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【Jリーグ】2018年のJ2リーグをデータでまとめてみました ~チーム・スタッツ編~

 東京ヴェルディ 悲願のJ1昇格ならず


【公式】ハイライト:ジュビロ磐田vs東京ヴェルディ J1参入プレーオフ 決定戦 2018/12/8

 

 前回のJ1まとめに引き続き、J2についてもデータをもとに今季の戦いを振り返ってみたいと思います。

 

football-data-visualization.hatenablog.com

 

 リーグ戦は最終節まで昇格クラブが分からない大混戦となった2018シーズンのJ2リーグ

 結果、松本山雅FCが優勝。2位に大分トリニータが入り、それぞれ来季J1への自動昇格を決めました。

 J1ライセンスを持たないFC町田ゼルビアが優勝戦線に加わった事で、J2自動昇格枠、及びJ1の降格枠がどうなるのか最後まで分からなかった事も、両リーグを盛り上げた一因にもなりました。

 今季からレギュレーションが変更となった昇格POは「J1参入PO」として、J1の16位との対戦も加わって、J2チームにとっては昇格への道のりがより厳しいものとなりました。

 6位でシーズンを終えた東京ヴェルディが、5位の大宮アルディージャ、3位の横浜FCをそれぞれ破り、最後J1を16位で終えたジュビロ磐田との決戦に臨んだわけですが、結果は0-2で破れて、11季ぶりの昇格とはならず。

 このPOを勝ち上がってのJ1昇格は、非常に厳しい道程だということが、改めて思い知らされることになりました。優勝、または2位での自動昇格でなければJ1昇格は非常に難しいと言わざるを得ない...

 ということで今季をデータで振り返りつつ、このJ2リーグというJ1とは違った特異なリーグの傾向をひとつずつ見ていきたいと思います。

  

  上記はJ2各チームのシーズン平均パス本数と成功率のプロットで、左からシーズン最終順位ソートで並べています。

 前回エントリのJ1のものと見比べて頂きたいのですが、パス本数の多さ、パス成功率の高さと順位≒勝ち点とがほとんど相関していないかと思います。

 パス本数、パス成功率のリーグ1位はFC岐阜。成功率に関しては、大分トリニータも同率1位ではありますが、パス成功率が高いチームが必ずしも上位にいるわけではないことが分かるかと思います。

 優勝した松本山雅FCに至っては、パス本数、パス成功率がリーグワースト3位です。

 ボールを正確に動かしながら長い時間ボールを保持し、相手守備陣を崩してゴールを上げることを是として連覇を果たしたJ1の川崎フロンターレと較べると、J2優勝を果たした松本山雅FCはパスの指標だけで見れば、同じチャンピオンチームとは思えないほど似ても似つかないかと思います。

 J2というリーグは、パスを正確に繋ぎ、相手より長くボールを保持して得点を奪う攻撃的なチームが必ずしも勝てるリーグではないのです。

ここがJ1とJ2の大きな違いでして、J2が「魔境」と言われる背景にある傾向だと思っています。

 

 パス成功率とボール支配率の散布図を17年シーズンとの比較でプロットしました。

ボール支配率は、昨季1位のFC岐阜が6割を超える数値だったのに対して、今季リーグ1位だったジェフユナイテッド千葉は6割を下回る数値に落ち着きました。

 右上のパスを正確に繋ぎ、ボールを相手よりも保持できているチームの顔ぶれは、昨季とほぼ変わらず。FC岐阜は支配率は下げましたが、パス成功率はほとんど変化なし。以下、ジェフ千葉徳島ヴォルティス東京ヴェルディ大分トリニータなど、昨季から同じ指揮官のもとで、同様のスタイルを継続していたのだろうという事が伺い知れる面々が布置します。

 これらチームとは対局にあるのが、優勝した松本山雅J1ライセンスを持たないながらも躍進したFC町田ゼルビア、タヴァレス監督の下で3位に入った横浜FCといった面々。最下位でJ3降格となったカマタマーレ讃岐と、優勝した松本山雅がほとんど変わらない位置にいるという何とも奇妙な現象が見られます。

 「魔境」J2では、ボールプレーに優れているといえども、必ずしも勝ち点を積み上げられる訳ではないということがより一層分かるかと思います。

  

  次に攻撃に関する各種指標を並べて可視化してみました。

 「30Mライン進入成功率」では、大分トリニータ徳島ヴォルティスがそれぞれ40%超えで突出しており、2チームに次ぐ水準である30%台に東京ヴェルディヴァンフォーレ甲府ジェフユナイテッド千葉アルビレックス新潟FC岐阜と続いています。

 J1と同様の傾向が見られるのが、「ペナルティエリア(以下PA)進入成功率」と「シュート到達率」。それぞれ順位≒勝ち点が上に行くに連れて、数値も高くなっているのが分かるかと思います。

 大分トリニータは、シュート到達率12.3%でリーグトップ。PA進入成功率も12.9%で同2位。攻撃回数を母数としているので、PA内までボールを運べていて、それと同じ割合でシュートまで持ち込めているという事。

 松本山雅アビスパ福岡はシュート到達率がPA進入成功率よりもその上を行っているのが分かるかと。これは、PA外からのシュートが多かった事も想定されますが、恐らくはセットプレーでのシュート数がこのシュート到達率を押し上げたのではないかと推察できます。

 逆にPA進入成功率に対して、シュート到達率が伴わずに低めになっているのが、町田ゼルビア東京ヴェルディヴァンフォーレ甲府ジェフユナイテッド千葉といったチーム。シュートレンジまではボールを運べるも、シュートまでには至らない、つまり攻撃を効率的に完結できていないということを示しています。

 「ゴール率」で見ると、おらがジェフユナイテッド千葉が13.7%でリーグトップPA進入成功率やシュート到達率がそこまで顕著に高くなかったにもかかわらず、高いゴール率を示しているのは、「セットプレー」によるゴールが多かったから(19ゴールはリーグトップ)

 PA進入成功率やシュート到達率が高かった徳島ヴォルティスは、ゴール率が7.8%でリーグでも下から4番目の悪さ。ボール前進とボックス内進入の崩しまでは効率よくできてはいるものの、仕上げのゴールが遠かった印象です。

 徳島とは対照的に大分トリニータはゴール率も13%と崩しのプロセスを効率的にゴールという結果で完結できていたことが分かります。

 大分のような、ひいてはJ1の川崎フロンターレのようなチームがチャンピオンであるならば、分かりやすい傾向になるかと思うのですが、J2を制した松本山雅はというと、ゴール率は8.2%でリーグワースト5位。それでも、J2優勝、J1昇格を果たしました。

 これがJ2の面白いところ。「This is Football」、「これぞ魔境」の真髄かと。

 

  シュートとゴールの攻撃アクションについて、より分かりやすく可視化したのが上記の散布図。

 2018シーズンのプロットで右上に布置しているのが、大分トリニータ。攻撃アクションに対して、シュートまで繋げた割合と、それをゴールという結果で完結させた割合とがいずれも高い数値であったことを示す理想的な布置です。

 ほぼ同じシュート到達率の水準ながら、ゴール率、つまり決定率が伴わなかったのが、アビスパ福岡徳島ヴォルティス、そして松本山雅FC

 大分トリニータほどではなかったものの、その3チームよりも比較的ゴール率が高かったのが大宮アルディージャ横浜FCレノファ山口FCといった得点源となるストライカーを擁していたチーム。

 おらがジェフユナイテッド千葉はというと、何とゴール率は大分トリニータの上を行くリーグトップ。13.7%という数値は昨季の名古屋グランパスに匹敵する水準でした。

 それでも、今季の最終順位は14位。2位の大分トリニータを凌駕する攻撃力、決定率を持ちながらなぜ下位に沈む結果に終わったのか。

 その原因が次の可視化にあります。

 松本山雅FCが優勝した要因も、ここに詰まっています。

 

 守備について言及できる指標と可視化がこれしか無いので、もっと様々なデータを公開してもらいたいところなのですが、被シュート到達率と被ゴール率との散布図でシュートを撃たれた割合、そして失点した割合との関連を見ていきます。

 まず、おらがジェフユナイテッド千葉が14位に低迷した理由。

 サポーターなら納得せざるを得ないかと思いますが、ジェフ千葉はというと被ゴール率が今季リーグワーストだったのです。 浴びたシュートが失点になる割合がJ2で最も多かったということ。もぎ取った得点≒貯金をあっさり霧散させてしまう失点があまりに多かった...

 シュート到達率ではリーグ平均とほぼ同じでしたから、決定的なシュートシーンをあまりにも多く作られすぎたということでしょう(ハイライン...)。

 J3降格となったロアッソ熊本カマタマーレ讃岐もこの可視化では右上に布置。浴びたシュートが高い割合で失点になってしまったことを示しています。

 被シュート到達率ではリーグワーストだったにも関わらず、被ゴール率はリーグ3番めの低さに抑えたのが愛媛FC。これは、今季ジェフ千葉から期限付き移籍で加入した守護神・岡本昌弘の活躍なくしては達成できなかった数値でしょう。

 さて、これまで見てきた攻撃スタッツではお世辞にも優勝チームとは思えない松本山雅FCはというと、この可視化では最も下に布置しており、被ゴール率で6.7%というリーグトップを記録。ワーストのおらがジェフユナイテッド千葉の約半分の数値です。

 優勝の最大の要因は、シュートを撃たれてもゴールを割らせない守備の堅さにあると言えるでしょう。

 

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 J1は攻撃の川崎フロンターレが、J2は守備の松本山雅FCがそれぞれ頂点に立った2018シーズンの両リーグ

 そこでJ1・J2両リーグの各スタッツと勝ち点との相関係数を比較してみることに。青線のJ1の相関係数降順でプロットしていて、数値に下線がある方がJ2での相関係数です。数値は特徴的な指標のみ表示させています。

 いくつかJ1とJ2で相関係数に開きのある指標がありますが、J1が攻撃優位、J2が守備優位となったことを端的に表わしているのが、可視化の両端にある指標、ゴール数(得点)と失点の各相関係数

 J1はゴール数が.85、失点が-.78。符号がマイナスということは、少ない方が勝ち点は高くなります。

 J2はというと、ゴール数が.68で失点が-.71。

 絶対値が、J1は得点>失点に対して、J2は僅かながらも得点<失点という結果に。

 絶対値の大きさが得点の影響度の大きさを表しますので、J1では得点数の多さが勝ち点に強く影響し、J2は失点の少なさが勝ち点に強く影響するとうこと。

 J1とJ2とで絶対値の大きさを見較べても、ゴール数では.85と.68ですから、1ゴールに対する獲得勝ち点への影響度が、その差分だけJ1とJ2で変わってくるということ。失点の重みもJ1のが絶対値的には大きいですが、リーグ間の差分を見るとゴール数に対する影響度の開きは、リーグの特性、傾向を如実に表わしている気がします。

 

 得点と失点とを勝ち点の係数と考えるならば、J1は得点>失点、J2は得点<失点とも言い換えられそうです。

 とはいえ、ここまで見てきたデータは全て今季の結果でしかなく、来季を占う手掛かりではあるものの、これら傾向がこの先も変わらない事を保証するものではありません。

 J1とJ2の傾向がひっくり返ることも充分ありえます。

 両リーグの覇権を握るチーム、優勝争いを繰り広げるチームらのスタイルによって、これらデータは変わっていくと思います。

 そのあたりのトレンドも考察できる可視化を今後検討していきたいです。

 では、また!

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