サッカーをデータで視てみよう

サッカーに関するあらゆるデータを可視化してみるブログ

【ジェフ千葉】湘南ベルマーレ戦プレビュー ~データから見える新旧ハイプレス・スタイルの相似と相違~

   2017 明治安田生命J2リーグ 第4節

松本山雅FC 3 - 1 ジェフユナイテッド市原・千葉

得点者:24' 田中隼磨 / 46' 55' 高崎寛之 / 72' 清武功暉 


【公式】ハイライト:松本山雅FCvsジェフユナイテッド千葉 明治安田生命J2リーグ 第4節 2017/3/19

 

 おらがジェフユナイテッド市原・千葉、第4節にして今季初黒星を喫す。。

 強かなる反町・山雅のやりたいように試合を運ばれ3失点。

 この日はピッチに水を撒かず、ボールの勢いを殺す芝に仕立てて、ジェフ側の裏のスペースに飛ぶボールが止まるように仕組んできたことなど、勝つためなら細部にまで神経を張り巡らせて拘り抜く反町監督の丁寧な仕事の成果を見せつけられる結果に。

 ハイラインの裏を突く際は、サイド奥のゴールキーパーが飛び出せないエリアに的を絞り、引いて守る際は木山監督の山形をトレースして、ジェフにスペースを与えないように帰陣して待ち構えることを徹底。 

 前線からの守備では、ジェフ側のビルドアップ時のポジション優位性に対し、プレスの掛け方とチェックすべき相手を整備することで、スムーズなボール前進を規制。

 パス・スタッツの上では、ジェフ側にさほどミスが起きたようには見えませんでしたが、プレスが厳しくなかった前節に比べれば、ビルドアップに費やすパスワークと動き直しに労力を割かれてボール前進のテンポアップが阻害されたように感じました。(ゾーン別パス・スタッツ比較↓)

 

 

 失点シーンのセットプレー2失点については、ジェフ側の守備の拙さもありながら、パウリーニョに代わってボランチで出場した宮阪選手の高精度なキックを褒めるべきかなと思っています。(もちろん自分たちが反攻仕掛けるべき時間帯にセットプレーを与えてしまうなど、流れを相手に渡してしまった試合運びの悪さは猛省してもらいたい)

 この日は新加入のキム・ボムヨン指宿洋史が後半から途中出場。二人に対しては、これからもっと連携面やエスナイデル・ジェフの特殊な戦術を早期に吸収していってほしいなと。

 ボールを握っているときは、引いた相手を崩し切れない課題はそのままも、これまで通り球際の局面などで高い質を随所に見せていましたので、やり方をブレさせることなく、この試合で出た課題や相手の対策を踏まえて、ひとつずつ進化していければいいかなと。

 

 さて、アウェイ連戦の2戦目は、私的昇格候補筆頭・湘南ベルマーレとの一戦

 豊富な走力をベースに球際の攻防における切り替えと状況判断のスピードで相手を圧倒するアグレッシヴ・サッカーを見せるチームを熱き指揮官・チョウ・キジェ監督が率います。

 ある部分で湘南ベルマーレは、今季のジェフ千葉が目指すべき要素を高いレベルで実践している相手かなと思います。

 本プレビューでは、そのあたりを千葉・湘南両者で「似ている部分」はあるか?について考察できればなと。

 

 データは、ご覧の提供でお送りします。

www.football-lab.jp

 

【表1】ジェフ千葉湘南ベルマーレ 選手出場記録 比較(第4節終了時)

f:id:knovocelic:20170324101705p:plain

 

 第4節を終えた現在、両チームの出場選手は上記のようなメンバーになっています。

 色を付けた選手はここまで全試合にスタメン出場している選手。さらに太字で記載している選手はフル出場を続けている選手になります。

 GKを除くと、千葉は、北爪(WB)、多々良(CB)、アランダ(DMF)の3人

 湘南は、アンドレ・バイア(CB)、杉岡(CB)、山根(CB)、高山(WB)の4人

 ざっと見比べてみて、スタメン&フル出場しているのは、DFなど後方のポジションの選手が居並ぶのは千葉も湘南も一緒。

 すなわち、中盤より前の選手は、わずか4節の間で入れ替わっているということになります。

 勿論、その理由はコンディション不良や負傷欠場、相手との相性など戦術的理由があるでしょうが、千葉と湘南に共通する要素として、前線の選手は守備の局面で「ハイプレス」を掛ける役割を担っているため、走力面での負荷が大きい事があげられるかと。

 この前線の選手起用の入れ替わりは、湘南に関して言いますと一昨年の15年1stステージのデータを見ただけでも、あまり選手を固定せず入れ替えながらリーグ戦を戦う傾向が他のチームよりも顕著でした。

 一昨年、Jリーグのトラッキングデータ・コンテストで「走力と勝敗の考察」という分析を行った際、当時J1で比類なき走力を誇った湘南について、様々データを漁っていたのでよく覚えています。

 その時と今季と傾向が似ているかどうかは、もう少しシーズンが進んできてからもう一度データを見てみないと何とも言えませんが、チョウ・キジェ監督がほぼ一貫したスタイルを継続させていることから、選手起用(ターンオーバー)についても同様の傾向を踏襲させているのではないかと推察されます。

 

football-data-visualization.hatenablog.com

 

 一般的に、後方の守備を担う選手は、連携面と安定感が求められるために入れ替えにくい面もあると思いますが、走力面での負荷も前線の選手に比べればそれほど大きくないと言えなくもない。

  ただ、今季の千葉、そして湘南に関しては、両者事象は異なるも、ディフェンシブな選手にも走力面での負荷が求められるスタイルをそれぞれ実践しており、シーズンが進んできて最終ラインやWBの選手の入れ替えがいつ起きるかなど、今後もウォッチすべきポイントのように感じます。

 まず千葉に関して走力面の負荷が高まる事象として、ハイラインのコントロールと被攻撃時に裏のスペースのケアに後走させられるケース、つまり抜け出された相手選手とボールを追走すべく自陣方向へのスプリントを強いられる局面が多いかなと。

 一方、湘南の最終ラインはというと、下記図で詳述していますが、主に積極的な攻撃参加で味方を追い越すスプリントが、走力の負荷を高める事象として多く見受けられます。 

f:id:knovocelic:20170324113016p:plain

【図1】 湘南ベルマーレ CBの攻撃参加によるサイドでの数的優位の創出

  

 ロジャー・シュミット前監督が率いたブンデスリーガレヴァークーゼンに影響されたと語るチョウ・キジェ監督が植え付けた湘南版「ゲーゲンプレッシング」に代表される、前線からのボール奪取を狙った積極的なハイプレスを特徴としている湘南ですが、私が気になったのはむしろボールを握ってからの崩しの部分。

 図1でその湘南の崩しのロジックを、パス交換のスタッツと並べて詳述したいと思います。 

 湘南は、ハイプレスで相手のビルドアップを破壊し、ボールを奪ってからの切り替えも恐ろしくはやく、相手の守備陣形が整う前に縦へボールを運んで一気にゴールを目指す反転攻撃をセオリーとしつつも、相手が素早く帰陣しブロックを組んだ守備網を崩す際は、後方の選手の積極的な攻撃参加で数的優位を作って崩し切ろうとします。

 図で詳述した、特に左サイドの崩しでは、CBのルーキー杉岡がWBの高山を追い越すシーンが散見されます

 パス交換のスタッツで黄色く色付けたのが、そのCB杉岡がパスの出し手・受け手として絡んでいる項になりますが、TOP10の組み合わせのうち、実に6項でこのCB杉岡が登場します。

 私が注目したのは、CB杉岡とWB高山、ボランチ秋野とのパス交換。

 このスタッツは選手間のパス交換数を表すだけで、前後左右どちらの方向に出されたパスかは分かりません。ただ、DAZNの映像などと見合わせていただくと、図のような形で積極的に前線に進出するCB杉岡にボールが渡るシーンを数多く見ることになると思います。

 そして、このCB杉岡がボールに絡むのが主に左アウトサイドでの崩しの場面になります。

 左サイドのWB高山はスプリント時のスピードは勿論、ボールを持って仕掛ける能力でも質的優位性を持っていて、彼が相手のSB、またはWBを引きつけて時間を作り、杉岡がそれを追い越してボールを引き出し、相手のCBを外に引っ張り出すなどのタスクを遂行します。

 右WBの奈良輪よりも左の高山の攻撃性能を活かそうという狙いが、秋野、高山、杉岡ら左サイドにポジションする選手らのパス交換スタッツが上位に表れていることからも透けて見えてきているかと。

 また、高山がタメを作る際、相手ボランチが挟みに出てきた背後のスペースをシャドーの山田が突いてボールを引き出すなど、アウトサイドのオープンスペースとインサイドのハーフスペースをそれぞれCBとシャドーが突いて、相手の守備網を動かして穴を作るべく攻撃を仕掛けます。

 パス交換スタッツ上位には出てこなかった山田ですが、組み立てというよりも攻撃の最終局面、フィニッシュに絡んで仕事をこなす選手なので、出し手としても受け手としても千葉を悩ませる選手になるかと思います。

 CB杉岡は高卒ルーキーとは思えない屈強なフィジカルを有し、またシャドーの山田は中盤で自由に動いて前後のリンクマンとしてボールを動かす役目を連続的にこなすことができます。

 いずれも、状況判断が非常にはやく、特にCB杉岡は後方の持ち場を放棄して攻撃参加しているのに、迷いなく縦へ仕掛ける様を見るに、チョウ監督のアグレッシヴな姿勢が18歳の新人選手にも既に浸透していることが伺えます。

 ただし、25日の対戦では、このCB杉岡はU-20代表合宿に追加招集されたため、不在に(ここまで書いてきて、前日となった今になって気が付いた...)。

 とはいえ、後方からの積極的な攻撃参加は湘南の特徴。右CBの山根も頻度は少ないながら積極的に上がってくるので、ここの数的優位を作られた時にうまく対処できるかが、千葉の守備の注目点になるかと思います。

 

 

 守備と攻撃、事象は異なりながら、千葉、湘南共に最終ラインの選手と言えど、それぞれ走りにおけるハードワークが求められるスタイルのぶつかり合いになりそうです。

 

 そんなアグレッシヴなスタイルを実践する両者で共通する大きな課題が、試合終盤の運動量低下にあるのかなと。

 残念ながら、J2はトラッキングデータが公開されておらず、運動量に直結する純粋なデータが分からないため、いつの時間帯からどの程度チームとして運動量が落ちているかは、ファクトとしては分かりません。

 下記の図2と3で時間帯別のボール支配率とシュート数/被シュート数を可視化しまして、運動量とは異なるものの代理指標として、推察を試みました。

 

f:id:knovocelic:20170323182005p:plain

【図2】 ジェフ千葉 時間帯別平均ボール支配率とシュート数/被シュート数の推移

 

f:id:knovocelic:20170323182055p:plain

【図3】 湘南ベルマーレ 時間帯別平均ボール支配率とシュート数/被シュート数の推移

 

 図の見方は横軸に15分刻みのタイムゾーンを取り、右方向が時間経過の方向になります。青い帯グラフがここ4節までの平均ボール支配率、薄いグレーがシュート数、濃いグレーが被シュート数で各時間帯における発生数の平均になります。 

 現在、リーグ2位の平均ボール支配率を記録するジェフ千葉は、90分を通してボール支配率が50%を下回る時間帯がありません。

 まだ4節なので、一時的な傾向という見方もできそうですが、山形や前節の松本山雅が後方に引いて、千葉との中盤でのボールの奪い合いを放棄した戦い方を採用したことも作用してのスタッツかな、と。

 シュート数、被シュート数も軒並みどの時間帯も2~3本ほど打てているし、打たれてもいる。ただ、被シュート数が時間経過とともに緩やかに増えている傾向が見受けられ、ここが走力・運動量の低下、守備のインテンシティが落ちていることの示唆なのかなと。

 

 一方の湘南はと言うと、同じハイプレスの千葉と比較して、各スタッツの浮き沈みが激しい。「!」のアラートマークで記した時間帯が、攻守両面で顕著な傾向にある箇所です。

 まず、序盤の15分は平均約60%のボール支配率を記録連動してシュート数もこの時間帯だけで4本も放ち、被シュート数はわずか0.5本

 試合開始からトップギアでボールに襲いかかり、ゴールを陥れるべく攻撃を絶え間なく繰り出しているのかなと。

 しかし、15-30分頃となるとボール支配率はほぼイーブンの50%まで落ち込み、その後再び盛り返して50%台後半で推移。

 注目は、終盤15分のスタッツで、平均ボール支配率は50%を下回り、相手にボールを持たれて攻め立てられるシチュエーションとなるのかなと。この時間帯ともなると、チームの運動量が落ち、後方にブロックを構えて守備をするのが湘南のここまでの戦い方のように思えます。

 ただ、この時間帯でもシュート数は平均3本を数え、終盤のオープンな展開となっても、カウンターなどで相手ゴールを脅かしていることを示唆しています。

 

 次に、両者ともに消耗の激しいスタイルであるので、交代選手の起用法もひとつの指標になるかなと思い、まだ4節までではありますが、エスナイデル監督、チョウ監督のこれまでの交代カードの使い方を下記に比較してみます。

   

f:id:knovocelic:20170323182112p:plain

 【図4】ジェフ千葉スナイデル監督の交代カード毎投入時間分布

 

f:id:knovocelic:20170323182122p:plain

 【図5】湘南ベルマーレ チョウ監督の交代カード毎投入時間分布

 

 4節までですが、図の左から交代カードの1枚目、2枚目、3枚目について、交代時間の分布を縦線で表しています。

 縦軸に90分のタイムスケールを取り、縦線の下部が各カードで最も早く交代選手を投入した時間で、上部が最も遅かった時間。中断の赤字が平均値になります。

 湘南は第2節の前半30分に負傷交代のカードを切っていましたが、1枚目の交代選手は、概ね後半開始10分以内に投入している。

 千葉のエスナイデル監督も、平均すると同じく後半10分台には1枚目のカードを切る模様。

 2枚目の交代カードも千葉、湘南ともに似通っていて、後半30分より前の20分台には投入。3枚目も同じく後半残り5分前後には使い切るようです。

 

 他のチーム・監督がどうなのか、一度比較してみたいなと思いますが、千葉と湘南、共にハイプレス・スタイル故なのかは分かりませんが、交代カードの使い方はデータ上では偶然にもとても似ているようです。

f:id:knovocelic:20170324132015p:plain

【図6】ジェフ千葉 第5節湘南ベルマーレ戦 予想スターティング・メンバー

 

 キックオフは、25日の16時。

 千葉、湘南ともに若干のメンバー変更がありそうではありますが、システム/フォーメーションは共に3バック+WBという形になるのかなと。

 新加入のキム・ボムヨンは松本戦途中から変則4バックの左をやっていたり、体格や適性的にWBもCBもできるのかなと。

 また、松本戦途中からインサイドハーフ(インテリオール)にポジションを移してから、スピードに乗ったドリブルで好機を作っていたサリーナスをスタートからこのポジションで起用するのではないかと思います。

 やはりWBの裏、特にサリーナスのサイドを松本戦は攻め立てられたようにも見えたので、そのままサイドに置いて穴を作るより、彼の攻撃力を活かすのであれば、よりゴールに近い位置での起用が総合的には良いかもしれない。

 

 対する湘南は詳述にあげたCB杉岡が不在(いや~千葉戦で見たかった...)。

 シャドーも山田はそのままも、齊藤か表原か、はたまた別の選手かはちょっと読めず。ワントップはジネイが愛媛戦で好調でしたからそのままかなと。この位置は元ジェフ千葉藤田祥史もいますし、いずれにせよCFのポストプレーは湘南のスピードに乗った攻撃のアクセントとしても機能しているので、ジェフとしては自由にやらせる訳にはいかない。

 千葉のハイライン裏を突くひとつの解として、反町監督が暴いた対角のアーリークロスでGKが届かないサイドのスペースにボールを送るというやり方を、湘南も執ってくるのか。

 ここまでの湘南の試合を映像で見る限りは、縦の長いボールやドリブルによるボール前進をしてきている印象。それと、セカンドボールへの反応がとても早く、球際での執着心もこれまで対戦した4チームに比べてもその速さ、強さは随一でしょう。

 千葉もセカンドボール・ワークの強さには特徴があります。ただ、ここまではやや多めになっているファウル、カードを減らしていく工夫が要るようにも思います。

 予想されるのは、序盤から激しい球際での奪い合いが展開されること。双方、トランジション/攻守の切り替えにおけるプレースピードと状況判断の早さが求められるでしょう。

 

 湘南のチョウ監督は、松本山雅のように相手に合わせて特徴を封じにくるというよりも、真っ向自らのスタイルでぶつかってくるでしょうから、ジェフとしたら今のハイライン&ハイプレス・スタイルが前節よりハマりやすいでしょうし、自らのスタイルがどこまで通用するか試す上でも最上の相手。新旧ハイプレス・スタイルがぶつかり合うエキサイティングな試合になりそうです。

 難敵とのアウェイ連戦といえど、連敗は避けたい一戦。

 勝ち点を持ち帰って再びフクアリに帰ってこられるように、熱い応援を送りたいと思います。

 では、また!

 WIN BY ALL!!

当サイトは、Amazon.co.jpを宣伝しリンクすることによって、サイトが紹介料を獲得できる手段を提供することを目的に設定されたアフィリエイト宣伝プログラムである、Amazonアソシエイト・プログラムに参加しています。 このプログラムにおいて、第三者がコンテンツおよび宣伝を提供し、ユーザーから情報を収集し、訪問者のブラウザにクッキーを設定することがあります。プログラムにおいて情報の扱いについてはAmazon.co.jpプライバシー規約をご確認ください。
◆Amazon.co.jpプライバシー規約