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【来季昇格に向けた傾向と対策】データで振り返る ジェフ千葉2016シーズン ~勝敗要因分析編~

 ジェフユナイテッド市原・千葉 J2 2016シーズン 終了

  • 順 位:11位

  • 勝ち点:53|戦績:13勝・14引き分け・15敗

  • 得失点:52得点・53失点

 

 前回に引き続いて、2016シーズンのジェフ千葉について、データ可視化と分析、考察をして参りたいと思います。 

 

 

football-data-visualization.hatenablog.com

 

 今シーズン全42節のゲームスタッツが揃ったので、今回やってみたいのが「勝敗要因の分析」です。

 勝った試合は何がどう良くて、負けた試合は何がどう良くなかったのか、「何」の部分を各試合のスタッツから、「良い/悪い」をそのスタッツの傾向から読み解き考察していきたいと思います。

 そもそも「良い/悪い」という判断が妥当かどうか、即ちチームが意図して良かったか、意図せず結果良い風に見えているだけか、意図していたけど悪かったのか、何の意図もなく結果悪かっただけか、実際ピッチで起きていることと選手たち、または監督コーチたちが想定していたこととは乖離していることもあると思います。

 偶然によるものが試合の結果を左右することの多いフットボールという競技。我々第三者が観察できることは、ピッチで起きていることが数値に変換され描き出されたデータ・スタッツ.であり、選手・監督の試合後のコメントであるかと思います。

 ピッチで起きていたこと(客観指標)と、当事者たちの証言(主観・意思・意図)とを両方合わせることで、試合を深く理解でき、それがサッカーの面白さ、ジェフへの愛着になるのではないかと思います。

 データ分析はその前者をより読み解きやすく翻訳することなのかなと思っています。。

 とまあ、前置きが長くなりましたが、分析の進め方についてまず述べますと、ジェフ千葉の今シーズンの試合を勝敗別に分け、それぞれ紐付いているデータ/スタッツをサマることで、何らか勝ち・負け・引き分け毎に傾向がないかなと探索してみました。

 色々と傾向が見えてきたので、皆さんの思っていたこと、試合の印象などと併せてご覧いただくと理解や納得が得られるのではないかと思います。

 

元データは引き続きご覧の提供でお送りします↓

ジェフユナイテッド千葉 2016シーズンサマリー | Football LAB ~サッカーをデータで楽しむ~

 

 まず、全42試合を戦績毎に分けます。冒頭にある通り、今シーズンは13勝・14引き分け・15敗の戦績で、ほぼ均等にサンプルが分かれているので、1試合あたりの重み、偏りもさほどないかなと思います(もっと勝利数欲しかったけど...)

 まずは、ゲームのスタッツそのままの可視化から。

 

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図1 勝敗別 パス数・パス成功率・ボール支配率 比較

 

 まず、ボールプレーの可視化から。今季のジェフは、ポゼッション率でレノファ山口に次ぐリーグ2位。パス数もリーグ3位(成功率は札幌と同立4位)。

 J2においては、パスを多く、精度高く繋ぎ、ポゼッションできるチームと見ることができます(下記エントリ参考)。

 

football-data-visualization.hatenablog.com

 

 今回、勝敗別に分けてみた図1を見ると、「ポゼッションできる」という部分を額面通りに受け取れない事実が見えてくるかと...

 図1をご覧の通り、まずパス数は、「勝ち<引き分け<負け」の順に多くなる傾向が見て取れるかと。同様にポゼッション率もほぼパス数に準じてリニアに連動しています。

 一方のパス成功率は勝敗によって変動はなく、ほぼ一定。勝っても負けてもパスの精度は安定している。

 これだけ見て勘の良い方は、ある推測がアタマに浮かんでいることと思います。

 それは、、

 

 「ジェフは、相手にボールを持たされているのではないか、、?

 

 ということ。。

 一応、サマッた可視化だけでなく、生データの分布も下記に置いてきます。

 

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図1−2 (参考)勝敗別ボール支配率✕パス成功率 散布図】 

 

左のカセットから引き分け、負け、勝ち毎の分布になっていて、青いドットが各試合を表しています。真ん中のカセットではパス成功率が低い2試合を除いて、やや右上にデータが集まっていることがわかります。

 パス数、パス成功率が「負け」の試合で下がっているならば、相手が積極的に奪いにきてジェフのボールポゼッションを阻害しに来ているのだな、となるわけですが、図1のスタッツではそうはなっていない。

 ボールを"握らされている"だけが敗因なのか、となるのは早計かと思うので次の可視化を。。

 

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図2 勝敗別 攻撃回数・シュート数・枠内シュート数 比較

 

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図3 勝敗別 被攻撃回数・被シュート数・被枠内シュート数 比較

 

 「攻撃~シュート/被攻撃→シュート」のデータ可視化を連投しましたが、ここで見たかったのは、勝敗毎の「トランジション(攻守の切り替え)」の傾向。

 厳密にはトランジションそのものではないですが、ここの「攻撃回数」とは、「ボール前進回数」と読み替えてもよいかなと思っていて、奪ってマイボールとしてからの次アクションという位置付けかと。

 図2、3の可視化を見ると、やはりというべきか図1のボールプレー傾向と同じく「勝ち<引き分け<負け」の順でそれぞれ高くなる傾向かと。

 

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図2-2 勝敗別 攻撃回数✕ボール支配率 散布図

 

シュート数枠内シュート数も重ねていてそれらの傾向を見ると、攻撃回数とは連動しておらず、一方の被攻撃回数被シュート被枠内シュートは連動して高くなってしまっている。

 図1〜図3の可視化から一旦負け試合におけるポールプレー〜トランジションで読み解くと、、以下のような事象が起こっていると推察できます。

 

  • ボールは保持できるので主導的に攻撃(ボール前進)を試みることは可能。
  • 相手にボール持たされているシチュエーションでは、相手守備を崩すべくパス数が増え、その分攻撃回数も増える。
  • しかしパス、攻撃回数に合わせてシュート数も連動して多くなるわけではない
  • 一方、ボールを失うと被攻撃→被シュート→被枠内シュートまで容易に持ち込まれてしまう

 

 要するに、ボールプレーに優れるが故、ボール保持、ポゼッションは他チームより優位になるが、攻撃/ボール前進からシュートまでのプロセス、所謂崩しの部分では相手を崩し切る程の水準ではない。

 一転、ボールを失うと攻撃を受けてしまい(簡単にボール前進を許し)シュートまで持ち込まれてしまい、失点してしまう。。

 

 う〜ん、まさしく負けパターンの典型...確かに思い起こすと、ジェフでの負け試合は大抵こんな感じだよなぁ、、と。

 

 試合を観た印象とリンクする部分も多いかと思いますが、課題のひとつめは、

ゴールまでのプロセス」ということになるのかな、と。

 ここの攻撃〜シュートまでの崩しのプロセスが、勝敗別に視るとどうなのか、が下記の可視化。

 

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図4 勝敗別 攻撃プロセスの歩留り率 比較

 

 「歩留り率」は私の二次加工指標になりますが、数値定義は過去エントリに譲ります。見方は各棒グラフ右側に移るにつれ相手ゴールに近いアクションの効率を表します。棒グラフが高ければその効率は高いものとなり、低ければ非効率ということに。

 勝ち、引き分け、負けの試合毎にサマッって可視化してみましたが、図内の矢印で示した通り、モロに傾向が出ておりまして...

 やはりというべきか、負け試合ではボールを保持し相手陣内1/3までは進入できている(30mライン進入率に相当する)ものの、シュート、とりわけ枠内へのシュート到達ができず、当然ゴールを陥れることもできていない。

 「効率」という見方に変換してのグラフですから、図2にあるように各ひとつ前ステップの母数となる指標の絶対数はご覧の通り多いわけなので、その分ボールロストが多くなり、図3にあるように被攻撃回数が多くなるというロジックです。。

 一方、勝ち試合ではこれが右肩上がりになっていて、決定率は45%。枠にシュートが飛びさえすれば、45%はゴールに陥れられる「高効率」になっている(枠内シュート到達率がやや凹んでいるのが気掛かり...)。

  勝ちパターンはパスも攻撃回数、翻って被攻撃回数も少なく、高効率に得点できている。どのようなシチュエーションでのゴールなのか、すなわちジェフ側のカウンターによるものか、パスやドリブルでの崩しによるものか、(セットプレーは本分析の範囲には該当しない)など、一度勝ち試合の全ゴールを映像で洗い出して見直してみて、このデータとどの程度整合性があるかなど、見てみても良いかもしれません。

 

 さて、図2、図3から透けて見えるトランジション傾向の、ネガティブ・トランジション(ボールを失った局面)から守備へ移行する局面について、分析・考察をしてみます。

 ボールを保持し、パス≒手数をかけて押し込み、アタッキングサードまで進入して相手守備網を崩しにかかるもシュートまでは持ち込めず、失うと途端にカウンターを浴びてシュートまで持ち込まれる... 

 では、何故被攻撃時に容易にシュートまで行かれてしまうのか

 守備は何をやっているんだ?となるわけですが、そこんところどうなのかを示したのが下記図5です。

 

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図5 勝敗別タックル数・タックル成功率 比較】 

 

 タックル数とその成功率ですが、勝敗別で見てもそこまで変動はなく。。アクションの実際の試行数、その成功率には差異はありませんが、被攻撃回数に対する試行率ではどうか?について見てみたのが図6。

 

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図7 勝敗別 守備アクション試行率 比較

 

 それぞれ被攻撃回数に対する比率で見たのが上記各指標。「ボールゲイン率」はタックル成功数(タックル数 ✕ 成功率 )に対する比率。文字通りボール奪取率になります。

 ご覧いただいている通り、守備時アクションの試行率で見ると緩やかながら「勝ち>引き分け>負け」という傾向に。

 特に顕著なのが「クリア率」で、これはボールを自陣危険域から安全域へ蹴り出したアクションの試行率に相当しますが、ここが勝ち/負けのシチュエーション間で5%弱もの差がある。

 ここからは推察になりますが、クリア率が高い、すなわち勝ち試合の場合、選手が前向きに守れている、すなわち同じ被攻撃でも被カウンターではなく、陣形をセットしたシチュエーションで守れているのではないか、ということ。

 反対に負け試合では前述の通りジェフ側がボールを保持して押し込んでいるシチュエーションが多かろうことが想像できます。この場合の被攻撃は、(あくまで想像ですが)やはり速攻型カウンター、すなわちジェフ側は守備陣系が整わないうちにボール前進を許しているということになるのかな、と。

 被攻撃を速攻≒カウンターと遅攻に分けられないため、あくまで想像の域を出ませんが、可視化から透けて見える事象から考察するに、やはりそういった違いによるものなのだろうと思います。

 最後にここの被攻撃から失点までの歩留りの可視化をば。

 

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図8 勝敗別 被攻撃プロセスの歩留り率 比較】 

 

 これは、図4と反対のプロセス構造になっているのですが、特に敗北時の決定率、枠内シュート率の高さ。。ここが顕著に高いことが、負け試合における失点の構造、負けパターンではないかと。。勝ち試合と比較して、倍近く枠にシュートを飛ばされている...

 相手を押し込み、攻撃を試みるもボールロストして速攻を浴び、シュートまで撃たせてしまう。挙句、枠内にまで容易に飛ばさせてしまえば、あえなく失点...と、そらそうなるわ、と。

 優れたGKがいるのであれば、ここの被決定率が減じられるのでしょうが、やはり逆算で考えるならば、まずは枠内に飛ばさせない守備対応こそ手当すべきこと。

 その次に被カウンター時もシュートまではやらせず、ラインアウトで逃げる等。あるいはもっと進むと奪われてもすぐに奪い返しカウンターのカウンターで崩しきってしまう。

 もっといくとボール保持から崩しを極めて、引いて守る相手守備網を攻略してしまおう...アプローチは様々あれど、それは来季のジェフがどのような変化、課題克服をしていくかに掛かってくることかと。

 被速攻・被カウンターはどんなチームでもシチュエーションによってはあること。とりわけジェフの場合は、J2ではボールを保持できてしまうことから、ボールプレーに劣る対戦チームは積極的に奪いに前へは出ず、後方でブロックを敷いて待ち構えることになる。

 これまで見てきた可視化の通り、被攻撃に遭う頻度はジェフの場合は多くなるわけですね。

 来季J2リーグ内でのジェフと他チームとの力量関係、ボールプレーの傾向、対ジェフ戦の相手の対策がどのようなものか、今季のデータから読むか想像するかしかできませんが、少なくともエスナイデル新監督は「前から積極的に奪い切る」スタイルを標榜しており、年明けのキャンプから戦術浸透を図っていくことでしょう。

 そうしたアプローチが、今季のジェフ、ひいてはJ2の傾向を俯瞰したうえでの方針か、彼自身の信念か(恐らく後者)、いずれにせよ今季よりもポジティブな結果となること、その過程≒プロセスも今季の課題を踏まえての進化であることを願っています。

 

 今季何度か見てきた可視化を踏襲するかたちで、今回は勝敗別に分けてみることで課題が透けてみえてきたかなと思っています。

 映像分析や戦術に長けたブロガーさん、ジェフサポさんらは、既にシーズン中からこうした課題の指摘をされていましたが、私からはそれを「数値」という誰が見ても同じ指標、ビジュアライゼーションに翻訳(分析)して お届けしてみました。

 次回は、いくつか試合、対戦相手をピックアップしてその相手のシーズン傾向と比較して、対ジェフ戦ではどのような対策を敷いてきたのか、などを分析・可視化できればなと考えています(何も出ないかもしれませんが... ^^;)

 

では、また!

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