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【ジェフ千葉】2017シーズン開幕戦プレビュー ~谷澤のキープよりウザい相馬ゼルビアの罠~

 2017明治安田生命Jリーグ 開幕!!

 今週、2月25日(土)、26日(日)の各第1節をもって2017年のJ1、J2両リーグが開幕します。

 最高の週末がある日常がやってくる!!

 今シーズンの最大のトピックは、衛星放送のスカパー!からインターネット配信のDAZNへ試合中継の環境が変わること。それに伴い、Jリーグの放映権とその契約金との絡みから、リーグの優勝賞金も大幅に増額されており、今シーズンのタイトル獲得は過去のシーズンよりも「重い」意味を持ちそうです。

 勝てる者は富み、強き者はより強くなる。一方、敗れ去る者はその恩恵にあずかれず、没落していくのか... 

 勝てる者とそうでない者との間に横たわる格差は、クラブ体力≒資金力の面においてこれまで以上に拡大していくのではないかと想像できます。

 

 さて、おらがジェフユナイテッド市原・千葉は、今シーズンもJ2の舞台で昇格を目指すべく出陣いたします。

 最初の相手は、FC町田ゼルビア

 アウェイ・町田市陸上競技場へ赴いての開幕戦になります。

 町田ゼルビアは昨季7位とPO圏内まであと1歩と迫った首都・東京のプロビンチャ。率いる相馬直樹監督は、J3時代から数えて4シーズン目の指揮になります。

 町田というと、かつてジェフ千葉に所属していた戸島章、碓井健平、そして「俺たち、ジェフ!!」の生みの親、ヤザーこと谷澤達也が所属。

 彼らとの再会もまた楽しみのひとつではありますが、シーズン開幕戦は絶対に落とせない。。譲れない一線が彼らとの間には引かれていることもまた忘れてはなりません。

 

 見どころ多い開幕戦ですが、本エントリでは、「データ」から町田戦の見どころにフォーカスしてプレビューをお届けします。

 データはご覧の提供でお送りします。

サッカーをデータで楽しむ | Football LAB[フットボールラボ]

 

 肝心のデータ、ですが当然ながら今節はまだ開幕前なので、自ずと昨シーズンのものからのプレビューになります。ウチに関しては、昨季の関塚体制、その後の長谷部監督代行の時期から今季就任したエスナイデル監督の志向するスタイルとで、かなーりやり方に違いがあるので、ほとんど参考にはならないかと思います。

 ただ、町田ゼルビアさんは引き続き相馬監督が指揮を執りますし、メンバーも大幅に入れ替わった(Revolutionした)わけではない。

 よって、町田側の傾向や戦術面でのセオリーはある程度昨季をベースにトレースしたものと推察されますので、本エントリでのデータ分析・可視化もある程度の説明力を持った参考にはなるかなぁ、と勝手に思っています。

 

 さて、そんな町田ゼルビア。まず下記のスタッツからお送りします。

 町田ゼルビアというチームがかなり特殊、というか異質に見えると思います。

 

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【図1】2016シーズン J2チーム別アクチュアル・プレーイングタイム

 

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【図2】2016シーズン J2チーム別アクチュアル・プレーイングタイム(降順ソート) 

 

 「アクチュアル・プレーイングタイム」とは、簡単に言えば実際にプレーしている時間、試合が動いている時間のことです。

 詳しくは、下記Jリーグのサイトに詳しいですので細かな説明は下記に譲ります。

最新データ 「+Qualityプロジェクト」:About Jリーグ:Jリーグ.jp

 

 このアクチュアル・プレーイングタイムのデータは昨季一度確認していまして、その時から町田ゼルビアの傾向は気になっていたのですが、ここまで露骨に特徴が出るとは...と、今回の分析をしてみて思った次第ですので、以下順を追って解説していきます。

 

football-data-visualization.hatenablog.com

 

 グラフの見方に戻りますと、図1がそのアクチュアル・プレーイングタイムの各チームの数値で、単位は「分:秒」。左から昨季の最終順位で並んでいます。図2はそのアクチュアル・プレーイングタイムが長い順に左から並び替えたもの。千葉、町田、そしてリーグ平均は色を変えてハイライトしています。平均すると、J2はおよそ52分弱(千葉は54分くらい)。

 ご覧のように、町田ゼルビアのアクチュアル・プレーイングタイム、顕著に「短い」んですね~。最長の清水との差は実に10分!!

 10分長く試合が動いているのと、同じ10分プレーが止まっているのとでは同じサッカーの試合でも観ていて相当印象が異なってくると思います。

 

 さて、これはどういうことなのか。

 キックオフの笛からタイムアップの笛まで90分とアディショナルタイムの3~5分が試合時間です。その間、試合が止まるシチュエーションはというと、ひとつはラインアウト。ボールがライン外に出て、再びリスタートされるまでの間はプレーをしていないと思います(実際は陣形を整えたり、コーチングしたりなどオフプレーも重要だったりする)。

 もうひとつはレフェリーの笛であり、笛が吹かれるプレー、ファウル等の反則行為ですね。

 町田ゼルビアのこのあたりのデータをそれぞれ重ねてみてみたのが、下記。

 

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【図3】FC町田ゼルビア戦績別 アクチュアル・プレーイングタイムとラインアウトの関係

 

 まず、ラインアウト→リスタートとアクチュアル・プレーイングタイムとの関係を、昨季町田の戦績別に分けて可視化してみました。左が町田の勝利時、真ん中が引き分け時、右が敗北時で棒グラフがそのアクチュアルプレーイングタイムの長さの平均値。

 引き分け時がもっとも短くはありますが、勝敗で比較すると、アクチュアル・プレーイングタイムの傾向としては、勝利時<敗北時となっている。

 つまり、実際にプレーする時間が短い試合の方が、町田の勝ち試合になる傾向にあるということ。

 プレー時間が短くなるということは、プレーが止まる事象、ここではラインアウトとしましたが、それを町田のクリア数、そして相手のスローイン回数として読み替えて同スタッツを重ねてみると、やはりというべきか、勝利時>敗北時という傾向が見えてきます。

 

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【図4】FC町田ゼルビア戦績別 アクチュアル・プレーイングタイムとファウル数の関係

 

 同じく「ファウル→笛・プレーが止まる」という事象を、町田のタックル数、相手の直接FK数で表してみると、これも勝利時>敗北時という傾向に。

 

 ここまでの分析、可視化で見えてきたことを考察すると、町田ゼルビアはクリアやタックル(ファウル)によってプレーを切る/止めることで、相手のリズムを壊しているのではないか...ということです。

 これはどういうことかというと、プレーが止まらないまま攻撃を受け続けるのと、プレーが止まりながら断続的に攻撃を受け続けるのとでは、後者の方が守備側、つまり町田側にとって有利だからだと思います。

 何故ならプレーが止まる度に守備側は陣形を整えられる時間が生まれるので、同頻度の被攻撃回数を受けるならば、プレーが止まらずに流れ続けるよりも、意図してプレーを切ってしまう方が、守備組織は安定して機能させることができる。

 そう、相馬監督は考えた、、、と推察することができます。 

 アクチュアル・プレーイングタイムは、試合時間のスタッツであるからして、当然対戦相手も同じスタッツになるわけです。町田ゼルビアのアクチュアル・プレーイングタイムが著しく短いということは、いずれの対戦相手も町田戦は著しくプレーが止まっている、動いていないということ。

 これは、町田ゼルビアが、指揮官・相馬監督が意図してそのような戦い方を志向していると推察するのが、自然ではないか。そう思えてきます(実際どうなのか、どっかで相馬監督が語っているのをご存知な方は教えてください)。

 

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【図5】FC町田ゼルビア 戦績別 アクチュアル・プレーイングタイムとパスの関係

 

 相馬ゼルビアは相手のプレーを止め、相手のリズムを壊すリアクション型のサッカーを志向している...

 アクチュアル・プレーイングタイムが短くなる理屈はわかると思いますが、意図してそのようなスタイルを志向すれば、自らボールを握るというよりもボールは相手に握られているシチュエーションの方が多くなる。

 この考察の説得力を補うべく、もう少し掘り下げてみたのが図5。

 こちらも町田の戦績別で可視化してますが帯グラフはボール支配率でして、ここもやはりというべきか、勝利時<敗北時という綺麗な傾向が出ています。

 パス数、そしてパス成功率も同様の傾向。パス成功率6割でも勝ててしまうんですねー(ジェフは軒並み74%のパス成功率でも勝てない時は勝てない...^^;

 

 逆に読み替えると、町田がボールを保持するシチュエーションが多かった試合、これは相手からすると町田へボールを持たせた、と読み解くべきでしょうが、そのような試合はボールプレーのスタッツは良いものの軒並み負けている。

 この事実から、町田ゼルビアは自らボールを保持してアクションしていくサッカーではなく、相手がボールを持つシチュエーションを壊すことで自らのリズムに引き込むというリアクション型スタイルであることが読み解けるのではないかと思います。

 

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【図6】FC町田ゼルビア 戦績別 アクチュアル・プレーイングタイムと攻撃回数

 

 この図6が、リアクション型の相馬ゼルビアの強さを端的に表わしていると思います。

 ボール支配率は図5と同じ、重ねた折れ線は町田側の攻撃回数と相手側の攻撃回数(町田の被攻撃回数)。町田の勝利時、ボール支配率は46.2%と相手にボールを握られる時間が多いが故に被攻撃回数も増加。しかし、町田側の攻撃回数も増加しており、これこそが町田ゼルビアの強み、相馬監督の志向するサッカーの姿と言えそうです。

 

 ボールは相手に握らせ、攻撃を受け止めながらも要所でそのプレーを切り、奪ってから素早く攻撃を繰り出していく。ネガティブ・トランジション、守から攻への切り替えに強みを有していることが透けて見えてきます。

 ジェフがボールを保持して攻め込んだ際、町田の選手にボールを外に蹴り出されたり、ファウルで止められる回数が多くなってくると、きっと千葉側の選手もイラついてくることがあるでしょう。しかし、そんな展開こそ相馬ゼルビアの思うつぼ。

 町田の戦術はいかにもJ2っぽいというか、リスクを廃した手堅いやり方に映りますが、同じようなやり方でジェフに向かってくるJ2の相手は少なくありません。そうした意味でも今後の戦いの行方を占う上で重要な1戦となりそうです。

 

 一方のエスナイデル・ジェフは、「ハイライン&ハイプレス」で望むことでしょう。ハイプレスは相手のビルドアップを破壊することと、高い位置≒相手陣内で奪うこと、奪ってから最短距離でゴールに向かうことの、それら攻防一体のプレーを連続的に行うためにデザインされたもの。

 ハイラインは陣形を圧縮することでスモールスペースで相手を嵌め、ボールを動かす自由を奪い、ボール回収のアクションを効率的に連続させるためのセオリー。

 ただ、いずれも大きな「リスク」と背中合わせで、ハイプレスはその強度と持続性が時間限定であること、ハイラインは陣形の後方、つまりジェフ陣地に広大なスペースを相手に与えるというもの。

 そこのリスクマネジメントも今季の大きな課題でしょうし、そこがうまくいくかどうかが今季の成績を占うポイントになると思います。

 

 ちばぎんカップでは、時間限定ながら柏レイソルを自陣に釘付けにして殴り続けることができた。そういった良い時間帯に幸先良くゴールを陥れることができれば、相手もボールを保持して前に出てこざるを得なくなる。そのような展開に持ち込めれば、千葉のプレスも嵌りやすくなるでしょうし、試合を優位に進められるかもしれない。

 

 先制点の行方、そしてプレーが動き続けているのか、あるいは町田の選手によって意図的に切られ、止まっている時間が長いのか。

 そこがデータから見えた町田戦のポイントになると思います。

 

 あるいは、今季の町田ゼルビアはまた違ったコンセプトで臨んでくるか...

 谷澤がコーナー付近でキープしだしたら、むしろチャンスだと思います(笑)

 

 ジェフ千葉の新たな挑戦は簡単なものではないと思います。

 うまくいかないことが多いシーズンになることも覚悟しなければならないでしょう。

 ただ、これまで「ジェフ千葉のサッカーとは?」と問われて答えに窮するような、千葉のスタイルがあるようで無い数シーズンに比べ、今季のように目指すものが明確なスタイルで挑むシーズンの方が、やっている選手たちも応援するファン・サポーターも、共に同じビジョンを見据えることができるという点で、一体になれるのではないかと思えます。

 そこにチャレンジすることを選んだクラブの覚悟、危機感を抱いているんだという意志を、私はポジティブに評価していきたいです。

 「共に戦おう!」というチャントそのままに、同じビジョン、同じ目的を共有し、選手だけでなくサポーターも戦える、そんなシーズンになるのではないか、というのが私の正直な思いです。

 

 いよいよ2017シーズンが始まります。

 チカラを合わせ全力でジェフをサポートしていきましょう。

 そして、我々サポーターが主体的に最高の週末を創り、演出していきましょう。

 私も出来得る限り、ジェフ千葉にまつわるデータ分析と可視化をしていきます。 

 それがフクアリで応援する時や、試合の無い日にサポーター同士で語り合う時の、小さなネタのどれかひとつにでも成れれば、これ幸いです。

 

 では、また!

 WIN BY ALL!!

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