とシュートブロック数の1試合平均のデータを抜粋、散布図にしてみました。この「ブロック」という守備アクションは他にもクロスやパスのブロックもあるなど、Jリーグには無いスタッツでして、深掘りしてみるとチームの守備の特徴が見えるやも...と思えたり。
こちらも相関関係に近い ような分布の形でして、打たれる数が多いチームは当然シュートブロックの頻度も多くなりますね。
右上に布置するのは先ほどとは代わって、どちらかというとリーグ下位のチーム。
図2-1ではプレミアのバーンリー、ハル・シティ、サンダーランドなどがいますね。
図2−2で図1−2同様リーグ毎のカセットに分けて可視化。
特に縦軸の「シュートブロック」で特徴的なのはプレミアとセリエAが他の3リーグに比べてやや平均値が高いかなという印象。プレミアは前述の3チームのように頻度多くブロックをするチーム対して、リバプール、シティ、チェルシーのような上位チームはむしろブロック数は低め。そもそも被シュートの頻度が少ないということも影響しているのでしょう。
【図3-1】欧州5リーグ一覧 シュート数 ✕ 枠内シュート数 散布図
【図3-2】欧州5リーグ別 シュート数 ✕ 枠内シュート数 散布図
攻撃と守備と、行ったり来たりですいません。。
今度はシュート数と枠内シュート数との散布図。シュートも被シュートも同じ「Shots」という項目名でややこしいのですが...
図1と似てボール保持で優位なチームもあれば、トッテナムのようにさほどボール保持で突出したチームでなくとも、シュート数のスタッツが高くなるチームも表れてきます。
図3-2でリーグ別に可視化すると、如実に分かれるのがまた面白いところ。
ラ・リーガは、自明の通りレアル・マドリーとバルセロナが突出。
リーグ・アンでは、モナコが浮上してきますし、プレミアではトッテナムの他にユナイテッド、リバプールなどが上がってきています。さらに言うとプレミアは分布がふたつに分かれているようにも見え、平均シュート16本・枠内6本程の上位群と、同11本・3〜4本くらいの下位群に二分されています。
セリエAもプレミア程では無いにしろ、やや二分傾向に見えなくもない。ここでもナポリが突出して高いシュート/枠内シュートのスタッツを叩き出しています。
【図4-1】欧州5リーグ一覧 タックル数 ✕ ファウル数 散布図
【図4-2】欧州5リーグ別 タックル数 ✕ ファウル数 散布図
再び守備のスタッツから、タックル数とファウル数の散布図。
Jリーグでは(データスタジアムでは)、「ファウル数」というカウントは無く、相手のFK数のようなリスタートのカウントに置き換わっているので、純粋なファウル(これはハンドなどの反則は含まない)としてカウントされているのは、微妙ながら気が利いたスタッツと言えるかと。
これまで見てきた分布の形とは一変していて、必ずしもタックル数の多さがファウル数の多さに比例しないチームも見えてきます。
レアル・マドリー、レアルよりややファウルが多くなるもののタックル数で上回るアトレティコ・マドリーなんかは、タックル数が多い割にはファウル数はさほど多くないチームの典型例。
レアルと同じタックル数でも、レガネスやハンブルガーSVに比べれば、平均して6〜7つほどファウルが少ない。
技術的に優れた選手を揃えるレアルのようなビッグクラブは、ボールプレーに優れているだけではなく、ボールを奪うというプレーについてもファウル無しに奪うことができるという事の示唆になるかと。
リーグ別にしてみると、よりそのリーグの傾向が顕著で、ブンデスリーガはややファウルが多い傾向いあり、プレミアは顕著に少ない。これは特にプレミリーグではファウルをあまり取らずにプレーを流す傾向にあると言われている事がそのままデータでも出たな、と。
意外に思えたのが、ラ・リーガにおけるタックル数の多さ。分布がやや右寄りになっていることがお分かりいただけるかと。実はなかなか球際の激しいリーグということが言えそうです。
【図5-1】欧州5リーグ一覧 タックル数 ✕ インターセプト数 散布図
【図5-2】欧州5リーグ別 タックル数 ✕ インターセプト数 散布図
同じく守備のデータから「インターセプト数」を、先ほど図4の縦軸ファウル数に代えてクロスしてみました。
これもまた、線形の関係性ではない分布の形になっているのが分かるかと思います。
左上にいるフランクフルトは、タックル数が少ないながらも、インターセプト数はやたらに高い。同じブンデスリーガのライプツィヒなんかは、タックル数もインターセプト数もどちらも高いという特徴が見えたり。
リーグ別に見てみると、ブンデスリーガが異様にインターセプト数が多く出ていまして、何故このようなリーグ間の差異が出るのか、そこまでブンデスリーガと他の欧州リーグを見比べている訳でも無いため分からずでして(誰かご存知ですか?)...
フランクフルト同様にセリエAのアタランタもタックル数が少ない一方でインターセプト数がやたらに高い。フランクフルト同様チーム戦術、ディシプリン(原則・規律)として、タックルをあまりやらずに守るという方針が表れているのでしょうか。
【図6-1】欧州5リーグ一覧 トラップミス数 ✕ ボールロスト数 散布図
【図6-2】欧州5リーグ別 トラップミス数 ✕ ボールロスト数 散布図
最後のスタッツ、「トラップミス数」と「ボールロスト数」。それぞれ、「Unsuccessful Touches」、「Dispossessed」という聞き慣れないスタッツでして、噛み砕いてみると、成功しなかったボールタッチ→トラップミス、ポゼッション/ボール保持を失効する→ボールロストとして解釈してみました。
後者はネガティブ・トランジションでもいいかなとも思いましたが、ニュアンス的にミスからボールロストをするということなのかなと思い「ボールロスト」としてみました。
右上に布置するほど、ミスからのボールロストが多いということ、左下はミスがなくボールロストも少ないという傾向と読み解けるかと。
図6−2でリーグ別に分けてみると、これまたリーグにおける特徴が見えてきまして、ブンデスリーガにおけるミス→ボールロストが他のリーグに比べて少ないという事がお分かりいただけるかと。
これは、図5のタックル数のデータも影響していて、タックルよりもインターセプトが多かったブンデスリーガでは、積極的にボールを狩りにいくというアクションが他のリーグほど頻度が多いわけではないのかなと。
タックルが多めだったラ・リーガはブンデスリーガに比べると、タッチミスからのボールロストが多い傾向にあるかと。ただ、ラ・リーガよりタックル数で高い訳ではなかったリーグ・アンの方が、ラ・リーガに比べてタッチミス、ボールロストが高い傾向にあるということは、ボールプレーにおける技術の優劣が透けてみえているという事なのでしょうか。
ミスに関するデータもきちんと揃っている事でチームの弱点、課題が分析しやすいのではないかなと思えたりしたスタッツでした。
ざっと俯瞰してみただけでも、色々と興味が掻き立てられる欧州サッカーシーンのデータ。
各リーグの16−17シーズンもチャンピオンズリーグも佳境に入ってきており、優勝争い、または降格争いが熾烈を極めてくる季節。
再びシーズン終了後にそのあたりの要因分析を、この豊富なデータでもって考察をしていければなと思いました。
では、また!