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【ジェフ千葉】ザスパクサツ群馬戦プレビュー ~4-3-3は2-3-2-3にシフトする?システム変更によるスタッツ変化を可視化してみた~

  2017 明治安田生命J2リーグ 第6節
ジェフユナイテッド市原・千葉 2 - 2 京都サンガF.C.

得点者:8' 清武功暉 / 24' 小屋松知哉 / 60' 仙頭啓矢 / 90+1' 近藤直也


【公式】ハイライト:ジェフユナイテッド千葉vs京都サンガF.C. 明治安田生命J2リーグ 第6節 2017/4/1

 

 共に連敗で迎えた負けられない一戦。

 前半8分に理想的な崩しから幸先よく先制したジェフ千葉でしたが、リスク・コントロールの拙さから同点とされ、後半15分にこれまた守備の緩さを突かれて逆転を許す苦しい展開に。

 鋭いプレッシングと流麗なパスワークで完全にゲームを掌握するも、引かれた相手を崩せない決定力の低さがこの日もチラついてしまいます。

 時計が90分を過ぎ、アディショナルタイムに入って敗色濃厚になりかけた矢先、サリーナスの伸びのあるクロスにパワープレー要員として前線に上がっていた主将・近藤が頭で合わせて土壇場で同点。2-2のままタイムアップを迎え、双方にとって勝ち点をこぼす歯がゆい結果となりました。

 

 この日は、前節後半から出色のプレーを見せていた山本真希インサイドハーフで先発。アンカーには熊谷アンドリューが入り、最終ラインにはキム・ボムヨンが初先発。

 多々良、アランダ、サリーナスとこれまで主力だった選手もベンチにいたため、コンディションを優先させてのターンオーバーをとってきたのか、エスナイデル監督の起用に焦点が集まった部分もあったかと。

 結果的に引き分けたものの、これで3試合連続で追う展開を経験することになったわけですが、うち松本戦とこの日の京都戦は、後半から4バックにシフトして、並びを4-3-3に変えて追撃を試みました

 

 3バックから4バック、3-1-4-2から4-3-3

 数字だけを見れば、最終ラインを1枚増やしているわけですから、攻撃的になっているのか疑問に思う方もいたのではないでしょうか。

 

 本エントリは、このシステム変更によって何が変化したのか、4-3-3によるポジション変化のメカニズムと、システム変更によるスタッツの変動を併せて見ていきたいと思います。

 

 データはご覧の提供でお送りします。

www.football-lab.jp

 

 まず最初に4-3-3の基本形と松本戦、京都戦のメンバーの配置、それと攻撃時のポジション変化について、先にのっけちゃいます。

 

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【図1】4-3-3システムの2-3-2-3シフトとそのバリエーション

 

 上段が4-3-3の基本形とシステム変更をした過去2戦のメンバーの並び。

 下段は4-3-3から「2-3-2-3」にシフトするポジションのバリエーションを3パターン載せました。

 

 DAZNを視聴できる方は、それぞれ確認していただくと良いと思いますが、いい形でボール前進ができているシーンは、おおよそ4-3-3から2-3-2-3にシフトしていることが分かるかと。

 4-3-3から2-3-2-3へのポジション・シフトは、ペップ・グアルディオラ監督が指揮したバイエルン・ミュンヘンで見せた、「SBの偽インテリオール化」にも類似していますが、このメリットは味方同士各ポジションで三角形を作りやすいということが挙げられます。

 勿論、図示した矢印のまま、全員同時に動いているわけではなくて、左サイドにボールがある場合は左サイドのSB、インサイドハーフ、FWが上記のようなポジション・シフトをしていました。

 松本戦では、被カウンターの頻度が多かったので、自陣と敵陣を行ったり来たりするオープンな展開になってしまい、あまりハマった印象は無かったですが、この京都戦におけるミッドゾーンでのパスワーク、とりわけ2-3-2-3によるポジション優位性で京都の中盤を突破するアタッキングは、なかなかスムーズにいったのではないかと思います。

 

 そのあたりを、時間経過毎のボール支配率、シュート数の遷移とポジション・シフトの詳細を併記して、3パターンそれぞれ解説します。

 

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【図2】時間経過毎 ボール支配率遷移 3バック/4バック システム別の比較

 

 図2はボール支配率を15分刻みの時間帯毎にスライスしたもので、右から左に向けて時系列に可視化したものです。

 それを途中から4バックに変更した2試合(緑色)と、3バックを継続した4試合(青色)とで分けてみました。

 矢印で加筆したのが、それぞれシステム変更がなされた時間帯を示します。

 サンプルが少ないのは承知の上、さらにジェフがビハインドの状況なので相手がリスクを負わず引き気味に陣形を構えている事もエクスキューズとして横たわっている前提での考察であることを先に述べておきます。

 それらを踏まえて可視化をご覧いただくと、4バックにシフトしたゲームの方が、3バックのまま推移したゲームに比べてその後のポゼッション率は高い水準で推移していることがわかるかと。

 加えて、シュート数・被シュート数の同時系列毎の変動を可視化したのが下記図3です。

 

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【図3】時間経過毎 シュート・被シュート数遷移 3バック/4バック システム別の比較

 

 上側がシュート数、下側が被シュート数で、青が4バック変更のもの、オレンジが3バック継続のものです。

 こちらもまぁ、そうなるだろうという通りに、4バック変更によって3バック継続のときに比べてシュート数が増え、被シュート数は減少に転じてます

 京都戦はほぼ一方的に押し込めた一方、松本戦はビルドアップを引っ掛けてあわや失点というシーンもあったりしましたが、一応4バック変更後は被シュート数も減じられ、ボールプレーのスタッツでは概ねジェフに傾いているようです。

 

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【図4】SB前進→WG化&FWの偽インテリオール化 / 方向別パス・スタッツ

 

 ここからは、図1で示したポジション・シフト3パターンについて、4バック/3バック各システム別での異なるパス・スタッツ平均値比較のグラフとともに詳述します。

 シチュエーションとしては、ジェフがリードを許しているビハインドの状況。

 相手は5-4-1もしくは、5-3-2で後方にブロックを敷いています。

 

 図4は方向別パス・スタッツの比較と合わせて。

 2-3-2-3ポジション・シフトで最も多く見られたのが、ボールサイドのCBが外に開いてボールを持ち出し、SBが大外の高い位置を取ってボールを引き出すかたちでした。

 これは3バックのときのWBが高い位置を取るのにほぼ似ていて、インサイドハーフがSBの上がったスペースにフォローのために落ちる動きも3バックの時によく見られる連動かと。

 3パターンのいずれもサイドから攻める事には変わりはなく、方向別のパス数・成功率を見ると、3バック時に比べて左右に広がったグラフになっていて、成功率も8割を超えてきている。

 この2-3-2-3の要ともいえるのが、2列目の[2]のインサイドハーフ(スペイン語でインテリオール)。本来であれば、WBの裏を取ってCBをゴール前から剥がしたいのですが、5バックが引ききっているため、FWが裏を取ってボールを引き出すスペースが無い。

 となると使いたいのが相手ボランチ脇、図では船山が落ちる中盤のハーフスペースで、ここにFWが降りることで大外に張るSB、降りるインサイドハーフとの三角形ができます。

 京都はシャドーがサイドの深い位置までプレスバックしてきて、ボランチはあまり外に食いつくことはなくバイタルを埋めることを徹底していた印象でした。

 ジェフのSBが前を向けたときは、京都はWBがアタマを抑えるべく当たりに出てきますから、シャドーと挟んでボールを狩ろうとします。

 パスワークがスムーズに行けば、降りて偽インテリオール化したFWとのワンツーで京都のWB裏を取ってSBが縦抜けできますが、シャドーに挟まれそうになった場合は、降りているインサイドハーフに落としてやり直せますし、そこから斜めに落ちているFWにクサビを打つことも、CBまで戻してもアンカーとの三角形がやはりできているので、相手のプレスを容易にいなせるわけです。

 味方ボールホルダーに対して複数方向パスが引き出せるポジションを、スペースメイクと埋める動きを複数の選手が連動して常に保ち続けることで、ボール保持を高められるのかなと。

 そのための最適な形が2-3-2-3シフトでして、その理由としては各所で三角形を作りやすく、相手に対してポジション優位性で上回れるからだと推察されます。

 

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【図5】外に開くインサイドハーフ&FWの偽インテリオール化 / 距離別パス・スタッツ

 

 図5はパスの距離別のスタッツと併せて、インサイドハーフが外に開くパターンの解説を。

 サイドからボールを運ぶとなると起点はSBとなりますが、相手が2トップの場合は時間に余裕があるも、3トップ(1FW+2シャドー)だとスライドがはやいのでSBに余裕が無くなる場面も多くなります。

 SBがシャドーに捕まってしまった時などは、図のようにインサイドハーフが素早く開いてプレスの逃げ場になります。

 この時も相手のWBは縦を切ってきますから、開いたインサイドハーフの前に出てきます。相手WBとの間合いがあればそのまま縦につけてFWを外に走らせることもできますが、そこからクロスを上げられないと詰まってしまってボールロストになる可能性がある。

 このパターンで気を利かせていたのが、比嘉に代わって入った羽生でして、後方からのパスを引き出す動き出しは流石でした。

 右サイドから好機は作れなかったものの清武が羽生の空けたハーフスペースで受ける場面がいくつかありました。清武はこの位置でボールを受けて、反転カットインしてから左足のミドルを放ったりゴールへの意識の高さを見せていましたね。

 距離別のパス・スタッツで目を引くのが、3バックのときよりも4バック変更時の方がミドルパスが増え、且つパス成功率も高くなっていること。 

 この理由はちょっと穿った解釈になってしまいますが、相手陣内にバランス良く選手が位置することで、ボールサイドに寄って人数を掛けての崩しよりも、ポジション優位性、すなわち相手ポジションとのギャップで受けるパスワークがハマるため、ショートパスよりも、ミドルパスが増えるのかな、と。(相手守備ブロクの外で回すシーンが多い点も考えられるが...)

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【図6】外に開くインサイドハーフ&SBの偽インテリオール化 / ゾーン別パス・スタッツ

 

 図6はゾーン別のパス・スタッツと併せて、SBの偽インテリオール化の形を。

 これは終盤、サリーナスが左SBに移ってからよく見られた形。右の北爪はあまりインサイドハーフの位置には入ってはきません。

 松本戦もサリーナスは途中からこのインサイドハーフの位置で主にドリブルからカウンターの起点になっていましたが、京都戦では結果的にクロスから同点弾をアシストしました。

 サリーナスが中に入ってボールを引き出す際は、インサイドハーフが幅を作り、相手のシャドーがスライドして引っ張られることでできる背後のハーフスペースで受けるパターン。

 そこからファーサイドにクロスを入れる、またはドリブルで仕掛けるなどバイタルに侵入することで相手のブロックを動かすプレーに繋げられるのかなと。

 ゾーン別のパス・スタッツを比較すると、相手陣内のミドルゾーンでのパス本数が大幅増えていることが分かります。相手のブロックの外側、1列目と2列目の間のゾーンに相当するかと思いますが、ボックス手前のゾーンまではパスが通っていることの示唆かと。

 前線の3トップはラリベイが中央で待って残りの二人は流動的に動きはするものの、サイドに張って幅を作るような位置取りはあまりしません。大外でボールを引き出すことはあっても、あくまで主戦場はゴール前。なので時折、3人が重なっていたり飛び出すインサイドハーフと被ったりなど、ちょっとノッキングを起こしているシーンも見られ、ここらへんの整備は今後の課題かもしれません。

 

 サイドで起点となるのは、基本的にはSBであり、状況に応じて開くインサイドハーフになります。ここのポジション・チェンジは臨機応変にやっている感じでしたが、京都戦では誰かが空けたスペースを埋めるべく動き直し、ボールを受けると別の選手が次のコースを作るべく相手選手間のハーフスペースに動いて受ける、という連続性がいくつか見られました。

 

 とはいえ、課題は最後の崩しにおける工夫や、個で打開する打撃力の低さでしょう。

 京都戦の2点目は、結果的にサリーナスの正確なキックと近藤の個人能力でねじ込んだ同点弾でしたが、パワープレーもそう何度も成功するものではないですから、引いた相手をこじ開ける何らかのソリューションはシーズンを通して試行錯誤することになりそうです。

 

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【図7】群馬戦 予想スターティング・フォーメーション

 

 京都戦で人を入れ替えてきたエスナイデル監督。

 開幕から早くも1ヶ月が過ぎ、冒頭述べたようにターンオーバーをしてフィジカル・コンディション面でチームの強度維持を図る狙いがあるのか、勝利が遠ざかっているので変化を加えてきたか。

 今節もホームで戦えるアドバンテージがありますから、多少人を入れ替えてくるかもしれません。

 ここまで右サイドの攻撃を牽引してきた北爪ですが、前節ややお疲れ気味に見えたので、溝渕のデビューが今節あるかな?と思えたり。

 熊谷のアンカー起用も、失点に絡みはしたもののパスワークの「へそ」としては及第点かなと。

 左CBに入るボムヨンは、個人的にはWB適性の方が高そうですから、ここのポジションに西野くん以外にもう一人適任者がいれば理想的かと...(左利きの乾とか?)

 

 相手のザスパは未だ勝ち点ゼロで是が非でも勝利が欲しいでしょうし、「気持ち」で上回られないように、頭は冷静に、ハートは"情熱的"に、90分試合を支配して4試合ぶりの勝利を期待したいです。

 

 内容は良くなってきていると思うので、「己が敵」に打ち勝って、前進を続けてほしいと思います。

 

 では、また!

 

 WIN BY ALL!!

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